以下、論文紹介と解説です。
Riphagen S, et al. Hyperinflammatory shock in children during COVID-19 pandemic. Lancet. 2020
英国ロンドンのSouth Thames Retrieval Serviceで、2020年4月中旬の10日間に、非定型川崎病、川崎病ショック症候群、中毒性ショック症候群に類似した特徴を示す小児8人を経験した。

■ 英国ロンドンのSouth Thames Retrieval Serviceは、英国南東部の200万人の小児に小児集中治療のサポートと回復を提供している。
■ 2020年4月中旬の10日間に、非定型川崎病、川崎病ショック症候群、中毒性ショック症候群(週に1~2人)に類似した特徴を示す、炎症の強いショックを呈する小児8人の前例のないクラスターに注目した。
■ この症例は、全国的な注意喚起の基礎となった。
■ すべての小児は、それまで健康で調子は良かった。
■ このうち6人はアフリカ系・カリブ系で、5人は男児だった。
■ 1人を除くすべての小児は、体重が75パーセンタイル以上だった。
■ そのうち4人は新型コロナウイルス(COVID-19)への家族内曝露があった。
■ この8 人の人口統計学、臨床所見、画像所見、治療、転帰を表に示す。
論文より引用。8人の特徴。
■ 臨床症状は類似しており、持続した発熱(38~40℃)、多様な発疹、結膜炎、末梢性浮腫、四肢の疼痛を呈し、消化器症状も著明だった。
■ すべての小児はwarm/血管拡張性ショックに進行し、ボリュームの回復に難渋し、最終的にはノルアドレナリンとミルリノンによる血行動態のサポートを必要とした。
■ ほとんどの症例では呼吸器への影響は認められなかったが、7人は心血管の安定化のために人工呼吸器が必要だった。
■ その他の注目すべき特徴は(持続する発熱と発疹のほかに)、広範な炎症の進行を示唆する小さな胸水、心膜液、腹水の発症だった。
■ 気管支肺胞洗浄液や鼻咽頭吸引液の検査で、 severe acute respiratory syndrome coronavirus 2(SARS-CoV-2)はすべての小児で陰性だった。
■ C反応性蛋白、プロカルシトニン、フェリチン、トリグリセリド、D-ダイマーの濃度上昇を含む、感染または炎症 の臨床的証拠があり、重症であるにもかかわらず、7 人では病原体は確認されなかった。
■ 1人から、アデノウイルスとエンテロウイルスが分離された。
■ 最初の心電図は非特異的だったが、一般的な心エコー所見は超音波検査で高輝度の冠動脈(付表)であり、小児集中治療から退院後1週間以内に1人において巨大冠動脈瘤に進行した(付表)。
■ 1例は難治性ショックを伴う不整脈を発症し、体外生命維持装置を必要とし、脳血管梗塞で亡くなった。
■ この症候群における心筋病変は、発病中の心臓酵素の非常に高い上昇によって証明されている。
■ すべての小児に対し、最初の24時間に免疫グロブリン(2g/kg)を静脈内投与し、セフトリアキソンとクリンダマイシンを含む抗生物質の投与を行った。
■ その後、6人には50mg/kgのアスピリンが投与され、4~6日後に全員がPICUから退院した。
■ 退院後、2人がSARS-CoV-2の陽性反応を示した(死亡した小児を含める。死後にSARS-CoV-2が検出された)。
■ すべての小児は冠動脈異常のサーベイランスを継続的に受けている。
■ この臨床像は,これまで無症状であったSARS-CoV-2感染児が川崎病ショック症候群に類似した多臓器侵襲を伴う炎症性亢進症候群を呈する新たな現象であることを示唆している。
■ 疾患経過が多面的であることから、多職種(集中治療科、循環器科、感染症科、免疫科、リウマチ科)の協力が必要であることが明らかである。
■ このコレスポンディングの意図は、このサブセットの小児たちに、より広く小児科コミュニティの注目を集め、早期の認識と管理を最適化することである。
■ 本コレスポンデンスが発行されてから1週間後、エヴェリナ・ロンドン小児病院の小児集中治療室では、同様の臨床症状を呈する20人以上の小児を管理しており、そのうち最初の10人が抗体陽性となった(上記のコホートに含まれていた8人を含む)。
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新型コロナウイルス(SARS-Cov2)が、従来のコロナウイルスより川崎病を起こしやすいのか、もしくは川崎病ショック症候群に移行しやすいのかは、これからの検討が必要でしょう。

■ 新型コロナウイルス(SARS-Cov2)感染のあるなしに限らず、もともと川崎病の一部には、『川崎病ショック症候群』が起こりうる(ただし、毒素性ショック症候群と臨床症状が類似する=区別が難しいケースがありうる)ことが報告されています(Gámez-González LB, et al. Clinical manifestations associated with Kawasaki disease shock syndrome in Mexican children. European journal of pediatrics 2013; 172:337-42.)。
。
■ さらに、新型コロナ関係なく、『川崎病ショック症候群』は、より冠動脈瘤を起こしやすいとされている、『川崎病の中でも重症のタイプ』です(Chen P-S, et al. Clinical manifestations of Kawasaki disease shock syndrome: a case–control study. Journal of Microbiology, Immunology and Infection 2015; 48:43-50.)。
■ このLancetの報告は英国からのものですが、米国からの報道でいわれている『川崎病ショック症候群』もおなじものかもしれません。
■ ただ、COVID-19が川崎病を起こしやすいのか、もしくは川崎病ショック症候群をより起こしやすいかは、まだこれからの検討が必要と思います。
■ さらにいえば、『このLancet報告の川崎病ショック症候群』と、『これまでの川崎病のいち病型である川崎病ショック症候群』が(少なくとも私には)同じ病態かもまだよくわかりません。
■ というのも、最初に挙げた川崎病の好発年齢が1歳をピークになだらかに下がっていくのに、この報告では6歳から14歳とあきらかに年齢が高く、あと、たまたまかもしれませんが、体重がかなり多いひとが多いのです(従来の川崎病ショック症候群が、やや一般的な川崎病よりも、やや年齢が高い傾向があることは報告されています)。
■ 2020/5/7に、日本川崎病学会からは、下記のように声明がでています。
『川崎病患者数、重症患者数共に平年並みか減少したと回答する委員が多く、増加しているとの回答はありませんでした。一方、報告された小児の COVID-19 患者はいずれも軽症
で、欧米で報告されているような川崎病類似の重症例、川崎病と COVID-19 との合併例共に確認されませんでした。』
■ このLancetの報告では、全体にBMIが高い(肥満度が高い)ことが指摘されています。
■ COVID-19で重症化する因子として、肥満がひとつの因子であることはすでにしられており(Lighter J, et al. Obesity in patients younger than 60 years is a risk factor for Covid-19 hospital admission. Clin Infect Dis 2020.)、影響している可能性はあります。
■ また、川崎病が(原因不明とされながらも)、感染が誘引となるケースがあり、そして全身の血管炎を起こす疾患です。
■ そして、COVID-19の重症者では、微小血管の炎症が起こるのではないかという報告もあります(Magro C, et al. Complement associated microvascular injury and thrombosis in the pathogenesis of severe COVID-19 infection: A report of five cases. Translational Research 2020.)
■ 微小血管の炎症が原因(かもしれない)皮膚症状が、COVID-19の若い患者で出現するかもしれないという報告を、大塚先生が解説されていましたね。
■ この川崎病(川崎病ショック症候群類似の?)と関連する『可能性』はあります。
■ トロポニン値が高いこととCOVID-19による死亡率の増加と関連している可能性は示唆されており、COVID-19のほうが、川崎病ショック症候群をおこしやすい『可能性』はあります(Tersalvi G, et al. Elevated Troponin in Patients With Coronavirus Disease 2019: Possible Mechanisms. J Card Fail 2020.)。
■ しかし、まだまだ状況証拠のみともいえます。
■ 現状では『新型コロナウイルス感染症でも川崎病は起こりうる(従来のコロナウイルスより起こしやすいかどうかわからない)』、『川崎病は、一部が川崎病ショック症候群になりうる(従来のコロナウイルスより新型コロナが川崎病ショック症候群を起こしやすいかはまだわからない)』ということではないかと、私は理解しています。
■ そして、川崎病だから新型コロナウイルス感染だと短絡的に考えるべきではないでしょう。
■ ただし、川崎病の症状を確認し、SARS-Cov2陰性であっても(特に家族内にCOVID-19の方がいらっしゃれば)、SARS-Cov2の可能性を疑うことと、急速な悪化がありうると思いながら診療しなければならないといえると思われます。
※管理人は、川崎病の専門家というわけではありません。前線の一小児科医レベルです。
今日のまとめ!
✅ COVID-19の関連が疑われる、川崎病ショック症候群の8例が報告された。













