ステロイド外用薬は、稀ながら副腎抑制を起こし得る。特に、最強ランクのステロイド外用薬の使用には留意が必要です。
■ 私は、アトピー性皮膚炎に対し、ステロイド外用薬を使用する医師のひとりです。
■ ただし、短期的な使用で済むような軽症の方を除き、プロアクティブ療法(炎症が治まるまできっちり抗炎症薬を外用し、ゆっくり漸減していく、安定後も間欠的に継続して抗炎症薬を継続する治療)を行う場合は、「1日複数回のスキンケアができること」を条件にして治療を実施することにしています。
■ ステロイド外用薬は副作用が起こりえます。
■ もっとも多いのは皮膚のひは菲薄化(うすくなること)や多毛です。これらは中止することで戻る、可逆性の副作用です。
■ 一方で、場合によっては外用薬としても副腎抑制は起こりえます。
■ ステロイド外用薬による副腎抑制は基本的には可逆性ですし、最強ランクのステロイド外用薬を長期に使ったりしなければそうそう起こりません。
■ しかし、「起こりえます」。ですので、スキンケアを丁寧に続けながら、減量・中止を目標に治療を行う必要性があると考えています。
■ 特に、最強ランクであるI群ステロイド外用薬(デルモベートなど)が問題を起こしやすく、私は、重症のアトピー性皮膚炎のお子さんを沢山診療していますがI群ステロイド外用薬をほとんど処方しません。
■ ステロイド外用薬は5ランクあります。ステロイドのランクと説明に関して、インスタグラムにまとめましたのでご参照下さい。
■ 最強ランクのステロイド外用薬は、海外では市販薬にも含有されており、不適切に長期使用される場合があり、その場合にサイトメガロウイルス感染症で亡くなった方まで報告されています(Pediatr Dermatol 2008; 25:544-7.)
■ 今回は、特に最強ランクのクロベタゾール(デルモベート)外用で副腎抑制が起こりうるという報告をご紹介します。デルモベートを使ってはいけないという意味ではなく、漫然と使用するような薬剤ではないということです。
Tempark T, et al. Exogenous Cushing’s syndrome due to topical corticosteroid application: case report and review literature. Endocrine 2010; 38(3): 328-34.
ステロイド外用薬(クロベタゾール=デルモベート)でクッシング症候群を来した例をレビューした。
■ ステロイド外用薬の長期間にわたる使用は、経口・非経口投与よりも一般的ではないもののクッシング症候群や視床下部 - 脳下垂体 - 副腎(hypothalamic-pituitary-adrenal;HPA)抑制といった全身的副作用を起こしうる。
■ 小児や成人における非常に強力なステロイド使用(クロベタゾール)による医原性クッシング症候群を発症した少なくとも43症例が、特に開発途上国において過去35年間に報告されている。
■ 小児 22例ではのうち、ほとんどがおむつ皮膚炎のあった乳児であり、2例は非常に低年齢からステロイド外用薬の使用を開始し、重症の播種性サイトメガロウイルス(CMV)感染で死亡した。
■ 成人 21人について、ステロイド外用薬の最も一般的な目的は、乾癬の治療のためだった。
■ 小児および成人におけるHPA抑制の回復期間は、それぞれ3.49±2.92および3.84±2.51ヶ月だった。
■ 我々は、医師の処方箋なしにクロベタゾールの誤用により、おむつ皮膚炎治療後のクッシング症候群と副腎不全を発症した生後8ヶ月の女児を報告する。
論文から引用。クッシング様症状のための肥満をみとめる。
■ 生理的な用量のヒドロコルチゾンが副腎不全を予防するために3ヶ月間使用され、HPAの回復が朝のコルチゾールとACTHの正常化により確認された時点で中止された。
論文から引用。クッシング症状による体重増加。
結局、何がわかった?
✅ クロベタゾール(=デルモベート)をおむつ皮膚炎に連続して塗布することでクッシング症候群を起こした例が報告された。
ステロイド外用薬(特に最強クラスのデルモベート)を、漫然と長期に使用し続けると副作用の懸念が大きくなります。
■ 何度も書きましたが、クロベタゾール(=デルモベート)を使用してはいけないといっている訳ではありません。
■ しかし、特別に強いデルモベート軟膏を漫然と使用するべきではありません。
■ 特にこの報告では、「最強クラス」を「陰部」に「漫然と」使用したことが大きな問題であったろうと思います。
■ ステロイド外用薬は有用な薬剤です。だからこそ、きちんと考えて処方し、減量し、スキンケア中心にしていく努力が必要です。
今日のまとめ!
✅ 特に、I群ステロイド外用薬(=デルモベート軟膏)を長期に漫然と使用すると、大きな副作用が起こりうる。きちんとした指導が必要である。