そば経口負荷試験のプロバビリティカーブとリスク因子は?

そば特異的IgE抗体価から、そば負荷試験の結果を予測することは難しいです。実際に400人以上で負荷試験をおこなった結果をご紹介します。

■ そばのアレルギーに関して心配されている患者さんは多く、卵・乳・小麦に比較すると除去は容易なため、特異的IgE抗体価陽性を理由に除去がながく続いている患者さんは少なからずいらっしゃいます。

 一方、そば負荷試験のデータは少なく、今回、相模原病院より多数のデータからのプロバビリティカーブが発表されましたのでご紹介いたします。

 全文がフリーで閲覧できますので、すこし詳しめに書いてみます。それにしても、最近の柳田先生の論文量産量はすごすぎですね。

 

PECO
P:2005年7月から2014年3月に、国立相模原病院でそば経口負荷試験(OFC)を実施された実施された419人(1-17歳;中央値6.7歳)
E:そば負荷試験(総量64g;そば蛋白量3,072mg)負荷試験
C:-
O:そば診断/耐性確認のためのOFCの結果とOFC陽性の危険因子はなにか

 

結局、何を知りたい?

 ✅そば特異的IgE抗体価とそば64g経口負荷試験の結果の関係を知ろうとしている。

 

 

Yanagida N, et al. Reactions of Buckwheat-Hypersensitive Patients during Oral Food Challenge Are Rare, but Often Anaphylactic. Int Arch Allergy Immunol 2017; 172:116-22.

結果

 そば負荷試験を実施された患児は、ソバ特異的IgE抗体価陽性もしくは、ソバに対する即時型反応歴があった。

 OFCsは、A群; そば特異的IgE抗体価陽性で除去されている)に対する確定診断、B群; 過去のアレルギー歴があるための耐性確認を目的に実施された。

 そば負荷試験の総負荷量は、そば64g (蛋白量3,072mg)であり、入院では15分間隔、外来では30分間隔で負荷された。

 アナフィラキシーは、World Allergy Organization Anaphylaxis Guidelinesの定義が使用された。

 44例(10.5%)は、そばOFC陽性であり、閾値の中央値はそば蛋白量1,536mgだった(範囲768-3,072mg)。

 そのうち24人(54.5%)はアナフィラキシー反応であり、アドレナリン筋肉注射が、9例(20.3%)に投与された。

 OFC開始後の最初の症状出現の時間の中央値は30分(範囲1-660)、症状の最大出現時間は120分(範囲5-740)、症候消失時間は180分(範囲30-780)だった。

 そばに対する即時反応歴(p < 0.001)、アナフィラキシー反応歴(p = 0.028)、BW特異的抗体価高値(p = 0.001)は、OFC陽性のリスク因子だった。

 特異的IgE抗体価陽性でソバに対しアレルギーが疑われた児 369人中30人(8.1%)がOFC陽性だったが、明らかなソバアレルギーの既往のある50人(最後のアレルギー歴から中央と7.0年経過)の児のうち、14人(28.0%)OFC陽性だった。

 そばに対するアナフィラキシー歴のある12例のうち、8例は耐性を示した。

 即時反応歴がある児の10%PPVを示唆するそば特異的IgE抗体価は0.27kUA/L、ない児は4.39kUA/Lだった。

 ソバに対する即時型反応歴とソバ特異的IgE高値は、OFC陽性の有意なリスク因子だった。

論文より引用。

A群; そば特異的IgE抗体価陽性で除去されている群 B群; 過去のアレルギー歴がある群

結局、何がわかった?

 ✅そば特異的IgE抗体価陽性もしくは、そばによるアレルギー症状歴がない児でのそば負荷試験陽性率は10%程度にすぎないが、そばアレルギー歴のある児の3割近くは陽性だった。

 ✅ただし、陽性であった児のうち、半数以上がアナフィラキシーだった。

 ✅過去アナフィラキシー歴がある12人中8人は摂取可能だった。

 

そばの負荷試験の結果を特異的IgE抗体価から予測するのは難しいという結果。ただし、負荷試験が陽性であった場合、半数はアナフィラキシーであり、開始するときは医療機関での負荷試験が必要。

■ 多数のそば経口負荷試験におけるプロバビリティカーブのはじめての報告です。

特異的IgE抗体価陽性でも1割くらいしか症状がないこと、しかし陽性例1割のうちの半数はアナフィラキシーを起こしているという結果です。つまり、特異的IgE抗体価陽性で除去を勧めることは合理的でないであろうこと、一方で負荷試験で陽性であれば危険な症状を起こしやすいといえます。

■ 一方で重要なのは、アナフィラキシー歴があっても耐性を示すようになる可能性があるということです。アナフィラキシー歴があるから負荷試験が出来ないとはいえません。

■ とても臨床向きの素晴らしい結果ですが、一方で、最大負荷量が64gとやや少なめなので、「1食分食べられる」とはいえないかもしれません。

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今日のまとめ!

 ✅ そば特異的IgE抗体価陽性のみで除去を推奨はできないが、負荷試験陽性の場合は危険である可能性が高い。過去アナフィラキシーがあっても耐性を示す場合があり、やはり負荷試験を要する。

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