Morad A, et al. Tonsillectomy Versus Watchful Waiting for Recurrent Throat Infection: A Systematic Review. Pediatrics 2017; 139.
アデノイド扁桃摘出は咽頭炎の回数を減らすのか?
■ 昨日、扁桃摘出術に関し、閉塞性呼吸障害のある児に対する扁桃摘出は、睡眠を改善させるか?という報告をご紹介いたしました。
■ 一方、アデノイド扁桃摘出術は、例えば溶連菌感染症が頻回である児などにも、感染回数の減少を目的に行われることもあります。
■ その効果をみたシステマティックレビューをご紹介いたします。
E: アデノイド扁桃摘出を受けた児
C: アデノイド扁桃摘出を受けなかった児
O: 術後の感染症に変化はあるか
アデノイド扁桃摘出と、術後の感染症の変化を検討した7研究に関し、システマティックレビューを実施した。
■ 研究開始時のデータのある研究によると、感染症・/咽喉炎回数は両群で減少したが、アデノイド扁桃摘出を受けた児は、咽頭炎罹患日数・クリニック受診・A群溶連菌感染・学校の欠席がより減少した。
■ ランダム化比較試験(RCT)1件と非ランダム化試験1件によると、扁桃摘出を受けた児は、受けなかった児よりも咽頭炎のエピソードが1年につき0.64±0.49エピソードから0.50±0.43エピソードに減少した(95%信頼区間[CI]:0.16~0.80)ことを示した。
■ RCTのintention-to-treat解析によると、アデノイド扁桃摘出を受けた児の2年間の咽喉炎回数は、3.5エピソード(95%CI:1.8~5.2)減少したが、月ごとの咽喉炎エピソードの検討では有意ではなかった。
■ 補足的なRCT2件によると、手術群は、咽頭炎による受診はより少なかったが、経過観察群でもまた低値であり、術後の最初の1年間における咽喉炎もしくは喉の感染症は、コントロール群の2.93回(95%CI:2.69~3.22)と比較し、扁桃摘出群1.74回(95%CI:1.54~2.00)だった。
■ 後向きコホート研究1件は、扁桃摘出を受けなかった小児は、A群溶連菌(GAS)感染が検査陽性になる可能性が、手術を受けなかった児に比較し3.1倍(95%CI:2.1~4.6(P < .001))だったと報告した。
■ もう一つの後向きコホート研究は、3年間の咽喉炎の平均回数は手術群がより少ないことを報告したが、この減少は時間とともに小さくなった(1-3年間の2.46回減少[95%CI:2.29~2.63; P < .001]、4~6年後の1.21回 [95%CI:1.04~1.38; P < .001]、6年後以降0.61回)。
■ QOLには、両群に有意差はなかった。
アデノイド扁桃摘出後、短期間の咽頭炎エピソードが減少する。ただ、長期間になるとその効果は少なくなる。
■ アデノイド扁桃摘出術は、手術前1~3年間に3回以上の咽頭炎がある児において、手術しない児と比較すると短期間の咽頭炎の減少効果があるとまとめられますが、一方でより長期間観察すると、その効果は少なくなるとも言えます。
■ ありがちな結論で恐縮ですが、やはり状況に応じ選択するべき問題でしょう。