掻きぐせに対する行動科学的アプローチは、アトピー性皮膚炎の改善を促進する

習慣性掻破行動とは、「くせになった掻き行動」のことです。

■ アトピー性皮膚炎は、定義に「かゆみ」がある疾患です。そして、そのかゆみは本人のみならず家族の生活の質を大きく下げます。

■ そして、そのかゆみは「習慣性掻破行動」いわゆる「掻きぐせ」につながることがあり、その掻きぐせの介入は、決して簡単ではありません。

■ その習慣性掻破行動に対する、心理的なアプローチに関するランダム化比較試験をご紹介いたします。

 

 

Norén P, et al. The positive effects of habit reversal treatment of scratching in children with atopic dermatitis: a randomized controlled study. British Journal of Dermatology 2018; 178:665-73.

アトピー性皮膚炎患児39人に対し、心理的アプローチを用いた群、用いない群で改善に差があるかを検討した。

背景

■ 掻破行動やかゆみは、アトピー性皮膚炎 (atopic dermatitis ; AD)の一般的な臨床症状である。

■ 成人患者の研究は、掻破行動の減少が炎症の改善および皮膚の回復された治癒をもたらすことを示している。

 

目標

■ 修正された習慣逆転(habit reversal; HR)治療プロトコルが、小児の皮膚の状態を改善するための掻痒治療に使用できるかどうかを調査した。

 

方法

■ この研究は、1週間前に2群のうちの1つ(介入またはコントロール)にランダム化され登録された患者39人のランダム化対照比較試験である。

■ 介入群は、強いステロイド(モメタゾンフロエート)に加え、掻痒行動の習慣を抑える治療(すなわちHR)を受けたが、対照群の患者はステロイド外用薬のみを処方された。

 

介入方法の翻訳(原文はフリーで読めないので翻訳して一部ご紹介にとどめます)。

掻破の代わりに、特定の反応が使用された。すなわち、30秒間拳を握り続け、その後痒みが止まるまで、爪でかゆみをつねったり爪で押さえたりした。

第1の介入は、皮膚に手を動かして掻破するという望ましくない習慣を置き換える役割を果たす。第2の介入は皮膚のひっかき傷を引き起こすことなく傷を減らす。 これらの指示の目的は、子どもを治療プロセスに関与させることだった。 新しい行動は毎日数回実施された。

 子どもが掻破するのではなくつねるもしくは爪を使うたびに、両親は一般的かつ行動への賞賛を行って新しい行動を強化するよう指示された。

■ 患者は、登録の1週後(試験開始時評価)、治療3週後、8週後に独立した皮膚科医によって評価された。

■ 主な有効性変数は、objective- Scoring Atopic Dermatitis(SCORAD)の変化だった。

 

結果

3週間の治療期間の後、objective SCORADの変化の平均は、介入群(-31.9±9.5)であり、対照群(-23.8±10.1)より有意に高かった(p = 0.027)

8週間の追跡調査後、objective-SCORADの変化の平均は、介入群(-31.7±10.4)であり対照群(-19.7±9.4)より有意に高かった(p = 0.0038)

 

結論

■ 強いステロイド外用薬と組み合わせたHR法による掻爬行動治療は、3週間後、11週間後に皮膚状態を有意に改善することが判明した。

 

結局、何がわかった?

 ✅ 一般的なステロイド外用薬や保湿剤の使用に行動科学的なアプローチを追加すると、アトピー性皮膚炎がより改善する。

 

 

湿疹をしっかり改善させて、スキンケアをして安定した皮膚でも「掻き癖」がある場合の介入方法として有効かもしれない。

■ この習慣性掻破行動は、「本当にかゆい」場合には有効とは言えないでしょう。この研究では、習慣性掻破行動への介入は、3週間ステロイド外用薬や保湿剤を毎日使用してから介入しています。

■ 湿疹があきらかで、もしくは治療開始した直後には痒みは残っていることが多いので、「掻いてはだめ」では難しいでしょう。

■ しかし、いわゆる「掻き癖」に対し、行動科学的なアプローチが有効であることを示しています。

 

今日のまとめ!

 ✅ 習慣性掻破を改善するために、行動科学的アプローチは有効かもしれない。

 

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