Offeddu V, et al. Effectiveness of masks and respirators against respiratory infections in healthcare workers: a systematic review and meta-analysis. Clinical infectious diseases 2017; 65:1934-42.
マスクは呼吸器感染症をどれくらい防ぐのか?
■ マスクが呼吸器感染症を防ぐかどうかのデータは、実はあまり多くはないようです。そこで、このテーマでのメタアナリシスを見つけたのでご紹介します。
■ なお、文脈から、”mask”をフェイスマスク(一般的なマスク)、”respirator”をN95マスクと翻訳しましたが、違ったら教えてください。また、元の抄録は構造化抄録ではなかったので、背景、方法、結果、結論にわけました。
フェイスマスク・N95マスクの呼吸器感染症に対する防御効果をみた報告に関し、メタアナリシスを実施した。
背景
■ 医療従事者における、呼吸器感染症に対するフェイスマスクと呼吸マスクの防御効果を、システマティックレビューとメタアナリシスにより定量化する。
方法
■ 関連した文献は、Pubmed、EMBASE、Web of Scienceから検索された。
■ プールされた推定値を計算するためにメタアナリシスを行った。
結果
■ ランダム化比較試験(RCT)のメタアナリシスにより、フェイスマスクや呼吸マスク(N95マスク)が、臨床的な呼吸器疾患(CRI)(リスク比[RR] = 0.59; 95%信頼区間[CI]:0.46-0.77)およびインフルエンザ様疾患(ILI)(RR = 0.34; 95%CI:0.14-0.82)に対する防御作用があることが示された。
■ N95呼吸マスクは、フェイスマスクと比較して、CRI(RR = 0.47; 95%CI:0.36-0.62)や細菌(RR = 0.46; 95%CI:0.34-0.62)に対して優れた防御効果を示したが、ウイルス感染やILIに対しては変わらなかった。
■ 観察研究のメタアナリシスにより、重症急性呼吸器症候群(severe acute respiratory syndrome; SARS)に対するフェイスマスク(OR = 0.13; 95%CI:0.03-0.62)や呼吸マスク(OR = 0.12; 95%CI:0.06-0.26) の防御作用にエビデンスがあることが示唆された。
結論
■ このシステマティックレビューとメタアナリシスは、(マスクという)呼吸器防御の方法を支持している。
■ しかし、既存のエビデンスは不十分であり、研究結果は矛盾している。
■ 流行期間外に実施された標準化されたプロトコルによる、複数のランダム化比較試験が、フェイスマスクやN95呼吸マスクの使用が最も正当化される状況を明確にするために役立つと考えられる。
結局、何がわかった?
✅フェイスマスクや呼吸マスク(N95マスク)は、一般的な呼吸器疾患の感染リスクを 0.59倍にし、インフルエンザ様疾患を0.34倍にする。
✅N95マスクは、フェイスマスクに比べ、一般的な呼吸器感染症や細菌感染リスクの低減効果は高いが、インフルエンザやウイルス感染の感染リスクは変わらない。
マスクはやはり、呼吸器感染のリスクを減らすようです。
■ はるか昔、ウイルス学の講義で、ウイルスの粒子径は小さいので普通のマスクで感染は防げないと聞いた覚えがありますが、臨床上は効果があると感じていました。
■ やはり、マスクは大事だろうなあと思います。
今日のまとめ!
✅マスクにはやはり、呼吸器疾患の防御効果があると考えてよいようだ。