思いがけない製品に、ステロイド外用薬が混入している場合があり、注意を要するという報告。
■ 漢方薬は、使用方法を間違えなければ一般に安全な薬です(副作用がないわけではありません)。
■ 一方、その「安全」というイメージがある漢方薬において、カリフォルニア州の店舗から集められた260製品の7%に表示されていない医薬品を含んでいたという報告があります (Ko RJ. Adulterants in Asian patent medicines. N Engl J Med 1998; 339: 847847.)。
■ 本邦の保険で使用される処方薬にそのようなことはあり得ないでしょうけれど、以前、エキナセア製品(米国の店舗で購入できる製品の購入金額の10%を占めるそうです)に、エキナセアが含まれない場合もあるという海外の報告に驚いたことがあります。
■ 漢方が危険といっているわけではなく、(特に海外の)ネットや店舗で購入する製品には注意を要するかもしれないという報告。
Ernst E. Adulteration of Chinese herbal medicines with synthetic drugs: a systematic review. Journal of internal medicine 2002; 252(2): 107-13.
漢方薬における薬物の混入に関する報告のシステマティックレビューを実施した。
背景
■ 中国の漢方薬(Chinese herbal medicines; CHM)の人気は、安全性の問題において判的分析を要求している。
目的
■ このシステマティックレビューの目的は、薬物によるCHMへの混入に関するデータを要約することだった。
■ 文献検索は6つのデータベースで行われた。
■ 不純物混入に関するオリジナルのデータを含む報告は、言語の制限をせずに検討された。
結果
■ 症例報告 18件、症例集積研究 2件、解析的な調査4件が確認された。
論文から引用。症例報告18件。
論文から引用。
症例集積研究2件。
解析的な調査4件。
■ 有害物質のリストには、ステロイドのような重篤な副作用に関連する薬物が含まれていた。
■ 患者は重大な被害を受けた例もあった。
■ 台湾からの報告の1件は、全サンプルの24%が少なくとも1種類の薬理学的化合物で汚染されていることを示唆していた。
結論
■ 薬物のCHMへの混入は、潜在的に深刻な問題であり、適切な規制対策によって対処される必要があると結論付けられた。
結局、何がわかった?
✅ 店頭で購入する漢方薬に、ステロイドのような重篤な副作用に関連する成分がふくまれる場合がある。
ネットや、海外の店舗購入した製品に関しては特に、注意を要しそうです。
■ 保険で使用される薬剤においては、まずこういった事例はないと思っています。また、日本におけるOTC(店舗で購入できる製品)の多くは問題はないでしょう。
■ ただ本邦でも、「意図して」ステロイドを含まないと称し、場合によってはI群クラスのステロイド外用薬が含めていたという事件が複数あります(医薬品成分(副腎皮質ステロイド)が検出された外用剤について)。「桃源クリーム」事件というと、私くらいの年代の医師は覚えている方もいらっしゃるでしょう。
■ さらに、ネットで「よく効く」と言われていた保湿薬の中に、意図せずステロイドが混入していたという報告もあります。原料として納入された油脂にステロイドが混入していたためだったようです(Ikarashi Y, et al. [Detection of clobetasol propionate in a cream advertised to be effective against atopic dermatitis]. Kokuritsu Iyakuhin Shokuhin Eisei Kenkyusho Hokoku 2009:54-61.)
■ ネットで薬剤を購入する場合や海外で薬を購入する場合は、注意を要するでしょう。特に、「効き目の強い」化粧品に気をつけましょうと、東京都健康安全研究センターからも呼びかけられています。
■ ご心配な場合は、皮膚科を受診するとともに、最寄りの保健所にご相談ください。
今日のまとめ!
✅ ネットで薬剤を購入する場合や、(特に海外で)薬を購入する場合は特に、予想外の薬効成分が含まれていたという事件もあり、注意を要する。