経皮水分蒸散量(TEWL)が食物負荷試験時の予測因子になる?
■ 食物アレルギーの診断には、実際に食べてみる経口食物負荷試験がゴールドスタンダードです。しかし、この方法にはリスクと労力が伴います。
■ 一方で、皮膚からの水分蒸発量を示す「経皮水分蒸散量(TEWL)」という指標があり、これを用いて皮膚のバリア機能を測定する方法がアトピー性皮膚炎の検査として存在します。
■ そして、TEWLが食物負荷試験時のアナフィラキシーの予測因子として機能する可能性があるとの興味深い視点の研究結果がありましたので、共有いたします。
Schuler CFt, O'Shea KM, Troost JP, Kaul B, Launius CM, Cannon J, et al. Transepidermal water loss rises before food anaphylaxis and predicts food challenge outcomes. J Clin Invest 2023; 133.
小児の食物負荷試験(OFC)209件においてTEWLを測定し、OFCの結果とTEWLを比較した。
背景
■ 食物アレルギー(FA)は、健康問題として増加の一途をたどっており、その確認には経口食物チャレンジ(OFC)という生理学的手法が必要である。
■ OFCはアナフィラキシーを引き起こすことがあり、これがOFCの有用性に制限をあたえている。
■ 経表水分蒸散量(TEWL)の測定は、臨床症状が現れる前に食物アナフィラキシーをリアルタイムで検出する新たな手法として注目されている。
■ そこで、OFC中のTEWLの変動がアナフィラキシーの発症を予測するかどうかを検討した。
方法
■ 本研究では、全209件のOFCの結果について、TEWLのデータを盲検化して医師や看護師が判定を行った。
■ 研究コーディネーターはOFC全体を通じてTEWLを測定し、OFCの実施自体には関与しなかった。
■ TEWLの測定は、2つの方法で行われた。
■ 1つ目に、静的かつ個別に測定された。
■ そして2つ目に、連続的にモニタリングされた。
■ 同意を得た参加者からは、OFCの前後で血液サンプルが採取され、バイオマーカーの分析も実施された。
結果
■ TEWLは、反応があった場合には有意に上昇(2.93g/m2/h)したが、反応がないOFCの場合には上昇しなかった(-1.00g/m2/h)。
■ トリプターゼとIL-3の濃度が増加し、これがアナフィラキシーの生化学的証拠として確認された。
■ TEWLの上昇は、臨床的に明確なアナフィラキシーが現れるよりも48分早く検出された。
■ 連続モニタリングによると、OFCが陽性の場合にはTEWLの有意な上昇が確認され、アナフィラキシー発症の38分前から非反応に対する予測特異性が96%と高かった。
結論
■ OFC中のTEWLの上昇は、OFCの結果が陽性であることを予測する指標となると考えられる。
■ TEWLは、食物アナフィラキシーの予測やOFCの安全性、忍容性の向上に寄与するモニタリング方法としての可能性を持っている。
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