皮膚常在菌の一部は抗菌ペプチドを産生し、黄色ブドウ球菌を抑制している

Nakatsuji T, et al. Antimicrobials from human skin commensal bacteria protect against Staphylococcus aureus and are deficient in atopic dermatitis. Science translational medicine 2017; 9(378): eaah4680.

抗菌ペプチドとは、多細胞生物を守る物質のことです。

■ 抗菌ペプチドとは、簡単に言うと自分自身がつくりだす抗生物質みたいなものといえば良いでしょうか。多細胞生物には基本的には備わっている、菌に対抗するためのペプチド(アミノ酸が10個~数10個つらなっている小さな分子量の物質です。

■ 今回はScienceの姉妹誌からで、もともと人間に悪さをしない菌が、人間に害を及ぼしうる黄色ブドウ球菌の増加を防ぐ抗菌ペプチドを産生しているかもしれないという報告です。

 

健常対照者・アトピー性皮膚炎患者から検出されたコアグラーゼ陰性ブドウ球菌(coagulase-negative Staphylococcus ;CoNS)に関する抗菌活性を検討した。

背景

■ マイクロバイオームは、適応性および生まれつきの免疫機能に影響を与えることにより、人間の健康を促進もしくは損なうことができる。

 

目的

■ 我々は、アトピー性皮膚炎(Atopic dermatitis; AD)患者によく見られる病原菌である黄色ブドウ球菌を殺菌し、ADを悪化させる重要な因子であるヒトの皮膚に常在する細菌が宿主防御に関与しているかどうかを調査した。

 

方法

■ 黄色ブドウ球菌に対する抗菌活性のハイスループットスクリーニングは、健康被験者およびAD被験者の皮膚から採取したコアグラーゼ陰性ブドウ球菌(coagulase-negative Staphylococcus ;CoNS)の分離株について行った。

 

結果

抗菌活性を有するCoNS株は、健常集団では一般的であったが、AD被験者ではまれであった。

■ 抗菌活性を有する菌株の頻度が低いことは、黄色ブドウ球菌によるコロニー形成と相関した。

■ 抗菌活性は、表皮ブドウ球菌(Staphylococcus epidermidis)および黄色ブドウ球菌(Staphylococcus hominis)を含むCoNS株によって産生された、既報にない抗菌ペプチド(antimicrobial peptides;AMP)として同定された。

■ これらのAMPは、菌株に特異的で、強力かつ選択的に黄色ブドウ球菌を死滅させ、ヒトAMP LL-37と相乗効果を示した。

■ これらのCoNS株をマウスへ投与すると、非活性株の投与と比較してin vivo(生体内)での防御機能があることを確認した。

■ 驚くべきことに、AD患者の抗CoNS株を再度投与すると、黄色ブドウ球菌によるコロニー形成が減少した。

 

結論

■ これらの知見は、共生している皮膚の細菌がどのように病原体から保護し、どのように皮膚の微生物異常が病気につながる可能性があるかを示している。

 

結局、何がわかった?

  健常対照者およびアトピー性皮膚炎患者から採取したコアグラーゼ陰性ブドウ球菌(coagulase-negative Staphylococcus ;CoNS)の分離株を調査すると、

 ✅健常対象者から得られたCoNS株は抗菌活性を有していたが、アトピー性皮膚炎患者から得られたCoNS株は抗菌活性を有しているものはまれだった。

 ✅抗菌ペプチドを産生するCoNS株が同定され、マウスに移植すると黄色ブドウ球菌が減少した。

 

 

アトピー性皮膚炎を悪化させるような黄色ブドウ球菌は一部なのかもしれない。

■ 黄色ブドウ球菌にも種々あることがわかっていて、重症のアトピー性皮膚炎から分離された黄色ブドウ球菌は、重症のアトピー性皮膚炎を起こすことが報告されています。

重症アトピー性皮膚炎から検出された黄色ブドウ球菌ほど、アトピー性皮膚炎を悪化させる

■ 黄色ブドウ球菌であればすべて悪者、というわけでもなさそうですね。

 

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今日のまとめ!

 ✅コアグラーゼ陰性ブドウ球菌(coagulase-negative Staphylococcus ;CoNS)の中には、抗菌ペプチドを産生し、アトピー性皮膚炎を悪化させる黄色ブドウ球菌を抑制しているようだ。

 

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