Stokholm J, et al. Cesarean section changes neonatal gut colonization. Journal of Allergy and Clinical Immunology 2016; 138:881-9. e2.
帝王切開分娩と腸内細菌叢。
■ 腸内細菌は、アレルギーばかりでなく様々な疾患に関与することがわかっています。
便中細菌の菌株により、アトピー性皮膚炎の発症リスクが変わる?
妊娠期に使用された抗生剤は、乳児期早期の炎症性腸疾患の発症リスクをあげるかもしれない
■ そして、帝王切開分娩とアレルギー疾患の発症には有意な関連があることが報告されるようになりました。
■ そこで、本日から、帝王切開分娩とアレルギーに関し、腸内細菌叢の面から検討した報告を3本ご紹介したいと思います。
※ 2018/3/6一部修正しました。元文献では、「vaginal delivery(経腟分娩)」でなく「natural delivery(自然分娩)」と記載ありますが、本邦では「経腟分娩」の方が適切な訳ではないかというご意見をいただきました。複数の小児科医の意見をもとに訳を修正しました。ご意見をいただいたkamekura先生(@kamekurasan1)、KID先生(@Dr_KID_ )、NS先生(@nuno40801 )ありがとうございました。
大規模出生コホート試験に参加した児700人の便と気道の細菌叢を1歳まで調査し、その差異を検討した。
背景
■ 帝王切開による分娩は、小児期の免疫介在性疾患のリスク増加と関連しており、免疫の成熟に対する早期の細菌コロニー形成パターンへの役割が示唆される。
目的
■ 小児期の喘息に関するコペンハーゲン前向き研究(COPSAC2010)の出生コホートにおいて、生後1年の腸および気道定着パターンに対する送達方法の影響を説明しようとした。
方法
■ COPSAC2010出生コホートからの700人の児がこの分析に参加した。
■ 糞便試料を1週間、1ヶ月および1年齢で採取し、1週間、1ヶ月および3ヶ月齢で下咽頭吸引物を収集し、細菌培養した。
■ 個人的なインタビューにより、出産様式、抗生物質使用、生活習慣因子に関する詳細情報を得た。
結果
■ 78%が経腟分娩、12%は緊急帝王切開、9%は帝王切開で出生した。
■ 帝王切開による出生は、生後1週間でのCitrobacter freundii、Clostridium種、Enterobacter cloacae、Enterococcus faecalis、Klebsiella oxytoca、Klebsiella pneumoniae、Staphylococcus aureusによる腸管コロニー形成と有意に関連しており、Escherichia coli によるコロニー形成は経腟分娩と関連していた。
■ 生後1ヵ月では、これらの差異はそれほど顕著ではなくなり、1歳時には、有意でなくなったことが、多変量データによる部分最小二乗分析によって確認された。
■ 初期の気道の微生物叢は出産様式に影響されなかった。
結論
■ 帝王切開分娩は、新生児期の腸の早期コロニー形成パターンに関連したが、気道では認められなかった。
■ その差異は1歳までに正常化した。
■ この研究で示されるように、微生物の乱れは、帝王切開分娩と免疫を介した疾患に関連する可能性があることを示すことができると推測している。
結局、何がわかった?
✅帝王切開分娩では、腸内細菌叢の構成が、生後1週間で経腟分娩と異なる。その差異は、生後1ヵ月では顕著ではなくなり、1歳時には有意でなくなる。
✅その差異は、気道の細菌叢では認められない。
帝王切開分娩では、腸内細菌叢の形成パターンが異なり、1歳までに経腟分娩との差がなくなる。
■ もちろん、この結果があるからといって、帝王切開分娩を恐れて経腟分娩に、、というわけではありません。
■ 帝王切開分娩は、経腟分娩ではリスクのある場合に選択される方法であり、経腟分娩を選択して更に大きなリスクにさらすわけにはいきません。
■ こういう結果をもとに、今後のアレルギー疾患予防を考えていくべき研究結果ととらえるべきでしょう。
乳酸菌製剤によるアトピー性皮膚炎予防は腸内細菌叢に左右される
■ では、この細菌叢の違いは、実際にアレルギー感作や発症に関連していくのでしょうか?それに関して検討したコホート試験の結果を、明日以降提示したいと思います。
今日のまとめ!
✅帝王切開分娩は、生後1週間での腸内細菌叢の差異を生むが、その後、1歳までに差異は消失する。