生後5日以内の母親の鶏卵摂取は、子どもの鶏卵アレルギーの発症を予防するか?

生後早期の母親の卵摂取で卵アレルギーを予防できる?できない?

■ 鶏卵アレルギーは、日本人の食物アレルギーのなかでも最も多い原因食物です。

■ 鶏卵アレルギーを予防するために、『早めに離乳食に導入する』という方法は、ひろく普及し始めており、実際に効果を上げ始めているのではないかという報告もあります。

■ しかし、鶏卵に対する『感作(アレルギー体質となること)』は、かなり早くから起こることも示されており、北欧の検討では、生後3ヶ月ですでに7%程度の子どもが感作されているという報告もあります。

■ では、生後3ヶ月よりも前から、鶏卵アレルギーを予防するためにはどのようにすればいいのでしょうか?

■ 日本からの検討で、生後早期に母親が鶏卵を食べることによって予防できないかを考えてランダム化比較試験が実施されました。
■ 結果はどうだったのでしょうか。

Nagakura K-i, Sato S, Shinahara W, Kido H, Fujita H, Yanai T, et al. Effect of Maternal Egg Intake During the Early Neonatal Period and Risk of Infant Egg Allergy at 12 Months Among Breastfeeding Mothers: A Randomized Clinical Trial. JAMA Network Open 2023; 6:e2322318-e.

アレルギー疾患を持つ親を持つ380人の新生児の母親を、卵摂取(MEC)群と卵除去(MEE)群に1:1の比率でランダムに割り当てた。

背景

■ 生後4〜6ヶ月の乳児に卵を導入することは、免疫グロブリンE(IgE)を介する卵アレルギー(EA)のリスクを低減させると関連している。
■ しかし、生後12ヶ月時点でのEAのリスクが出生時の母親の卵摂取により影響を受けるかどうかは不明である。

目的

■ 初期新生児期(0〜5日)における母親の卵摂取が、母乳育児を行う乳児の12ヶ月時点でのEA発症に及ぼす影響を明らかにすること。

設計、セッティング、参加者

■ この多施設共同、シングルブラインド(評価者盲検)ランダム化臨床試験は、2017年12月18日から2021年5月31日まで、日本の10医療施設で実施された。
■ アレルギー疾患を持つ親のうち少なくとも1人を持つ新生児が対象となった。
■ 母親がEAを持つ、または生後2日以降に母乳を摂取できない新生児は除外された。
■ データは意図した治療の基づいて分析された。

介入

■ 新生児は1:1の比率でランダムに母親卵摂取(MEC)群と母親卵除去(MEE)群に割り当てられた。
■ MEC群では母親が新生児の生後最初の5日間に1日1個の卵を摂取し、MEE群では同期間に母親が卵を食事から除去した。

主要な結果と測定

■ 主要な結果は生後12ヶ月時点でのEAだった。
■ 卵アレルギーは、卵白またはオボムコイドに対する感作と経口食物負荷試験での陽性結果、または卵摂取後の明らかな即時症状のエピソードによって定義された。

結果

■ 380人の新生児(198人[52.1%]が女性)のうち367人(MEC: 183人; MEE: 184人)が12ヶ月間追跡された。

■ 生後12ヶ月時点で、MEC群とMEE群の間でEA(9.3% vs 7.6%; RR 1.22; 95% CI 0.62-2.40)や卵白に対する感作(62.8% vs 58.7%; RR 1.07; 95% CI 0.91-1.26)に有意な差は認められなかった。

■ 副作用は報告されなかった。

結論と意義

■ このランダム化臨床試験において、初期新生児期のMECはEAの発症や卵への感作に影響を及ぼさなかった。

試験登録

■ UMIN臨床試験登録:UMIN000027593

 

 

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