『新生児からの保湿剤定期塗布によるアトピー性皮膚炎発症予防』には条件がある?

アトピー性皮膚炎の発症予防としての『新生児期からの保湿剤の予防的塗布』。

■ アトピー性皮膚炎の発症予防に関し、有力な方法として『新生児期からの保湿剤を塗り続ける』という方法があります。

■ しかし、その方法に関し、否定的な報告も増えてきています。

■ 最近、JEADVにレビューが掲載されていましたのでご紹介します。

 

Proksch E. Enhancing the skin barrier by emollients in neonates to prevent atopic dermatitis. Journal of the European Academy of Dermatology and Venereology. 2023;37(3):463-64.

『新生児期からの保湿剤の定期塗布によるアトピー性皮膚炎の発症予防』というテーマを論じた。

■アトピー性皮膚炎(atopic dermatitis;AD)の発症における皮膚バリアの重要性は、現在ではよく知られている。
■ 皮膚バリアが低下すると、免疫系が環境アレルゲンに不適切にアクセスするようになり、感作が起こり、アトピー性皮膚炎が発症する。

■ そこで、保湿剤によって新生児の皮膚バリアを強化することで、アレルゲン感作を防ぐことができるのではないかという考えが生まれた。

■ 2014年にSimpsonらとHorimukaiらは、新生児における保湿剤の使用がADの発症を予防することを、よく知られた研究で示した。

■ しかし、その後の研究の多くで、これらの結果は確認されなかった。
■ これらの研究と同様に、Kottnerらは、本号のJEADVで、生後1歳までの定期的な保湿剤塗布がADの発症を予防するという結果は得られなかった。

■ しかし、いくつかの研究では、ADを予防する、あるいは症状を改善するためのポジティブな傾向が示されている。
■ また、Kottnerらは、ADを発症した場合、対照群ではより重症であることを発見した。

■ さらに、Chaoimhらが発表したアイルランドにおける最新の研究では、介入群ではADが統計的に有意に33%減少し、2014年に発表された最初の研究での32%および50%の減少を確認した。■ Chaoimhらは、その成功の理由を、出生直後の早期介入にあると説明している。

■ 彼らは、経表皮水分蒸散量(TEWL)が出生から2カ月まで増加するものの、その後は安定することを示し、出生後できるだけ早く介入を開始することと、介入期間を短くする必要性だけを示唆した。

■ 失敗した研究のうち2つでは、介入は中央値で11日または2週間で開始されていた。

■ また、失敗した研究の一部では、ワセリンやパラフィンベースのエモリエント製剤が使用されていたが、ChaoimhとHormukaiでは、それぞれセテアリルアルコール、脂肪酸、グリセリンからなるより洗練された乳液タイプの保湿剤、皮膚バリアの改善を特に目的とすると主張するセラミド3、敏感肌用の低刺激性保湿乳液が使用されていた。

■ アレルゲンの表皮侵入に対して、新生児の皮膚バリアを特異的に改善する保湿剤の創出には、さらなる基礎・応用研究が必要であると考えられる。

■ 近年、保湿剤プラスという言葉が生まれ、基剤に薬用以外の活性物質を加えた外用剤を指すようになっている。
■ これまで、セラミドとフィラグリン関連アミノ酸を含む保湿剤を用いた研究がJEADV誌に掲載され、ADを予防する傾向があることが示された。

■ また、一部の成分、例えば一部の植物油は、逆効果となる可能性があり、皮膚を刺激し、皮膚バリアを悪化させ、アレルゲンの浸透を促進させる可能性がある。
■ また、アレルゲン感作に最も危険なアレルゲンは何か、浸透を防ぐにはどうしたらよいかを知ることは非常に重要である。

■ さらに、介入することが望ましい新生児群をよりよく分類することも重要であろう。
■ ADのリスクのない新生児には、介入は効果がないようである。
■ Chaoimhらは、ADのハイリスク、親のAD歴、喘息もしくはアレルギー性鼻炎のある正期産児で成功を収めたが、さらなるサブグループの可能性もある。

■ まとめると、いくつかの研究では有意な効果を示すことができなかったが、ハイリスクの乳児に超早期介入を行い、皮膚バリアの改善を目的とした特殊な保湿剤を用いたいくつかの研究では、ADの発症低下が有意またはその傾向を示したというものである。

■ 保湿剤のさらなる改良と新生児への超早期介入により、AD発症低下に成功する可能性がある。

 

 

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