新生児期のアトピー性皮膚炎予防における保湿剤の効果。どの保湿剤がより有効か?
■ 2014年に日本からの先行研究において、資生堂の2e(デューエ)という保湿剤を1日1回以上、毎日使用すると、ワセリンと比較してアトピー性皮膚炎の発症率が有意に低下することが報告されました。
■ そして現在、新生児に対し、毎日保湿剤を塗ることが普及しています。
■ これはアトピー性皮膚炎の発症予防に関する背景として重要でしょう。
■ しかし、2020年ごろからの大規模研究を組み込んだコクランシステマティックレビューによると、アトピー性皮膚炎の発症予防において、新生児期からの保湿剤の塗布は有用ではないという結論付けられています。
■ ここには、『なにを』『どれくらい』塗るのか、という問題があります。『条件がある』のではないかということです。
■ そして最近、2014年に使用されたデューエと比較して、新規の市販保湿剤Fam'sbabyのアトピー性皮膚炎発症予防効果を調査されています。
Inuzuka Y, Yamamoto-Hanada K, Kobayashi T, Pak K, Toyokuni K, Ogita H, et al. Prevention of atopic dermatitis in high-risk neonates via different types of moisturizer application: A randomized, blinded, parallel, three-group, phase II trial (PAF study). Journal of the European Academy of Dermatology and Venereology 2023; 37:2526-36.
アトピー性皮膚炎の既往のある親またはきょうだいが少なくとも1人いる新生児60人を、Fam's Baby moisturizerを1日2回塗布する群(A群)、1日1回塗布する群(B群)、2eを1日1回塗布する群(C群)にランダム化し、生後32週までのアトピー性皮膚炎の発症リスクを比較した。
背景
■ 乳幼児のアトピー性皮膚炎(AD)の予防において、保湿剤の効果については不明な点が多い。
■ 先行研究では、市販の2eモイスチャライザー(資生堂株式会社)を1日1回以上使用することが、ワセリンと比較して乳幼児のADを有意に予防できることが示された。
■ この試験では、Fam's Baby モイスチャライザー(株式会社Fam's)を1日2回または1日1回塗布した場合のAD予防効果を、2e モイスチャライザーを1日1回塗布した場合と比較することを目的とした。
方法
■ 本試験は、2020年8月25日から2021年9月28日まで実施された単施設、3並行群、評価者盲検、優越性、個別無作為化、対照第II相試験である。
■ ADを発症している親または兄弟が少なくとも1人いる新生児60人を、Fam's Baby moisturizerを1日2回投与する群(A群)、1日1回投与する群(B群)、2eを1日1回投与する群(C群)に、生後32週まで1:1:1の割合で無作為に割り当てた。
■ 主要なアウトカムはADの発症時期だった。
結果
■ アトピー性皮膚炎(AD)は、A群11/20人(55%)、B群5/20人(25%)、C群10/20人(50%)で発症した。
■ Kaplan-Meier法によるADの累積発症率では、B群の乳児の方がC群よりも皮膚の健康を維持する期間が長かったことが示唆された(中央値、未到達[not reached; NR] vs 212日; log-rank検定; p = 0.064)。
■ Cox回帰分析によれば、B群ではADリスクが低い傾向が示された(C群を対照としたハザード比、0.36; 95%信頼区間; 0.12-1.06)。
■ 登録された乳児の中には重大な有害事象は発生しなかった。
結論
■ Fam's Baby モイスチャライザーは、2eよりもADを予防する可能性があることが示唆された。
■ 乳幼児のAD予防におけるFam's Babyモイスチャライザーの有効性を確認するために、さらなる大規模な試験が必要である。
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