Francis NA, et al. The management of acne vulgaris in primary care: a cohort study of consulting and prescribing patterns using the Clinical Practice Research Datalink. Br J Dermatol 2017; 176:107-15.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/27716910
■ 最近、本邦にもざ瘡(ニキビ)治療に対する良い薬が保険適応がおりてきて治療が様変わりしてきており、ガイドライン(https://www.dermatol.or.jp/uploads/uploads/files/guideline/acne%20guideline.pdf)も改訂されています。
■ では、本邦でようやく使用できるようになった薬剤が先行して使用できていた英国での治療の現状はどうでしょうか。
■ その研究結果は意外なものでした。
P: 2004~2013年の英国におけるざ瘡(ニキビ)に対するプライマリケアでのざ瘡診療とざ瘡関連治療(ARMs)における処方を受けた8歳以上の患者のうち318535例
E: - C: - O: ざ瘡関連治療(acne-related medications; ARMs)の使用を含む、初期治療・追加治療の処方内容とその年次変化 |
結果
■ 年齢と性差に関する年次受診率と、新規受診・翌年以降の受診が算出された(Clinical Practice Research Datalinkで特定)。
■ さらに、新規受診と続く90日間と翌年以降に関する処方薬を調査した。
■ 年齢を、8-11歳、12-18歳、19-29歳、≧30歳の4群に分類したところ、受療率は12-18歳女児で多く、12-18歳男児、19-29歳女性、19-29歳男性が続いた。
■ ざ瘡治療薬に関しては、経口抗生剤はオキシテトラサイクリン、テトラサイクリン、ドキシサイクリン、lymecycline、ミノサイクリンとエリスロマイシン、局所抗生物質外用は、エリスロマイシン、クリンダマイシン、局所レチノイド外用(もしくはレチノイド様)製品、過酸化ベンゾイル、アゼライン酸外用、それらの組み合わせ薬やco-cyprindiolを評価した。
■ 継続したデータが得られた167573例のうち、新規にざ瘡で受診した患者の3分の2(66.1%)は、翌年以降に処方を受けず、21.8%は1回、12.1%は2回以上を痤瘡での診療を受けた。
■ 1回もしくはそれ以上の回数の痤瘡治療で受診した8歳以上の318535例のうち、41185例(12.9%)は、ざ瘡関連治療薬の処方はなかった。
■ オキシテトラサイクリンは2004年には最もよく処方されるざ瘡関連治療薬であった(6.5アイテム/1000人・年)が、研究期間中lymecyclineが増加して、2008年には最も多い処方となった(2013年の11.8アイテム/1000人年)。
■ 2004年に最も処方された外用薬はクリンダマイシン(3.1アイテム/1000人年)だったが、クリンダマイシン+過酸化ベンゾイル混合処方が、研究期間中に増加し、2008年から最もよく処方される局所的ざ瘡関連治療薬となり、2013年の8.8アイテム/1000人年までになった。
■ ざ瘡治療を新規に開始した患者は、無治療26.7%、経口抗生剤24.9%、局所抗生剤外用23.6%、局所抗生剤外用薬+経口抗生剤28%が処方されていた。
■ 大部分の処方が2ヵ月間以下にもかかわらず、続く90日間に60.1%はざ瘡関連治療薬を追加処方されておらず、38.6%の患者は1年間処方がなかった。
■ lymecyclineと、クリンダマイシン+過酸化ベンゾイル混合薬の処方率は、2004~2013年に増加した。
コメント
■ これらのデータは、痤瘡治療における局所抗生物質や経口抗生物質の濫用と局所非抗生物質治療使用が少ないことを示しており、すなわち、ガイドラインにあるような抗生剤以外の治療が行われず、次善の治療を受けていることになります。
■ しかも、治療期間もあまりに短期間であるうえフォローも十分ではないともされており、プライマリケアにおけるざ瘡治療の改善に対する対策は、緊喫の課題であると結論されています。
■ 先発して処方できるざ瘡治療薬の種類が多い英国でも十分な状況ではないことは意外でした。
■ 本邦でも同じような状況のように思います。
■ 私は小児科医ではありますが、多い疾患でもありざ瘡治療に関わることも良くあります。
■ アダパレン(ディフェリン)、クリンダマイシンゲル(ダラシンゲル)、ナジフロキサシンクリーム(アクアチム)、ミノサイクリン(ミノマイシン)、ドキシサイクリン(ビブラマイシン)、そして漢方薬を処方することが多いです。過酸化ベンゾイルは私の勤務している病院では未だに処方できない(病院での採用がない)という状況で現状ではできていません。
■ 本論文とは全く関係はありませんが、多くの病院で”一増一減(ひとつ薬剤を導入する場合は、ひとつ採用薬を削減しなければならない)"原則で動いています。それは肥大化する薬剤の管理には役立つでしょう。しかし、その原則が長期化したため、削減する薬が乏しくなり、役立つ薬剤の導入が遅れるという事態が生まれています。クリニックで処方できる薬剤が、病院では処方できない、しかもその薬剤はガイドラインに推奨されている、、、情けない限りです。
■ すでに保険適応になった呼気一酸化窒素(使用経験は沢山持っています)や、自分自身はとっくに資格を持っているダニやスギの舌下免疫療法に関しても、使用できないという状況はとても歯がゆく感じます(愚痴ですね、、)。