ステロイド外用薬は、副腎抑制をきたすか?
「ステロイドぎらい」は、もしかすると医療不信の結果かもしれないという報告もあるからね、、
じゃあ、ステロイド外用薬は本当に、「副腎抑制」はおこさないの?
ただ、吸入薬でも量が多くなれば、「可逆性の(元に戻りうる)副腎抑制」のリスクはあがるし、外用薬だって、強力なステロイド薬を毎日塗り続けていれば、全身的な副作用は起こりうる。吸入ステロイド薬は、わずかながら身長抑制の可能性もある。もちろん、だからといって喘息発作が沢山あるお子さんに吸入ステロイド薬を使わないという選択はお子さんの生活を大きく損なうのは明らかだね。
じゃあ、ステロイドを塗っていたら、どれくらい”ふくじん”の機能が下がるかをバシッと教えなよ!!
では、最近発表されたステロイド外用薬と副腎機能をみたメタアナリシスを紹介しよう。
あくまで「可逆的な」副腎抑制の「可能性」のメタアナリシスだから、この確率ですべて重篤な症状がでるとか、すごい心配とか、拡大解釈しないように頼むね。
ステロイド外用薬使用と副腎抑制を検討した報告12本522人に関し、ステロイド外用薬の強さと副腎抑制の頻度を調査した。
背景と目的
■ 小児患者に対するステロイド外用薬(topical corticosteroids;TCS)を用いたアトピー性皮膚炎に対する短期の皮膚治療後の視床下部 - 下垂体 - 副腎(hypothalamic-pituitary-adrenal ;HPA)抑制の可能性を確認するためにメタアナリシスを行った。
方法
■ コシンテトロピン刺激試験による治療前と治療後のHPA評価を用いてTCSの使用を評価した、公表された全て小児に対する臨床試験が含まれた。
結果
■ 適格試験128件のうち12件がメタアナリシスに選択され、計522人がリクルートされた。
■ HPA抑制は、20症例(3.8%; 95%CI 2.4~5.8)で観察された。
■ 低ランク(6〜7ランク)、中ランク(3〜5ランク)、高ランク(1〜2ランク)のTCS使用によるHPA抑制率は、2%(148人中3人、 95%CI 0.7~5.8)、3.1%(223人中7人; 95%CI 1.5~6.3人)、6.6%(151人中10人; 95%CI3.6~11.8)だった。
結論
■ 低~中ランクのステロイド外用薬(TCS)の使用では、より強力な製剤と比較すると可逆的な副腎機能(HPA)抑制率が低い。
■ 小児に対する臨床診療において、低〜中ランクのTCSを限定的に使用した場合は、臨床的に重大な副腎不全や副腎クリーゼと関連することはめったにない。
■ 副腎機能不全の徴候や症状がない場合は、小児患者に対する副腎機能(HPA)を検査する必要はほとんどない。
結局、何がわかった?
✅ 小児アトピー性皮膚炎に関し、ステロイド外用薬の強さが低ランク(6〜7ランク)、中ランク(3〜5ランク)、高ランク(1〜2ランク)である場合に、副腎抑制はそれぞれ、2%(148人中3人; 95%CI 0.7~5.8)、3.1%(223人中7人; 95%CI 1.5~6.3人)、6.6%(151人中10人; 95%CI3.6~11.8)と推定される。
✅低〜中ランクのステロイド外用薬を限定的に使用した場合は、臨床的に重大な副腎不全や副腎クリーゼはめったに起こさない。
ステロイド外用薬のランクが強いほど副腎抑制が起こりうるが、基本的に可逆性であることと、アトピー性皮膚炎が重篤であるほどステロイド外用の有無にかかわらず副腎抑制が起こりうる。
■ この話をすると、「わずかでも副腎抑制が来る可能性があるならステロイドは使いたくない」という考えの方もでてくるかもしれません。しかし一方で、アトピー性皮膚炎が重篤であるほど、ステロイド外用薬の使用の有無にかかわらず副腎抑制がおこってくることも報告されています。
■ さらに、アトピー性皮膚炎が悪化するほど、他のアレルギー疾患の発症リスクをあげることも報告されています。
■ ステロイド外用薬を無制限に使用することは厳に慎みながら早期に治療して、スキンケアや環境要因を減らすことと共にステロイド外用薬を減量する方針ですすめていくのが、結局最もリスクが低くメリットが高いように思います。
今日のまとめ!
✅小児アトピー性皮膚炎に対するステロイド外用薬も、「可逆性の」副腎抑制を来しうる。
✅その頻度はステロイド外用薬のランクが高いほど起こしやすい。
✅低〜中ランクのステロイド外用薬を限定的に使用した場合は、臨床的に重大な副腎不全や副腎クリーゼはめったに起こさない。