新生児乳児食物蛋白胃腸症(FPIES):IgE非依存性食物アレルギーの特徴と診断の課題
■ 一般的に、食物アレルギーはIgE抗体が陽性で、即時型といわれるアレルギーのタイプが多いです。
■ しかし、食物蛋白誘発腸炎症候群(FPIES)は、IgEを伴わない消化管アレルギーとされています。
■ そして現在、日本では、FPIESにあたる新生児乳児食物蛋白誘発胃腸症が増えています。
■ とくに卵黄がおおい原因食物で、摂取した後に嘔吐を繰り返すことが特徴です。
■ 新生児乳児食物蛋白誘発胃腸症には、これという診断バイオマーカー(血液検査などの指標)は存在しません。
■ そのため診断は、経口食物負荷試験、実際に食べてみないと確定できないという問題点があります。
■ 嘔吐は、原因疾患が多様で鑑別がむずかしいという面もありますが、救急外来でも、新生児乳児食物蛋白胃腸症も鑑別にあげるべきではないかという報告があります。
Ohnishi S, Yamamoto-Hanada K, Sato M, Uematsu S, Ohya Y. Food protein-induced enterocolitis syndrome is an important differential diagnosis of vomiting in pediatric emergency. Pediatr Int 2023; 65:e15675.
後方視的コホート研究として、生後12ヶ月未満の乳児で、感染症など他の原因がなく、食物摂取後1~4時間以内に嘔吐を呈し受診した症例を解析した。
背景
■ 本研究の目的は、急性食物蛋白性腸炎症候群(FPIES)が疑われる乳児が小児救急外来を受診した場合の臨床的特徴と管理を、ガイドラインが発表される前後で詳細に比較する。
方法
■ 本研究は後方視的コホート研究であり、生後12ヶ月未満の乳児で、感染症など他の原因がなく、食物摂取後1~4時間以内に嘔吐を示し国立成育医療研究センターの小児救急外来(ED)を受診した症例を「急性FPIES様症状」と分類した。
■ 2015年と2021年の該当乳児の医療記録をレビューし、連続変数にはマン・ホイットニーU検定を、名義変数にはカイ2乗検定またはフィッシャーの正確検定を用いて比較した。
結果
■ 急性FPIES様症状を呈した乳児の数は、2015年が15例(13%)、2021年が14例(15%)だった。
■ 主な原因食品は半数以上の乳児で牛乳や乳製品であり、鶏卵による症例は2015年には0例だったが、2021年には5例と増加していた。
■ 2015年の5例と2021年の12例がEDでの診察を必要とし、2015年の3例、2021年の6例が国際的コンセンサスガイドラインに基づく急性FPIESの診断基準を満たしていた。
■ 救急医が急性FPIESの4つの軽微な基準を記録しなかったケースは、2015年が7例、2021年が5例であった。
■ 救急医からアレルギー科への紹介は、2015年は0人(0%)、2021年は2人(14%)だった。
結論
■ 急性FPIESは嘔吐の鑑別診断に含まれるべきであり、小児医療スタッフはFPIESの診断基準を理解し、疑いがある症例を適切に専門医へ紹介することが重要である。
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