Eriksson S, et al. Antibacterial and antibiofilm effects of sodium hypochlorite against Staphylococcus aureus isolates derived from patients with atopic dermatitis. 2017.[Epub ahead of print]
希釈した塩素はアトピー性皮膚炎の治療に役立つ?
■ アトピー性皮膚炎が悪化すると、皮膚に黄色ブドウ球菌を保菌することが多くなり、黄色ブドウ球菌の菌密度は、重症度と関連があります。
■ すでに、先行研究で臨床的に希釈した塩素による入浴(bleech浴)が効果があるとしている報告があります。
■ また、米国皮膚科学会では推奨もしているようです。
Eczema and bleach baths: Follow dermatologists’ instructions to keep children safe
■ しかし、否定的な報告もあり、私自身は患者さんにbleech浴を勧めていません。
■ 最近にBJDに、実験的に塩素濃度で黄色ブドウ球菌のバイオフィルムを減らすかどうかの報告がありましたのでご紹介いたします。
E: 次亜塩素酸ナトリウムによる処置
C:
O: AD患者が保菌しているS. aureusに対し次亜塩素酸ナトリウムは抗菌作用と抗バイオフィルム効果があるか
結局、何を知りたい?
✅塩素の希釈濃度がどれくらいだと、黄色ブドウ球菌に対する抗菌作用やバイオフィルム破壊作用があるかを知ろうとしている。
塩素希釈濃度ごとに黄色ブドウ球菌に対する効果を測定。
■ 感染したAD患者に対する皮膚生検検体は、走査電子顕微鏡(scanning electron microscopy ;SEM)で調べられた。
■ 放射拡散分析、バイオフィルム分析、共焦レーザー読取り顕微鏡観察法を使用し、AD患者の病変皮膚から検出されたS. aureus株に対する次亜塩素酸ナトリウムの効果を評価した。
■ SEMにより、感染したAD患者の皮膚から、フィブリンと細胞外物質に埋没した球状細菌の菌株群が明らかにされた。
■ 次亜塩素酸ナトリウムが0.01-0.08%濃度で、プランクトン細胞に対する抗菌効果が示唆された。
■ 次亜塩素酸ナトリウム0.01%から0.16%濃度で、S. aureusのバイオフィルムの根絶が観察された。
■ これらの結果は、共焦点レーザー読取り顕微鏡観察法でも確認された。
■ さらに、人間のAD皮膚の生体外モデルでは、次亜塩素酸ナトリウムは、0.04%の濃度がAD皮膚から検出されるS. aureusを減少させた。
結局、何がわかった?
✅塩素(次亜塩素酸ナトリウム)の濃度により、抗菌作用が異なり、塩素濃度0.01%から0.16%濃度で、黄色ブドウ球菌のバイオフィルムを根絶し、0.04%の濃度で実際のアトピー性皮膚炎から検出される黄色ブドウ球菌を減少させた。
希釈した塩素は黄色ブドウ球菌に効果があり、バイオフィルムも破壊したが、現在使用されているブリーチ浴より高い濃度の使用が必要だった。
■ アトピー性皮膚炎(AD)は、皮膚感染症が増加することが知られています。そして、黄色ブドウ球菌はAD病変で支配的になることが報告されており、すでにブドウ球菌性バイオフィルムの存在が明らかとされています。
■ 次亜塩素酸ナトリウムがAD患者のの皮膚病変部位から減らすことが出来るという報告がすでにありますが、この論文の著者らはバイオフィルムに対する効果は知られていないとしています。
■ 著者は、次亜塩素酸ナトリウムは、S. aureus株に対する抗菌・抗バイオフィルム効果があるが、感染したAD患者のブリーチ入浴法で現在使用されている濃度より高い濃度の使用が必要であると述べていました。
今日のまとめ!
✅希釈した塩素は、黄色ブドウ球菌の減少に効果があるが、その効果が得られるはいままで考えられていた希釈塩素濃度よりも高かった。
✅黄色ブドウ球菌の関与するアトピー性皮膚炎患者さんに対し注意深く使用も考慮していいのかもしれないが、あくまで実験系での結果であり、自分自身ではまだ推奨はできないのではないかと考えている。