Rigbi NE, et al. Changes in patient quality of life during oral immunotherapy for food allergy. Allergy 2017.[Epub ahead of print]
経口免疫療法とQOL(生活の質)の関係。
■ 経口免疫療法は、食物アレルギーの治療として徐々に普及しつつあると言えましょう。
■ 一方で、「継続して摂取する」ことが必要になり、中断することで再燃することもわかってきています。
鶏卵経口免疫療法において、長期間継続したほうが完全寛解率が上昇する
■ 実際、食べ続けられない場合もままあり、以前その要因を検討した報告もご紹介しました。
■ では、経口免疫療法はQOL(生活の質)を上げているのでしょうか?むしろ、続けて摂取する負担から、QOLが下がっている可能性もあります。その点に関して検討した報告をご紹介いたします。
E: OITを受けている患者
C: 年齢と性でマッチされたOITを受けていない食物アレルギー患者41人(年齢中央値7歳[範囲4-12歳])
O: 開始時と4ヶ月後の食物アレルギーに対するOIT中の患者QOLの変化
結局、何を知りたい?
✅経口免疫療法がQOLを改善させるかどうかを知ろうとしている。
食物アレルギーの経口免疫療法を行っている児のQOLを、症例対照研究で検討。
■ OITは、導入フェーズと在宅治療フェーズの交互のサイクルから成り、最初の導入フェーズは、4日間で患者f開始量である最大耐用量(maximal tolerated dose;MTD)が決定された。
■ 24日後の次の導入フェーズまでの在宅処置フェーズ中は、MTD用量で1日2回摂取継続された。
■ 第二導入フェーズでは最大4倍の耐性が得られるようにMTDを増量され、同様に第三導入フェーズは最大3倍、第四・五導入フェーズは2倍を目指した。
■ 患者のQOLは、FAQLQ-PFにより評価され、改善、不変、悪化(それぞれ、>0.5ポイント低下、≦0.5ポイント、>0.5上昇)に分類され、比較された。
■ FAQLQ-PFは0-12歳の小児におけるQOLを調査するために開発されたアンケート調査であり、3つの異なる年齢層(0-3歳、4-6歳、7-12歳)に対し異なる質問表を持ち、感情的な影響(Emotional Impact;EI)、食物に対する不安(Food Anxiety;FA)、社会的/食物制限(Social and Dietary Limitations;SDL)のドメインに分けてられている。
■ FAQLQ-PFは、始めと4ヵ月後に実施された。
■ 食物に対する不安、社会的/食物制限、総FAQLQ-PFスコアは、コントロール群と比較して研究期間中の有意な改善を認めた(P=.001、それぞれ、P=.018とP=.01)が、感情的な影響は改善されなかった。
■ FAQLQ-PFの変化は、ベースラインの最大耐量または4ヵ月の処置(用量増加のペースまたは経験されるアレルギー反応数や重症度)からは独立していた。
■ 多変量解析において、FAQLQ-PFスコアは、試験開始時のスコアと逆相関しており(regression coefficient=0.56, P<.001)、主に、ベースラインのスコアが高い(より悪いQOL)患者のQOLスコアの改善に主に依存していた。
■ ベースラインにおけるFAQLQPFスコアが低い(より良好なQOL)患者の一部は、スコアが悪化した。
結局、何がわかった?
✅経口免疫療法は、全般的にQOLを改善する。
✅しかし、免疫療法開始時にQOLが良い群は、悪化する可能性がある。
免疫療法開始時にQOLが良い群では、かえってQOLが下がる可能性がある。
■ 食物アレルギー患者のQOLは、OITの中、一部の患者においては改善するが、一方では悪化するとまとめられます。
■ 特に、ベースラインにおいてQOLが低い患者は、OITにより有意に負担が改善するが、ベースラインで良好なQOLである患者の一部は、OIT中にQOLが悪化する可能性があると述べられていました。
■ OITは、確かに効果を実感できる治療ではありますが、やはり実施に際し、患者さん自身の希望もお聞きするべきと思いました。
■ 「食べ続けなければ、今食べられている食べ物も食べられなくなるかもしれない」「でも、キライで食べたくない」という経口免疫療法のジレンマは今後も続くことになるでしょう。
■ 経皮免疫療法が一般に使えるようになれば、状況も変わってくるかもしれませんが、、、
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今日のまとめ!
✅経口免疫療法によりQOLが下がってしまう患者さんは、もともとその食品を摂取してなくてもQOLが高い群が多いと言えそうだ。