妊娠中のニコチンアミドは、こどものアトピー性皮膚炎発症リスクと関連する

ニコチンアミド(ビタミンB3)と皮膚バリア機能、コホート試験からの検討。

昨日、ニコチンアミド(ビタミンB3)が皮膚バリアを強化するかもしれないというアトピー性皮膚炎との関連に関し論文を紹介いたしました。

ニコチンアミドはノーマークだったなあと思いながら、直近のClin Exp Allergyを見ていたらコホート研究を見つけました。

 

P: Southampton Women’s Survey (SWS)でリクルートされた妊婦3008人中、下記の血中濃度を測定を受けた497人(分娩時の母の平均年齢31.2歳±3.5歳)

E: 妊娠後期における母の血中キヌレニン、キヌレン酸、アントラニル酸、トリプトファン、ニコチンアミド、N1-メチル・ニコチンアミド濃度

C: -

O: 児の生後6か月、12か月時点でのアトピー性皮膚炎発症率

El-Heis S, et al. Higher maternal serum concentrations of nicotinamide and related metabolites in late pregnancy are associated with a lower risk of offspring atopic eczema at age 12 months. Clin Exp Allergy 2016; 46:1337-43.

結果

出生した児の50.7%は男児だった。児の平均出産体重は、3.51±0.47kgで、出生週数40.1週(IQR 39.1 - 41.0)だった。

生後6ヶ月時に、女児のアトピー性皮膚炎の発症は男児に比較して少なかった(p=0.002)。 また、生後6か月時に10.7%、生後12か月に13.7%のアトピー性皮膚炎が認められた。

妊娠後期の母の上記代謝産物は、生後6か月時の児のアトピー性皮膚炎に関連していなかった。

しかし一方、妊娠後期の母のニコチンアミド血中濃度高値は、生後12ヶ月のアトピー性皮膚炎をオッズ比 0.70(95%CI 0.53-0.90 per SD change, p=0.007)、アントラニル酸の血中濃度は、生後12ヶ月のアトピー性皮膚炎をオッズ比 0.63(95%CI 0.48-0.83 per SD change, p=0.001)と低下させた。

トリプトファン、キヌレニン、キヌレン酸、N1-メチル・ニコチンアミドは有意な関連を認めなかった。

 

コメント

妊娠後期の母のニコチンアミド(ビタミンB3)は児のアトピー性皮膚炎のリスクを低下させるとまとめられます。

本論文には、ニコチンアミドの代謝とアレルギーとの関連に関し詳しく述べられていましたので、一部和訳して載せておきます。こうみると、ニコチンアミド=ビタミンB3はまったく一緒とは言えないみたいですけど、自分の中では大体一緒と覚えておこう、、と思います(いい加減?)。

とはいえ、文字でずらずら書いても分かりにくいですよね、、、

ニコチンアミドは、ビタミンB3((魚、肉、鶏肉、キノコ、ナッツ、コーヒーに含有される)の摂取により、また、トリプトファン(多くのタンパク質の成分であり、セロトニンとメラトニンの前駆体になる必須アミノ酸)の摂取によって維持される。
肝臓で、quinolone acids によりトリプトファンはキヌレニン回路を経てナイアシンに変化する。
キヌレニン回路は、哺乳類におけるトリプトファン代謝の主要ルートであり、細胞死を含むいくつかの基本的な生物学的プロセスを調整する。
そして、キヌレニンは、IgEを介した反応を増強する。トリプトファンは、キヌレニナーゼとキヌレニン・トランスアミナーゼを通して代謝される。キヌレニナーゼは、3‐ヒドロキシアントラニル酸(3HAA)に、キヌレニンをアントラニル酸(AA)と3-ヒドロキシキヌレニン(HK)に変換する。
さらに、キヌレニン・トランスアミナーゼは、同じ2つの基質をキヌレン酸(KA)とキサンツレン酸(XA)に変換する。 3HAAは更にacroleyl aminofumarateに変換され、ニコチン酸(ナイアシン)への転換の前に非酵素の環化を通してキノリン酸(QA)に変わる。3HAAとQAは、Th1細胞に変更を加えることができ、Th2反応性を増加させる傾向ある。
N1-メチル・ニコチンアミドは、ニコチンアミドの代謝産物である。
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