アトピー性皮膚炎に対し、さまざまな新規外用薬が登場しているが、その比較はできる?
■ 先日X(旧Twitter)をみていると、なんだか?なポストがありました。
■ ある薬剤師さん(?)のポストであり、免疫抑制薬タクロリムス(商品名プロトピック)軟膏がストロングクラスの効果で顔と頸部にしか使えない、PDE4阻害薬ジファミラスト(商品名モイゼルト)軟膏がそれに次ぐ、外用JAK阻害薬デルゴシチニブ(コレクチム軟膏)軟膏は弱い…といった内容でした。
■ そもそも、これらはすべてメカニズムが異なり、効果を横並びで比較するというのが無理な気がします。例えるならば、『野球とサッカーとバレーはどれが一番強いんですか?』と聞くようなものでしょう。そして、このポストに関する根拠は不十分と考えます。
■ とはいえ、これらの効果に差があるのかを知りたいというのはありますよね。
■ さて、クリサボロールは、米国でEUCRISAという商品名で使用されているPDE4阻害薬の外用薬です。
■ 生後3ヶ月から使用できるのが非常におおきな利点といえる外用薬ですが、効果はかなりマイルドと考えられています。
■ そして、小児に対しクリサボロール軟膏とタクロリムス軟膏(小児用の0.03%)を、実臨床で比較した研究がありましたので共有します。
Ryan Wolf J, Chen A, Wieser J, Johnson B, Baughman L, Lee G, et al. Improved patient- and caregiver-reported outcomes distinguish tacrolimus 0.03% from crisaborole in children with atopic dermatitis. Journal of the European Academy of Dermatology and Venereology; n/a.
小児-保護者47組に対し、クリサボロール(CRIS)もしくはタクロリムス0.03%(TAC)を12週間ランダムに投与した。
背景
■ アトピー性皮膚炎(AD)は、世界中の小児の20%が罹患している慢性皮膚疾患であり、患者が報告する生活の質(QOL)の低さと関連している。
■ クリサボロール(CRIS)とタクロリムス0.03%(TAC)は、米国食品医薬品局(FDA)が承認した軽症から中等症のアトピー性皮膚炎に対する外用治療薬であり、同じような臨床効果がある。
■ 患者報告アウトカム(PRO)を活用することで、AD治療が患者や介護者に与える影響について有意義なデータが得られる可能性がある。
■ 本研究では、クリサボロール(CRIS)やタクロリムス0.03%(TAC)が軽症/中等症のADのある小児、そして介護者の負担に及ぼす影響をモニターするためにPROを用いた。
方法
■ この非盲検試験は、47人の小児-介護者組をCRISもしくはTACにランダム化し、12週間投与した。
■ 疾患の重症度、子どもの生活の質(QOL)、かゆみ、痛み、不安、抑うつ、睡眠、保護者の負担、保護者のQOLをベースライン時、6週時、12週時に評価した。
結果
■ 計36組の家族が研究を完了した。
■ 小児(平均年齢8.0±3.9歳)のベースラインADは軽症で、人種(白人39%、黒人36%)、性別(男性53%)はさまざまだった。
■ 介護者はほとんどが女性だった(78%、平均年齢37±7.6歳)。
■ 両群ともベースラインから12週までに疾患の重症度(Eczema Area and Severity Index)を改善した(CRIS=-2.4 vs. TAC=-1.9)。
■ ベースラインと12週を比較した群内分析では、CRISよりもTACが睡眠を除くすべての小児と保護者のPROを改善した(すべてp<0.05)。
結論
■ この結果は、6週間よりも12週間の外用療法がより有益であり、TACはCRISよりも、PROをより改善することを示した。
■ 今後の試験では、AD治療の影響を十分に理解するためにPROを実施すべきである。
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