アーモンドアレルギーを、負荷試験前に予測できるか?

クルミとカシューナッツが、日本のナッツアレルギーで最多ではあるものの、アーモンドの相談も多いです

■ 木の実類(ナッツ類)アレルギーが増加しています。
■ 現在、日本の食物アレルギーの第3位となっています。

■ その中でも圧倒的に多いのがクルミとカシューナッツです。
■ クルミが木の実類の 56.5%、カシューナッツが 21.2%)、マカダミアナッツが 5.5%です。
■ そして、アーモンド、ピスタチオ、ペカンナッツ、ヘーゼルナッツ、ココナッツ、カカオ、クリ、松の実という順番です。

■ 木の実類といっても、『すべての木の実類』がおなじではなく、独立しています(正確にはちょっと重なる部分もありますが、この点は別の記事で解説したいと思います)。

■ 一方で、クルミ・カシューナッツは、Jug r1、Ana o3という特殊なタンパク質に対する検査が保険適用になって、かなり鑑別がしやすくなってきました。

■ そのなかでも難しいのがアーモンドです。
■ アーモンドは、有用なコンポーネントの検討が不十分で(ないわけではないです)、まだ保険適用となっている精度の高い血液検査がないのです。

■ 米国では、アーモンドは最も消費され、しかも生産された木の実なのだそうです。そのため、アーモンドアレルギーは米国では一般的なアレルゲンです。

■ そして米国から、アーモンドに関する検討の報告がありますので共有いたします。

Virkud YV, Chen Y-C, Stieb ES, Alejos AR, Renton N, Shreffler WG, et al. Analysis of oral food challenge outcomes in IgE-mediated food allergies to almond in a large cohort. The Journal of Allergy and Clinical Immunology: In Practice 2019; 7:2359-68. e3.

マサチューセッツ総合病院の1歳から66歳の患者590名に対し、アーモンド蛋白を段階的に摂取し観察するアーモンド負荷試験を実施した。

背景

■ アーモンド特異的IgE依存性食物アレルギーは、他の木の実アレルギーと同一視されてきた。
■ しかし、アーモンドに対する経口食物負荷試験の結果や、IgE依存性アーモンド過敏症を予測するための臨床検査の有用性については、十分に知られていない。

目的

■ アーモンドによる経口負荷試験の結果を記述し、臨床検査の予測価値を評価することである。

方法

■ マサチューセッツ総合病院のアレルギー診療所において、1歳から66歳までの患者590名を対象に、アーモンド負荷試験 603例が実施された。

■ 反応は、Niggemann and Beyerのアレルギー反応評価システムと、Sampson 2006によるNational Institute of Allergy and Infectious Diseasesのアナフィラキシー定義を用いて評価された。

結果

■ アーモンド負荷試験では、545件(92%)が陰性、15件(3%)が不確実、30件(5%)が陽性だった。
■ 反応の大多数は軽度で、21人(4%)にグレード2/3のアレルギー症状がみられ、3人(0.5%)にアナフィラキシーがみられた。

■ アーモンド特異的IgE抗体の中央値は0.89 kU/L(範囲は0.35未満から100 kU/L以上)、皮膚プリックテスト膨疹径の中央値は4.0 mm(範囲は0から28 mm)で、475人(81%)がアーモンドに感作されていた。
■ 負荷試験陽性は、より高いアーモンド特異的IgE抗体価(P < 0.001)、より大きなアーモンド皮膚プリックテスト膨疹径(P = 0.001)、より高いピーナッツIgE抗体価(P = 0.003)、アーモンドに対するアレルギー反応の既往歴(P < 0.029)と関連していた。

■ アーモンド特異的IgE抗体価、アーモンド皮膚プリックテスト膨疹径、負荷試験時の年齢を組み合わせた予測モデルは、グレード2/3のアレルギー反応に対して良好な予測値(曲線下面積0.83)を示した。

結論

■ アーモンド負荷試験の陽性率(5%)は、他のアレルゲンと比較して低かったことから、アーモンド負荷試験の一部は、患者対スタッフの比率を高くして安全に実施できるか、あるいは家庭で導入できる可能性があることが示唆された。
■ 通常、アレルギー反応はまれで軽度であるが、アーモンドの感作性が高い場合にはアナフィラキシーを起こす可能性がある。

 

 

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