出生後5日間に母親が卵を摂取すると、子どもの卵アレルギーの発症リスクは変化するのか?

出産後の母親の卵摂取は、乳児の卵アレルギー予防に影響するか?

 卵アレルギーは、日本で最も一般的な食物アレルギーです。
■ 生後3ヶ月あるいは6ヶ月からの卵の早期摂取が、卵アレルギーの予防に効果的であるとの報告があります。

■ 母乳には、母親が摂取した食物の一部が分泌されることが知られています。

■ では、出産後5日間に母親が卵を摂取すると、乳児の卵アレルギーを予防することができるでしょうか?

 

Nagakura K-i, Sato S, Shinahara W, Kido H, Fujita H, Yanai T, et al. Effect of Maternal Egg Intake During the Early Neonatal Period and Risk of Infant Egg Allergy at 12 Months Among Breastfeeding Mothers: A Randomized Clinical Trial. JAMA Network Open 2023; 6:e2322318-e.

日本の10施設において、両親のうち少なくとも1人がアレルギー疾患のある新生児380例(女性198例[52.1%])に対し、児の出生後の0日目から5日目まで母親が1日1個の卵を摂取する群、除去する群にランダム化した。

重要性

■ 生後4~6ヵ月の乳児に卵を摂取させることで、IgE依存性卵アレルギー(EA)のリスクが低下するとされている。
■ しかし、生後12ヵ月時のEAリスクが出生時の母親の卵摂取量に影響されるかどうかは明らかでない。

目的

■ 新生児期早期(0~5日)の母親の卵摂取が、母乳栄養児の12ヵ月齢時のEA発症に与える影響を調査する。

研究デザイン、セッティング、参加者

■ 2017年12月18日から2021年5月31日まで、日本の10の医療施設で行われた多施設共同、単盲検(データ評価者盲検)、ランダム化試験である。
■ 両親のうち少なくとも1人がアレルギー疾患のある新生児を対象とし、母親がEAであるか、生後2日以降母乳を摂取できない新生児は除外された。
■ データはintention-to-treatベースで解析された。

介入

■ 新生児を、母親が新生児の出生後5日間に1日1個の全卵を摂取する母親卵摂取(MEC)群と、母親が同期間に食事から卵を除去する母親卵除去(MEE)群に1対1でランダム化した。

プライマリアウトカムと測定

■ プライマリアウトカムは、12ヵ月齢時のEAだった。
■ 卵アレルギーは、卵白またはオボムコイドに対する感作と、経口食物負荷試験での陽性反応、もしくは卵摂取後の即時型症状の発現として定義した。

結果

■ 対象となった新生児380例(女性198例[52.1%])のうち、367例(MEC:n=183;MEE:n=184)が12ヵ月間追跡された。

■ 分娩後3日目と4日目に、母乳からオボアルブミンとオボムコイドが検出された新生児の割合は、MEC群がMEE群よりも高かった。

■ 12ヵ月齢時のEAおよび卵白に対する感作について、MEC群とMEE群の間に有意な差は認められなかった。

■ 副作用の報告はなかった。

結論と関連性

■ このランダム化臨床試験の結果、新生児早期のEAの発症および卵に対する感作性には、MECの影響は認められなかった。

試験登録

■ UMIN臨床試験レジストリ:UMIN000027593。

 

 

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