Schmitt J, et al. Increased attention‐deficit/hyperactivity symptoms in atopic dermatitis are associated with history of antihistamine use. Allergy 2018; 73:615-26.
アトピー性皮膚炎は、皮膚感染症のリスクだけでなく他のリスクも増加させます。
■ アトピー性皮膚炎(AD)は、皮膚の免疫機能だけでなく全身的な免疫反応も低下させる可能性が示唆されています。
■ さらに、そのかゆみは睡眠障害も起こしえます。
■ そして、小児期のADが、ADHDや自閉症のリスクになるかもしれないという報告があります。
6歳から12歳のアトピー背皮膚炎とADHD症状の関連を調査した。
背景
■ 疫学的エビデンスは、アトピー性皮膚炎(atopic dermatitis; AD)と注意欠陥/多動性障害(attention‐deficit/hyperactivity disorder; ADHD)との関連を示唆している。
■ ADHDのリスクがあるAD患者のサブグループを最もうまく特定するための基礎をなす機序や方法はほとんどわかっていない。
目的
■ ADのみ、ADHDのみ、AD / ADHDの併存している小児において、年齢を一致させた健常対照児と、社会的、臨床的、心理社会的特徴を比較し、ADHDに関連するADの状況を調査する。
方法
■ 要因デザインを適用し、6歳から12歳の①アトピー性皮膚炎(AD)のみ、②ADHDのみ、③AD + 注意欠陥/多動性障害 (ADHD)併存、④健常対照(healthy controls; HC; AD/ADHDなし)の4群を調査した。
■ ADHD症状、他の問題行動、生活の質、育児ストレス、睡眠問題を、検証された計測法で群間で比較した。
■ ADのみ群において、臨床症状(objective SCORAD)、症状(POEM、掻痒のVAS [visual analog scale]、睡眠障害のVAS)、以前のADに対する治療、ADHD症状に関連する疾患パターンを評価された。
結果
■ 健常対象群 47人と比較し、アトピー性皮膚炎(AD)のみ群 42人、ADHDのみ群 34人、AD + ADHD併存群 31人は、問題行動が有意に増加しQOLが低下していた。
■ ADのみ群は、健常対象群よりもADHD症状レベルが有意に高かった。
■ ADのみ群では、過去の抗ヒスタミン剤使用は、ADHD症状の増加と有意に関連していた(OR 1.88; 95%CI 1.04-3.39)。
■ 現在の臨床症状やAD症状は、ADHD症状とは無関係だった。
結論
■ ADHDの臨床診断がされないとしても、アトピー性皮膚炎(AD)は、ADHD症状レベルを上昇させる。
■ 抗ヒスタミン剤の使用がADHDの主要な危険因子であるか、過去のAD重症度やそれに関連した睡眠障害の結果であるかどうかを、さらなる研究により判断する必要がある。
結局、何がわかった?
✅健常群 47人と比較し、アトピー性皮膚炎(AD)のみ群 42人、ADHDのみ群 34人、AD + ADHD併存群 31人は、問題行動が有意に増加しQOLが低下していた。
✅ADのみ群では、過去の抗ヒスタミン剤使用は、ADHD症状の増加と有意に関連していた(OR 1.88; 95%CI 1.04-3.39)。
アトピー性皮膚炎の症状がADHDのリスクになるのか?それとも、ADHD症状があるからアトピー性皮膚炎を悪化させるのか?
■ この検討は、アトピー性皮膚炎がADHDの原因になっているのか、ADHDが基礎にあるためにアトピー性皮膚炎のリスクがあるのかは明らかにできていません。
■ また、抗ヒスタミン薬の使用そのものがADHD症状のリスクではなく、AD症状が強いから抗ヒスタミン薬を使用しているのではないかという捉え方もできるでしょう。
■ 実際、アトピー性皮膚炎があっても、ADHDのリスクをあげないという報告もあります。
乳児期のアトピー性皮膚炎と学童期の注意欠如・多動症(AD/HD)は関連しない: コホート研究
■ 一方で、自閉症との関連を指摘する報告もまた、あります(Billeci L, et al. Association Between Atopic Dermatitis and Autism Spectrum Disorders: A Systematic Review. Am J Clin Dermatol 2015; 16:371-88.)(Xu G, et al. Association of Food Allergy and Other Allergic Conditions With Autism Spectrum Disorder in Children. JAMA Network Open 2018; 1:e180279-e.)。
■ まだ、結論は出せないと思いますが、私としては、アトピー性皮膚炎の症状を長引かせないように治療介入することが重要と思っています。
今日のまとめ!
✅アトピー性皮膚炎と抗ヒスタミン薬の使用が、ADHD症状のリスクとされたが、どちらが先かはまだ判明していないと思われる。