アトピー性皮膚炎の合併症に、白内障があります。
■ アトピー性皮膚炎患者さんは目を良くこするため、その物理的刺激で白内障がおこる可能性が指摘されています。
■ しかし、その頻度などに関しての報告は決して多くはありませんでした。
Jeon HS, et al. Association of Pediatric Atopic Dermatitis and Cataract Development and Surgery. JAMA ophthalmology 2018. [Epub ahead of print]
アトピー性皮膚炎児34375人に対し、アトピー性皮膚炎と重症度がその後10年間で白内障発症や手術のリスクに関連しているかを検討した。
重要性
■ アトピー性皮膚炎(atopic dermatitis ; AD)の小児における白内障発症のリスクに対処するデータは不足している。
目的
■ 韓国小児における白内障発症と白内障手術との関連について検討した。
デザイン、セッティング、参加者
■ この集団ベースのレトロスペクティブ縦断コホート研究では、2002年から2013年までの韓国の国民健康保険サービスデータベースの全国からの代表的なデータを使用した。
■ アトピー性皮膚炎(AD)および重症ADに罹患している20歳未満の患者から構成されたAD症例のインシデント(事例)を、年齢・性別・居住地・世帯収入を元にしたpropensity scoreを使用し、4つの対照群に整合させた。
主なアウトカムと計測
■ Kaplan-Meier法およびlog-rank検定を用いて、アトピー性皮膚炎(AD)群と対照群との白内障発症および白内障手術の発症率を比較した。
■ コックス比例ハザードモデルを白内障と白内障手術に適応して、一致した群における危険因子を決定した。
結果
■ アトピー性皮膚炎(AD)患者数は34375人(女児16159人[47.7%]、平均年齢3.47 ±4.96 歳)であり、重症ADは3734人(10.9%)だった。
■ 白内障の発症は、AD群と対照群(0.216% vs 0.227%; 95%CI -0.041%~0.063%; P = .32)、重症AD群と対照群では有意差はなかった(0.520% vs 0.276 %; 95%CI; -0.073%〜0.561%; P = .06)。
■ 一方、白内障手術は、AD患者より対照群で(0.075% vs 0.041%; 95%CI 0.017%-0.050%; P = 0.02)、重症AD群より対照群で(0.221% vs 0.070%、95%CI 0.021%-0.279%; P = 0.03)より頻繁に施行されていた。
■ 重症ADは、白内障の発症(調整ハザード比 [aHR] 1.94; 95%CI 1.06-3.58; P = .03)と白内障手術の必要性(aHR 5.48; 95%CI 1.90-15.79; P = 0.002)の両方に関連していた。
結論と妥当性
■ 10年間の経過観察後でも、白内障の絶対リスクは、ADの有無にかかわらず稀だった。
■ しかし、この結果は、AD児は手術を必要とする白内障のリスクが高く、疾患の重症度が白内障発症や白内障手術のリスクを増加させる可能性があることを示唆している。
結局、何がわかった?
✅ アトピー性皮膚炎群と対照群で、白内障の発症には有意差はなかった。
✅ 一方、白内障手術は、アトピー性皮膚炎群より対照群で(0.075% vs 0.041%; 95%CI 0.017%-0.050%; P = 0.02)、重症AD群より対照群で(0.221% vs 0.070%、95%CI 0.021%-0.279%; P = 0.03)より頻繁に実施されていた。
✅ 重症のアトピー性皮膚炎は、白内障の発症(調整ハザード比 [aHR] 1.94; 95%CI 1.06-3.58; P = .03)と白内障手術の必要性(aHR 5.48; 95%CI 1.90-15.79; P = 0.002)のリスクを上昇させた。
重症のアトピー性皮膚炎は、その後の白内障の手術になる可能性をあげることになります。
■ アトピー性皮膚炎が白内障のリスクになると言える結果かと思います。
■ もちろん、白内障の頻度は決して高くないので、あまり前面に押し出してお話するのもまた問題かもしれませんが、重症患者さんに関しては眼科のコンサルトは重要でしょう。
■ 私は、重症アトピー性皮膚炎の小学校以上のお子さんに関しては、初診時に眼科受診を勧めるようにしています。ごく稀に、小学生でも白内障がみつかります。
今日のまとめ!
✅小児期の重症アトピー性皮膚炎は、将来の白内障の手術の可能性をあげる可能性がある。