生後6ヶ月から5歳の重症アトピー性皮膚炎に対する、デュピルマブの有効性と安全性は?

デュピルマブを含む新治療法の登場と小児アトピー性皮膚炎の進展

■ アトピー性皮膚炎は、そもそも小児に発症することが多い病気です。
■ 特に6ヶ月から5歳の子どもの中で、約12%がアトピー性皮膚炎であったという報告もあります。

Silverberg JI, Barbarot S, Gadkari A, et al. Atopic dermatitis in the pediatric population: a cross-sectional, international epidemiologic study. Ann Allergy Asthma Immunol. 2021;126:417-28.e2

■ つい最近まで、小児に対する治療は限られていたのですが、ここ数年で大きく状況が変わりつつあります。

■ それでも『全身治療薬』はほぼない状況がつづいていました。

■ たしかに最近、内服JAK阻害薬(ウパダシチニブ・アブロシチニブなど)は、12歳から使用でき、従来の治療で十分な効果が達成できなかった方にも大きな力になっています。

■ 重要な立ち位置の薬剤ですが、12歳以上と小児としては年齢が高い時期からの保険適用であること、感染症のリスクや血液データなどの長期的な検査も考慮する必要性のある、やや玄人向けの薬ともいえます。

■ そのようななか、2023年12月より、生後6ヶ月からデュピルマブ(商品名デュピクセント)が使用できるようになりました。

■ すでに米国と欧州では承認されていましたが、これは特に重いアトピー性皮膚炎の子どもに使われ、症状や生活の質を改善する効果があることが分かっています。

■ その先行研究からのサブグループ解析の結果が、報告されていました。

 

 

Paller AS, Pinter A, Wine Lee L, et al. Efficacy and Safety of Dupilumab Treatment with Concomitant Topical Corticosteroids in Children Aged 6 Months to 5 Years with Severe Atopic Dermatitis. Advances in Therapy. 2024.

デュピルマブの皮下投与(体重に応じて200mgまたは300mg)を4週間ごとに受け、併せて低用量のステロイド外用薬を16週間投与された重症アトピー性皮膚炎の生後6ヶ月から5歳までの小児125例の解析を行った。

はじめに

■ 重症アトピー性皮膚炎(AD)のある6歳未満の小児に対する治療選択肢は限られている。
■ この低年齢層では全身性免疫抑制剤の安全性に懸念がある。
■ デュピルマブは、EUで重症ADの乳幼児に対して承認された初の全身治療薬である。
■ 本研究では、重症ADの6ヶ月から5歳の小児を対象に、デュピルマブと低力価のステロイド外用薬併用による有効性と安全性を検証した。

方法

■ 本試験は、デュピルマブの無作為化二重盲検プラセボ対照第III相試験から抽出された、ベースライン時に重症AD(Investigator's Global Assessment [IGA] = 4)を有する生後6ヶ月から5歳の患者のサブグループ解析を行った。
■ 患者はデュピルマブ皮下投与(200/300mg)またはプラセボを4週間ごとに受け、併せて低用量のステロイド外用薬を16週間投与された。

■ 主要評価項目は、16週目におけるIGA≦1(軽快またはほぼ軽快)の患者割合と、EASI-75(Eczema Area and Severity Index)におけるベースラインからの75%以上の改善を示した患者割合だった。
■ 副次的評価項目には、EASI、掻痒感、皮膚痛、睡眠損失、QOLの平均変化が含まれた。

結果

■ 解析対象は125例(デュピルマブ投与群63例、プラセボ投与群62例)だった。
■ 16週目において、IGA≦1(14.3%対1.6%;P = 0.0085)およびEASI-75(46.0%対6.6%;P < 0.0001)を達成した患者はデュピルマブ投与群で有意に高かった。
■ デュピルマブ投与により、すべての副次評価項目で有意な改善が認められ、掻痒の最小二乗平均48.9%の減少が含まれた。
■ 有害事象(AE)の全発生率はデュピルマブ群とプラセボ群でほぼ同等であった(66.7%対73.8%)。
■ デュピルマブに関連する重篤な有害事象や治療中断を要する有害事象は報告されなかった。

結論

■ デュピルマブは、6ヶ月から5歳までの重症ADを有する小児において、ADの徴候、症状、QOLを許容可能な安全性のもとで有意に改善した。

臨床試験登録

■ 本試験はClinicalTrials.govにID番号NCT03346434、パートBとして登録された。

 

 

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