Zhu Z, et al. Association of Antenatal Micronutrient Supplementation With Adolescent Intellectual Development in Rural Western China: 14-Year Follow-up From a Randomized Clinical Trial. JAMA Pediatr 2018. [Epub ahead of print]
妊娠中の葉酸は重要。他の微量元素は?
■ 妊娠中に葉酸の内服は勧められています。これは、二分脊椎の予防のためです。
■ 葉酸以外にも、マルチビタミンを内服すると自閉症が減るかもしれないという観察研究(コホート研究)が報告されています。
妊娠前/中に母が葉酸やマルチビタミンを内服すると、子どもの自閉症スペクトラム障害が減るかもしれない
■ そのテーマで、JAMA Pediatricsに大規模ランダム化比較試験が報告されていましたのでご紹介いたします。
妊娠中に①葉酸のみ、②葉酸+鉄、③複数の微量栄養素の内服群にランダム化し、出生した児の14歳時の知能指数などを調査・比較した。
重要性
■ 妊娠中の微量栄養素サプリメントと思春期の知的発達との関連は不明である。
目的
■ 思春期の知的発達との出生前の微量栄養サプリメントの長期的な関連を評価する。
試験デザイン、セッティング、参加者
■ この、妊娠中の微量栄養サプリメントのランダム化臨床試験に関する14年間におよぶフォローアップ研究は、2002年8月1日から2006年2月28日まで、中国の農村部の2つの郡において実施された。
■ ①葉酸のみ、②葉酸+鉄、③複数の微量栄養素が含まれているいずれかのカプセルを毎日摂取するようにランダム化された母親の児の思春期2118人(10歳から14歳) で行われた。
※この報告は、すでに先行して報告(Li C, et al. Prenatal Micronutrient Supplementation Is Not Associated with Intellectual Development of Young School-Aged Children–3. The Journal of nutrition 2015; 145:1844-9.)がされていましたので、「微量栄養素」の詳細を記載します。
鉄 30mg/日、葉酸 400μg/日、亜鉛 15.0mg/日の、銅 2.0mg/日、セレン 65.0μg/日、ヨウ素 150.0μg/日、ビタミンA 800.0μg/日、チアミン 1.4mg/日、リボフラビン1.4mg/日、ビタミンB-6 1.9mg/日、ビタミンB-12 2.6μg/日、ビタミンD 5.0μg/日、ビタミンC 70.0mg/日、ビタミンE 10.0mg/日、ナイアシン 18.0mg/日。 |
■ フォローアップは2016年6月1日から2016年12月31日まで行われ、データ解析は2017年4月1日から2017年6月20日まで実施された。
主な結果と測定
■ 思春期のフルスケールの知能指数と、言語理解・作業記憶・知覚的推論・処理速度指標を、Wechsler Intelligence Scale for Childrenによって評価した。
結果
■ 思春期の児 2118人は、男児 1252人(59.1%)、女児 866人(40.9%)、平均年齢11.7歳(SD 0.87)であり、参加する資格のあった生存している児4488人のうち47.2%に相当した。
■ 葉酸サプリメントのみと比較して、複数の微量栄養サプリメントは、フルスケールの知能指数が1.13ポイント(95%CI 0.15~2.10)および言葉理解指数が2.03ポイント(95%CI、0.61-3.45)高値と関連していた。
■ 葉酸+鉄と比較しても、同様の結果が得られた。
■ 母親が、妊娠早期(妊娠12週未満)に開始し、十分な内服量(≧180カプセル)であった場合、複数の微量栄養素サプリメントカプセルは葉酸カプセルと比較して、フルスケール知能指数が2.16ポイント(95%CI、0.41-3.90)高値および言語理解指数が4.29(95%CI、1.33-7.24)高値を示した。
■ 試験の平均スコアは、後期(妊娠12週以上)開始および不適切な用量(<180カプセル)で開始された群の下層において低かった。
■ 複数の微量栄養素サプリメント群は他の2種類の治療群よりも高いスコアを有し、葉酸+鉄群と比較してフルスケール知能指数が有意に異なった(調整平均差 2.46; 95%CI、0.98-3.94)
結論と妥当性
■ 葉酸+鉄群または葉酸群と比較して、出生前に複数の微量栄養サプリメント内服は、思春期の知的発達の増加と関連しているようだった。
■ 第1トリメスターでサプリメント内服を開始し、その後少なくとも180日間継続することは、最大の効果と関連していた。
結局、何がわかった?
妊娠中に ①葉酸のみ、②葉酸+鉄、③複数の微量栄養素内服群にランダム化し、生まれた児の14年後を比較すると、
✅複数の微量栄養サプリメント内服群は、葉酸サプリメントのみ内服群と比較して、知能指数が1.13ポイント(95%CI 0.15~2.10)および言葉理解指数が2.03ポイント(95%CI、0.61-3.45)高くなった。
✅内服の効果は、妊娠早期(妊娠12週未満)に開始し、十分な内服量であった場合の方が、効果が高かった。
葉酸+鉄群または葉酸群と比較して、出生前に複数の微量栄養サプリメント内服は、思春期の知的発達の増加と関連
■ フォローできた人数が全体の半数ほどですので、結論を出すのはまだ早そうです。
■ また、葉酸に関しては多くの研究で明らかになっていてコンセンサスは得られていますが、他の微量栄養素に関してはコンセンサスを得るかどうかはまだわかりません。また、あまりにもたくさん内服した場合、問題が生じる可能性もあるでしょう。
■ ただ、先行したコホート試験と合わせ、葉酸だけでなく微量栄養素を内服するのはいいのかもしれない、程度には認識してもよさそうです。
今日のまとめ!
✅妊娠早期から葉酸や鉄に合わせて微量栄養素サプリメントを内服すると、児の知能発達が良くなるかもしれない。