外科的デバイスに含まれた金属に対するアレルギー:レビュー

Pacheco KA. Allergy to Surgical Implants. J Allergy Clin Immunol Pract 2015; 3:683-95.

 外科的に使用された金属に対するアレルギーの評価は簡単ではありません。

■ 私は小児科医なので、成人と比較して整形外科や歯科領域の金属アレルギーを診察することは多くはありません(ないわけでもありません)。

■ それでも昔、こども病院時代に移植金属に対する金属アレルギーを疑って診療したことがあり、苦労した記憶があります。

■ 今後、移植デバイス医療が発展してくるに従い、今後も外科的な移植部品に対する金属アレルギーを考えなければならない場面が増える可能性があるでしょう。

■ ただ、「診断は簡単ではない」と言え、現状ではパッチテストの試薬も使用できていないので、実施出来ないのが現状ではあります。皮膚科紹介となりますが、現状ではそれで良いだろうと考えています。

■ 一方で、パッチテストに関し状況は改善しつつあり、標準のパッチテストの試薬が使えるようになってきています。

パッチテスト

■ この論文はすでに全文がフリーで閲覧できますが、今回はAbstractを中心に、レビューで使用されている表を、日本語訳して提示することにします。

 

結局、何を知りたい?

 ✅外科的手術や歯科領域の金属アレルギーに関してレビューしようとしている。

 

 

 金属は多種の移植デバイスに用いられている。

■ 外科的移植には幅広い多数の治療的な用途があり、関節置換では最も一般的に用いられる。一方で漏斗胸や脊髄性障害の修復、心臓デバイス(ステント、パッチ、ペースメーカー、弁)、婦人科インプラント、歯科領域においても使用されている。

■ 使われる金属の多くが免疫学的にアクティブであり、これらのデバイスのいくつかに関連して使われるのはメタクリル酸塩とエポキシである。

■ 外科的部品に対するアレルギー反応は、掻痒、ヒリヒリ感、局在的な痛み、腫脹、熱感、たるみ、不安定で非特異的な症状であり、移植デバイスの不調として非典型的に出現することがあり、限局性発疹はまれである。

■ 外科的部品で使用された特定の移植物で使用した金属やセメントの同定は困難であるが、試験や結果の解釈のガイドは重要である。

■ ニッケル、コバルト、クロムは、金属感作による移植デバイスの不全に関係する最も一般的な金属として残っている。また、メタクリル酸塩系接合剤も重要な誘因である。

■ このレビューは病歴をどのように評価し解釈かのガイドを提供し、手術で使われる部品を確認し、感作のための試験を行い、可能性がある溶剤についてのアドバイスを提供する。

■ 金属によって誘発された免疫刺激経路に関するデータも含まれる。

■ このセッティングにおいて、アレルギー専門医、皮膚科医または両方において、外科的な転帰と患者ケアを有意に改善する可能性がある。

 

レビュー中の表1~3,表5~6の日本語訳。

■ 患者は、過去、パーソナル製品を通して金属にさらされていた可能性がある(例えば、宝石、ピアス、歯列矯正器具、腕時計のバンド、ベルトのバックル、ジーンズスナップ)。

表1:医療用および外科用インプラントに使用される金属・元素。

 

■ 骨セメントは、ほとんどの場合、股関節置換術、時には股関節の修復、人工逆肩関節全置換術、および脊椎手術で使用される。

表2:骨セメントのコンポーネントとその機能(参照は論文の参考文献番号)。

 

■ 患者が整形外科または歯科的なコンポーネントに対するアレルギーの病歴があるかどうかを調べるための推奨スクリーニング質問表。

*ブログ管理人注; Krazy Glueとは、瞬間接着剤「アロンアルフア」シリーズのうち、一般家庭向けで北米で販売されたブランド名だそうです。

 

■ 主要な整形外科のサプライヤーからの安全性データシートのレビューに基づき、アレルギーを誘発することが知られている整形外科領域移植インプラントに使用されている金属。

 

■ 心血管デバイスにおいて一般的に使用されている金属合金の組成。

 

 

結局、何がわかった?

 ✅外科的移植には多種の金属が用いられており、それぞれの領域での使用金属が紹介されていた。

 

 

それぞれの領域で使用される金属にも多種多様なものが使用されており、金属アレルギーの診断は簡単ではない。

■ 現実的に外科的手術における金属アレルギーを診断することは難しい面も大きいようです。

■ 当科の現状では金属パッチが難しいこともあり、皮膚科と連携する必要性がありそうですね。

■ なお、一般にアレルギーになりにくいと思われがちなチタンなども、最近報告が増えてきているようです(Contact dermatitis 2016; 74:323-45.1. )。

 

今日のまとめ!

 ✅外科的移植による金属アレルギーの診断は決して簡単ではない。金属の組成などに配慮する必要性がある。

 

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