アトピー性皮膚炎とバリア機能: レビュー

2017年6月1日

Egawa G, Kabashima K. Multifactorial skin barrier deficiency and atopic dermatitis: Essential topics to prevent the atopic march. J Allergy Clin Immunol 2016; 138:350-8.e1.

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/27497277

 


京都大学皮膚科の椛島先生らのグループからのレビューです。

皮膚バリアと感作やアレルギーマーチに関して、同グループの最近の研究結果を含め、多種多様な研究結果がわかりやすくまとめられた極めて優れたレビューです。いつもは論文を読むのに全体読まずにエッセンスをざっくり読むのですが、今回は最初から最後まで読んでしまいました(ただし、当ブログにUPするのはごく一部です)。

最初にお断りいたしますが、私は小児科医ですのでこの和文要約に関して皮膚科用語が間違っているかもしれません。その場合はご容赦頂ますようお願い致します。


 

まとめ

 過去10年間、アトピー性皮膚炎(AD)に関し、皮膚バリア低下の病初期における役割が強調されてきた。

 環境要因の皮膚への曝露は慢性炎症を惹起し、「アトピーマーチ」にも関与する。持続性の炎症はさらにバリア機能を低下させ、さらに病状を悪化させる皮膚と免疫系のポジティブフィードバックをもたらす。これが、ADの病因における「outside-in仮説」であり、AD患者が将来の食物アレルギー、喘息、アレルギー性鼻炎の発症リスクが増加することの説明に合致する。

 

 皮膚バリア機能は、主に角質層(SC)に依存し、SCは角化というケラチノサイト分化プロセスで形成される。

 角化は、表皮の4つの細胞層(基底層、有棘層、顆粒層(SG)とSC)によるケラチノサイトによって構成される。

 SGにおいて、ケラチノサイトは、ケラトヒアリン顆粒と層板小体という膜限局性顆粒を産生し、ケラトヒアリン顆粒はSC(例えば、フィラグリン[FLG]、loricrinとケラチン線維)の細胞内構成要素を含み、層板小体は細胞外構成要素(例えば、脂質、角質デスモシンとカリクレイン[KLKs])を有する。

 

 SCではケラチノサイトは平坦化して核を失い(角質細胞と呼ばれる)、特定のバリア構造と置き換えられる。

層状体は角質細胞間の細胞間隙に分泌され、脂質で満たされる。

 これらの構造はレンガ(角質細胞)とモルタル(細胞間脂質)にしばしば例えられ、環境に対する疎水性バリアを提供する。

 

(1) フィラグリン(FLG)代謝

  SGにおいて、FLGは10~12個のFLGモノマーが連結されたプロフィラグリンとして産生され、SGからSCへの移行時に、プロフィラグリンは、プロテアーゼ(例えばCAP1/Prss8やSASPase/ASPRV1)によってFLGモノマーを生成するために切断される。SC上層で、FLGはケラチン線維から分離される。

 放出されたFLGモノマーはグルタミン、アルギニン、ヒスチジンを含む遊離アミノ酸に分解され、ウロカニン酸(UCA)とピロリジン・カルボン酸(PCA)に変換される。このプロセスは、プロテアーゼ・カスパーゼ14、カルパイン1、ブレオマイシン加水分解酵素によって実現される。

 AD患者のFLG突然変異の有病率は、北ヨーロッパのおよびアジアのpopulationで25%から50%であり、ヨーロッパ、アフリカ、日本、ラテンアメリカ系先祖をもつ被験者ゲノム全体において、30以上のADリスク座が特定されている。また、FLG突然変異は北ヨーロッパやアジアでは一般的であるにもかかわらず、南ヨーロッパでは少なく、一部のアフリカ諸国では存在しない。

 最近の研究は、もう一つの皮膚バリア・タンパク質(FLG2)の発現がAD患者の表皮では減少していることを示している。

 

(2)  Cornified envelope(CE;角質化エンベローブ) 

 CEは、角質細胞の細胞膜下で形成される特有のバリア構造であり、細胞外脂質によって架橋結合された非可溶性蛋白質である。

 CEは有棘層の上層で産生され、増加した細胞内Ca2+レベルに反応しケラチノサイトはenvoplakin、periplakinとinvolucrinを産生し、形質膜下で蓄積しヘテロ二量体を形成する。これらのすべてのタンパク質の欠損したマウスは脂質含有量が減少し異常なCE形成を示すが、皮膚バリア機能は完全なままである。対照的に、重篤な魚鱗癬様紅皮症(常染色体劣性先天魚鱗症[ARCI]1)に関しては、CEはTG1に異常もしくは欠損している。 

 

(3)細胞間脂質  

 細胞間脂質(いわゆる「モルタル構造」をしている)は、SCバリアの構成要素であり、約1:1:1モル比でセラミド、遊離脂肪酸、コレステロールの不均一な混成物から成る。これらの脂質はSGで生じ、層状に蓄積され、SCへ移行する間に細胞外間隙に分泌される。セラミド分画は、300以上特定されているが、それらの中でも、オメガ-ヒドロキシ・セラミドが不可欠である。

 近年では、膜内外タンパク質79/mattrin(Tmem79/Matt)が、層状体構成物分泌に関係していると特定された。

 

(4)コルネオデスモソーム

 角質細胞の接着はデスモソーム器官に依存しており、コルネオデスモソームと呼ばれている。デスモソームは、desmosomal cadherin, armadillo proteins, plakinsの3つのタンパク質から構成される。コルネオデスモソームの異常は角質細胞の過剰落屑の傾向を助長し、皮膚バリア障害と炎症に至る。

 最近の研究は、デスモグレイン1のホモ接合突然変異が掌蹠角皮症、先天性乏毛症と増加した血清IgE(EPKHE;別名SAM症候群)が付随する重篤な皮膚炎(紅皮症)になることを明らかにした。

 

(5)角質細胞落屑

 角質細胞は、SCの表面で常に脱落している。この現象は落屑と呼ばれていて、SCホメオスターシスの重要な側面である。角質細胞落屑は、主にKLK関連のペプチダーゼ(例えばKLK5、KLK7とKLK14)のタンパク分解カスケードによって調整されている。 

 

(6) タイトジャンクション

 SCに加えて、タイトジャンクション(TJs)は皮膚バリアの完全性に必須の構造である。TJsは隣接したケラチノサイトをSGに閉鎖して、水と溶質に対するバリアとして作用する。

 TJsは、膜内外タンパク質、特にclaudinとoccludinファミリーといくつかの細胞質ゾルの骨格蛋白質から成る。 皮膚ホメオスターシスにおいて、TJsの欠くことのできない役割はclaudin1欠損マウスを用いた研究が最初であり、マウスは重篤な乾燥のため24時間以内に死亡した。重要なことは、これらのマウスは、SCコンポーネント産生においては、異常が認められなかったことである。

 また、TJsはSCがない皮膚付属器(例えば毛嚢と汗腺)の初期バリア構造として作用しそうである。実際、毛嚢は皮膚に薬の「ルートを短絡する」ことがよく知られている。 

 

(7) 皮膚健全性の免疫性変調

 免疫細胞がサイトカイン産生を通じ皮膚健全性に影響することを示唆する。AD皮膚病変を引き起こす炎症カスケードの理解は不完全ではあるが、ADの免疫異常の病因がTH2細胞の免疫応答によって引き起こされることを強く示唆している。これは、IL-4とIL-13(2つの主要Th2型サイトカイン)からシグナルを遮断するとADが改善することを証明する最近の臨床試験データが、さらにこれを支持している。

 動物試験では、AD様皮膚病変における食物アレルギーの表皮誘導では、TSLPは必須の役割を示した。加えて、表皮ランゲルハンス細胞にシグナルを送っているTSLPは、食物アレルゲンに対する表皮感作において、IgE産生に重要である可能性がある。

 

 皮膚バリア欠損と過剰な免疫応答は、AD病因における同じコインの表裏である。

 そして、炎症反応はバリア機能不全によって誘発され持続されるため、たとえ免疫抑制剤を使用したAD患者への治療的な介入が概して炎症を目標とするとしても、ADの有効な処置の鍵であるのは皮膚バリア機能の維持療法である。

 

コメント

 自分が知らない文献が結構あって、孫引きで論文を読むのにしばらく苦労しそうです。それでも、いままで私の医師歴は基礎研究より臨床研究がメインでしたので、基礎研究の部分をわかりやすく説明していただいて随分助かりました。自分自身の興味がこの範囲にもあるため、参考文献を見ながら勉強させていただきたいと思っています。

 

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