重症アトピー性皮膚炎から検出された黄色ブドウ球菌ほど、アトピー性皮膚炎を悪化させる

Byrd AL, et al. Staphylococcus aureus and Staphylococcus epidermidis strain diversity underlying pediatric atopic dermatitis. Science translational medicine 2017; 9:eaal4651.

古くて新しい黄色ブドウ球菌とアトピー性皮膚炎の関連。

■ アトピー性皮膚炎を発症すると、皮膚から黄色ブドウ球菌が高率に検出されます。そして、その黄色ブドウ球菌の密度は、皮膚のバリア機能より強く、アトピー性皮膚炎の重症度と関連します。

■ 今回は、先日の総合アレルギー講習会で聴講していた時に出てきた報告です。黄色ブドウ球菌にも種類があり、重症アトピー性皮膚炎から検出された黄色ブドウ球菌は、より重篤なアトピー性皮膚炎を発症させるという驚くべき結果です。結果はとても興味深いですが、臨床に関係するものの、その結論に至るまでが基礎研究の手法であり、すこし難しめ。

 

 

アトピー性皮膚炎から分離されるブドウ球菌種をメタゲノム解析で特定し、そのブドウ球菌をマウスに移植してアトピー性皮膚炎の増悪に関係するかを検討した。

■ アトピー性皮膚炎(AD;eczema)患者は、様々な臨床経過、重症度、治療反応を表すため、多因子性疾患としての複雑さが強調されている。

■ AD患者の皮膚微生物群を研究するために、これまでの研究は、培養された分離株に対する伝統的なタイピング法を使用するか、細菌のマーカー遺伝子の配列を利用していた。

ショットガン・メタゲノム配列解析は、領域から種および系統レベルの多様化に至るまで、複数の微生物群の解析においてはるかに上回る分析力を提供する。

■ 我々は、疾患の臨床経過を通して採取された小児AD患者集団から微生物の時間的動態を分析した。

■ AD患者の紅斑において種レベルの調査を実施し、より重篤の患者では黄色ブドウ球菌がより優勢であり、より重篤でない患者からは表皮ブドウ球菌がより優位であることが示された

■ メタゲノム塩基配列分析により、重篤な患者では黄色ブドウ球菌クローン株が示された。そしてすべての患者において、多様な表皮ブドウ球菌は、黄色ブドウ球菌への圧となった(増殖を抑えた)。

論文から引用。ブドウ球菌の種類によりアトピー性皮膚炎が増悪しているとき、紅斑を増強させる。

(A) アトピー性皮膚炎ではブドウ球菌種が相対的に多い。

(B)疾患の状態により、ブドウ球菌属が相対的に多い。

(C)黄色ブドウ球菌(左)と表皮ブドウ球菌(右)はその量とObjective SCORADが相関する。

■ さらに、黄色ブドウ球菌の株レベルの生物学的効果を調べるために、AD患者および対照から単離したヒト株をマウスの皮膚局所に定着させた

■ この皮膚への菌移植モデルは、AD患者に特徴的な皮膚炎症や免疫サインを誘発する際に、黄色ブドウ球菌株ごとに特異的な違いを示した。

■ 具体的には、黄色ブドウ球菌は、より重篤な紅斑のあるAD患者から分離された黄色ブドウ球菌は、表皮ヘルパーT細胞(Th2)とTh17細胞の表皮肥厚や拡大を誘発した。

論文から引用。アトピー性皮膚炎から分離された黄色ブドウ球菌を、マウスの皮膚に移植するとアトピー性皮膚炎のような皮膚免疫応答を誘発する。

■ 高分解能配列決定法、培養および動物モデルを統合することにより、ブドウ球菌株の機能的差異がどのようにしてAD疾患の複雑さに関わっているかが示された。

 

結局、何がわかった?

 ✅アトピー性皮膚炎は、重症となると黄色ブドウ球菌優勢になるが、重症のアトピー性皮膚炎から分離された黄色ブドウ球菌ほど、マウスに移植すると重症のアトピー性皮膚炎を誘発する。

 

 

黄色ブドウ球菌とアトピー性皮膚炎の関連に関し、さらに研究が進展している。

■ ショットガンメタゲノミクスとは、サンプル中に存在する微生物すべての遺伝子全体を解析する方法です。

ショットガンメタゲノミクス

■ Shannon diversity(シャノン多様性)というのは、種の多様性を示す指数として一般的なものです。

種多様性

■ 私は基礎研究の部分をよくわかっていないので、理解が間違っていたらどなたかご指摘くださいませ。

■ どちらにしても、黄色ブドウ球菌にも種類があり、その種類によりアトピー性皮膚炎の増悪への関与が異なるというのは注目すべき結果です。

■ 黄色ブドウ球菌が定着しているような状態では、大きく感作が進行するのは良く経験されますし、皮下に黄色ブドウ球菌が侵入すると、Th2(アレルギー側)に大きく刺激されることも証明されてきています(Nakatsuji T, et al. Journal of Investigative Dermatology 2016; 136:2192-200.
)。

■ 皮膚をはやく良くすることの重要性を再認識させる報告と思います。

 

今日のまとめ!

 ✅黄色ブドウ球菌は、菌種によって、さらにアトピー性皮膚炎を悪化させるようだ。

 

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