Perkin MR, et al. Association between domestic water hardness, chlorine, and atopic dermatitis risk in early life: A population-based cross-sectional study. J Allergy Clin Immunol 2016.[Epub ahead of print]
水の硬度(軟水&硬水)は、アトピー性皮膚炎の発症に関係するか?
■ 以前、塩素から産生されるトリハロメタンがダニ感作に影響される可能性があるという論文を提示しました。
■ 今回も水道水がらみですが、水の硬度は炭酸カルシウムに規定されていて、塩素ではないことに注意です。
P: 3ヵ月児1303名(EATスタディの参加者)
E: 居住地域の供給元から上水道中の炭酸カルシウム(CaCO3 mg/L)と塩素(Cl2 mg/L)濃度、フィラグリン遺伝子変異、前腕内側経皮的水分蒸散量(TEWL) C:- O: 水硬度と3ヶ月時のアトピー性皮膚炎発症リスクに関連はあるか |
結果
■ 3ヶ月乳児の24.3%(317例/1302例)はアトピー性皮膚炎が認められた。
■ 大部分軽症で、SCORAD(アトピー性皮膚炎の重症度スコア)の中央値7.5(範囲3.5-75.0)だった。
■ 炭酸カルシウムレベルは、中央値257mg/L(3-490mg/L;IQR162-286mg/l)だった。
■ 塩素レベルは中央値0.37mg/L(0.04-1.06mg/L、IQR0.26-0.49mg/L)だった。
■ 炭酸カルシウムと塩素レベルの中央値で、以下の4群に層別化した。
1) 炭酸カルシウム低値/塩素(低値CaL/ClL) 2) 炭酸カルシウム高値/塩素低値(CaH/ClL) 3) 炭酸カルシウム低値/塩素高値(CaL/ClH) 4) 炭酸カルシウム高値/塩素高値(CaH/ClH) |
■ CaL/ClL群に比較して、アトピー性皮膚炎発症リスクは、CaH/ClL群は、調整オッズ比1.87(95%信頼区間[CI] 1.25-2.80、p=0.002)、CaL/ClH群はaOR 1.46(95%CI 0.97-2.21、p=0.07)、CaH/ClH群はaOR 1.61(95%CI 1.09-2.38、p=0.02)だった。
■ フィラグリン突然変異のある児では、水の硬度の影響はより大きかったが、水質とフィラグリン遺伝子変異間の相互作用は統計的には有意でなかった。
参考にはなるが、あわてて軟水器を購入する必要はないでしょう。
■ 炭酸カルシウム高値(=水の硬度が高い)はアトピー性皮膚炎発症リスクの増加と関連があるとしていますが、塩素の影響は、明らかでないと結論されていました。
■ ただし、これは観察研究です。ですので、明らかにするためには、出生時からの軟水器設置による介入試験がアトピー性皮膚炎発症リスクを低下させるかどうかの確認が必要だとも述べられています。
■ 本邦の水硬度はもともと軟水です。ですから、本邦ではこのデータがそのまま使えるかどうかはわかりません。
■ 自分としては、本邦のアトピー性皮膚炎は少なくないにも関わらず、軟水ということはこのデータはそのままは使えないと考えています。少なくとも、あわてて軟水器を購入する必要性はないでしょう。