新規抗インフルエンザ薬 ゾフルーザ(バロキサビルマルボキシル)第三相試験

Portsmouth S, et al. Cap-dependent Endonuclease Inhibitor S-033188 for the Treatment of Influenza: Results from a Phase 3, Randomized, Double-Blind, Placebo-and Active-Controlled Study in Otherwise Healthy Adolescents and Adults with Seasonal Influenza. Open forum infectious diseases: Oxford University Press, 2017:S734.

ゾフルーザは、1回内服ですむ新しい機序の抗インフルエンザ薬。

■ 抗インフルエンザ薬は、内服薬であるタミフル(Oseltamivir)、吸入薬であるリレンザ(Zanamivir)、イナビル(Laminamivir)、静注薬であるラピアクタ(Peramivir)が臨床応用されています。

■ どれがいいか?に関しては一概には言えませんが、少なくとも解熱時間までの期間や臨床症状の改善までの期間に有意差はないとされています(時々このブログで引用させていただいているKid先生が比較論文を解説されています)。

【論文】抗インフルエンザ薬の有効性の比較(タミフル vs. リレンザ vs. イナビル vs. ラピアクタ)

■ ウイルスのクリアランスはラピアクタが早い
タミフルと比較して、ラピアクタは統計学的に有意に早くウイルスがクリアランスされていました。リレンザとイナビルは、タミフルと比較して有意差はありません。

■ 臨床的な有意差は4群でなし
解熱までの期間(9割は2日以内に解熱)
症状緩和までの期間(9割は3日以内に軽快)

■ 再発熱のリスク
は4剤とも同程度で、統計学的な有意差はありませんでした。

■ そんな中、新しい機序の抗インフルエンザ薬、ゾフルーザ(Baloxavir Marboxil )が承認され、近日中に保険適応がおりるという話題がはいってきました

■ 1回内服で治療完結するという薬剤で、利用しやすいことが想像される抗インフルエンザ薬ですが、その第三相試験の結果をみつけたのでご紹介します。なお、「S-033188」がゾフルーザの試験薬番号のようです。

 

12~64歳の発症48時間以内のインフルエンザ患者1436人に対し、12歳〜19歳をゾフルーザ群・プラセボ群に、20〜64歳をゾフルーザ群、プラセボ群、タミフル群にランダム化し、有効性を評価した。

背景

■ キャップエンドヌクレアーゼ(CEN)は、インフルエンザウイルスポリメラーゼのPAサブユニットに存在し、ウイルスmRNA生合成中の「キャップスナッチ」プロセスを伝達する。

■ S-033188(ゾフルーザ)は、CENに対する、強力かつ選択的な分子阻害剤である。

■ ここでは、世界的な第3相試験であるCAPSTONE-1の臨床的およびウイルス学的結果を報告する。

 

方法

■ 多施設ランダム化二重盲検プラセボおよび実薬によるコントロール試験である。

■ 主な適格基準は、12~64歳、発熱(腋窩温度≧38.0℃)、一般症状が1以上、呼吸器症状が1以上(中等症から重症)、発症から48時間以内であった。

■ 20〜64歳の患者を2:2:1の比率で無作為化して、S-033188単回、プラセボ、オセルタミビル(タミフル) 75mgを1日2回×5日間経口投与した。

■ 12歳〜19歳の患者を2:1の割合で無作為化して、S-033188またはプラセボの単回経口投与を受けた。

有効性のプライマリエンドポイントは、ITT集団に対するインフルエンザ症状が改善するまでの期間(time to alleviation of influenza symptoms;TTAS)だった

■ ウイルス力価およびRNA量は、投与前および投与後の鼻/咽頭スワブから決定した。

 

結果

■ 1436人がランダム化された。

S-033188群では、TTASがプラセボ群よりも有意に短かった(TTASの中央値:53.7時間 vs 80.2時間、P <0.0001)

ウイルス排出の期間の中央値は、オセルタミビル(タミフル)で治療した患者では72時間(P <0.0001)、プラセボでは96時間(P <0.0001)であったのに対して、S-033188で治療した患者では24時間だった

■ S-033188群は、3日目(オセルタミビルと比較して)または5日目(プラセボと比較して)までの全ての時点で、オセルタミビル群またはプラセボ群よりもウイルス力価やRNA含有量が試験開始時に比較して有意に減少した。

■ S-033188は一般的に良好な忍容性であり、オセルタミビル群よりも治療による有害事象の発生率が低かった。

 

結論

■ S-033188による治療は、インフルエンザによる症状を緩和する上でプラセボより優れており、ウイルス学的転帰においてオセルタミビルやプラセボより優れていた。

■ S-033188の安全性プロファイルはオセルタミビルのそれと比較して良好であった。

 

結局、何がわかった?

 ✅ゾフルーザ(Baloxavir Marboxil)は、インフルエンザ症状が改善するまでの期間が、プラセボ群よりも有意に短かった(中央値:53.7時間 vs 80.2時間、P <0.0001)。

 ✅ ウイルス排出の期間の中央値は、タミフル群では72時間(P <0.0001)、プラセボ群では96時間(P <0.0001)、ゾフルーザ群は24時間だった。

 

 

ゾフルーザは、タミフルに比較して、症状の期間は短縮しないが、ウイルスの排泄期間は短縮するようだ。ただし、新しい機序でもあり、まだ注意は要すると思われる。

■ ゾフルーザは、プラセボよりインフルエンザ症状が改善するまでの期間を短縮し、タミフルに比較してウイルス排出期間を短縮したといえます。

ただ、まだ12歳以降になりますし、小児で大きく適応が広がるわけではないでしょう。また、いわゆる新薬で、これまでの作用機序と異なる薬剤です。私としては少し静観してから、導入していくことになるんじゃないかなあと思っています。

 

2018/3/15 追記。

※ ゾフルーザが保険適応が決まった後に、ゾフルーザが12歳未満でも適応があることを知りました。でも、まだしばらく静観するスタンスであることは変わりません。

 

2018/11/7 追記。

NS先生が、ゾフルーザに関する素晴らしい考察を述べておられました。引用させていただきます。

 

 

今日のまとめ!

 ✅ゾフルーザは、プラセボよりインフルエンザ症状が改善するまでの期間を短縮し、タミフルに比較してウイルス排出期間を短縮する、1回内服で治療完結する、新しい機序の抗インフルエンザ薬。ただし、まだ当面は使用するにはまだデータが不足していると思われる。

 

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