アトピー性皮膚炎のかゆみを改善させる物質はあるのか?
■ アトピー性皮膚炎は、かゆみにより大きく生活の質をさげる疾患です。
■ 2019年に、小児における難治性のかゆみに関するレビューを専門誌に書いたことがあります。
■ しかし、『これがすごくよく効く』というような方法が、十分提示できなかった覚えがあります。
▷堀向 健太. 【"わけのわからない痒み"管理マニュアル】小児における難治性そう痒の原因と対策. Derma. 2019:47-51.
■ アトピー性皮膚炎のかゆみのターゲットは、さまざま検討されてきました。
▷Yang H, Chen W, Zhu R, Wang J, Meng J. Critical Players and Therapeutic Targets in Chronic Itch. Int J Mol Sci 2022; 23.
■ そのうちのひとつがペリオスチンで、いままではどちらかというとアトピー性皮膚炎の慢性化に焦点があつまっていた物質です。
▷Izuhara K, Nunomura S, Nanri Y, Ogawa M, Ono J, Mitamura Y, et al. Periostin in inflammation and allergy. Cell Mol Life Sci 2017; 74:4293-303.
▷Mitamura Y, Nunomura S, Nanri Y, Ogawa M, Yoshihara T, Masuoka M, et al. The IL-13/periostin/IL-24 pathway causes epidermal barrier dysfunction in allergic skin inflammation. Allergy 2018; 73:1881-91.
■ それが、アトピー性皮膚炎のモデルマウス(科学研究や医学研究において重要な役割を果たす実験用のマウス)が開発され、ペリオスチンが痒みを悪化させることがわかり、それを阻害する物質が見つかってきました。
■ その元になった研究を共有します。
※この研究を主導されている出原先生が、2023年10月5日にYouTubeライブをされるそうです。
※提示した研究やクラウドファンディングに関し、私はこの研究に参加しておらず、私自身に利益相反はありません。
Nunomura S, Uta D, Kitajima I, Nanri Y, Matsuda K, Ejiri N, et al. Periostin activates distinct modules of inflammation and itching downstream of the type 2 inflammation pathway. Cell Rep 2023; 42:111933.
最近確立されたアトピー性皮膚炎のモデルマウス、FADSマウスに対する検討を詳細におこなった。
■ アトピー性皮膚炎(AD)は、繰り返しのかゆみを伴う慢性の再発性皮膚疾患である。
■ アレルギー性皮膚炎においては、2型炎症が支配的であるが、非2型炎症がどのように2型炎症と共存するのか、また、2型炎症がどのようにかゆみを引き起こすのかは、完全には解明されていない。
■ 最近確立されたADのモデルマウスであるFADSマウスは、2型炎症の下流分子であるペリオスチンの遺伝子破壊または薬理学的阻害により、ケラチノサイトのNF-κB活性化が抑制される。
■ これにより、湿疹、表皮過形成、好中球浸潤が抑制されるが、2型炎症の亢進は抑制されないかった。
■ さらに、ペリオスチンを阻害すると後角ニューロンの自発発火が阻害され、かゆみによるひっかき行動が減少した。
■ 以上から、ペリオスチンは、NF-κBを介して炎症と2型炎症を関連付けると考えられたことから、アレルギー性皮膚炎におけるかゆみが促進されることが示唆され、ペリオスチンはADの有望な治療標的であることが示唆された。
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