加水分解卵による卵経口免疫療法: ランダム化比較試験

Giavi S, et al. Oral immunotherapy with low allergenic hydrolysed egg in egg allergic children. Allergy 2016; 71:1575-84.

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低アレルゲン化の方法として、加水分解"乳"に関して皆さんも良くご存知かと思います。
今回ご紹介するのは、加水分解”卵”によって免疫療法を試みた研究です。

P: 1-5.5歳の卵アレルギー患者29例
E: 加水分解卵(HydE)9g/日×6ヵ月間 15例
C: プラセボ(麦芽デキストリン、カラメル、パーム油、水の混合) ×6ヶ月間 14例
O: 6ヶ月後に卵に耐性を獲得するか(7分加熱ゆで卵50-60gのオープン負荷試験による評価)

結果

卵アレルギーの定義は、過去3ヵ月以内に卵白経口負荷試験陽性、または明らかな卵摂取後1時間以内の即時型反応の既往があり、皮膚プリックテスト(SPT)陽性もしくは特異的IgE抗体価陽性(>0.35kU/l)であるものとした。
初日から15例全例がHydEを総量を摂取可能であり、自宅で維持量を継続した。
25例が本研究を完了し、HydE群4例がドロップアウト(製品に対する嫌悪 1例、食物経口負荷試験(OFC)に対する親の心配 1例、アドヒアランス不良 2例)した。
6ヶ月後のOFC評価による卵耐性率は、HydE群36%、プラセボ群21%であり、有意差は認められなかったが、特異的IgG4抗体価が上昇する一方、CD203c/CD63陽性好塩基はプラセボ群よりHydE群で低下した。

コメント

加水分解卵(HydE)は、卵アレルギー児に投与するに際し、安全で低アレルゲン性を持つ製品と考えられるとされていました。
また、有意ではないながら、6ヵ月間の投与でHydE群は卵の寛容を誘導している可能性が示唆されたとして、より長期間・もしくは高用量投与により、寛容を誘導できる可能性があると結論されていました。
加水分解卵というものがあるのは知りませんでした。抗原性を残しながら低アレルゲン化し、免疫療法に応用する方法は今後他の食品にも広がってくるかもしれませんね。
今回の検討も、最初の評価をさらにしっかり(病歴で診断せずに負荷試験をする)したり、負荷期間を長期にすれば、効果が見られていたかもしれません。もちろん、牛乳や小麦とは異なり、卵は加熱での抗原性のコンロトールが比較的容易であるため、加熱卵との比較が今後必要になってくるのではないでしょうか。

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