Umasunthar T, et al. Incidence of fatal food anaphylaxis in people with food allergy: a systematic review and meta-analysis. Clin Exp Allergy 2013; 43:1333-41.
食物アレルギーと即時型反応。
■ 食物による即時型アレルギー反応は、卵・乳・ピーナッツそれぞれにおいて、除去食指導を行っても少なからず発生します。
■ 一方で、食物アレルギーによるアナフィラシーの頻度は少ないが軽視するべきではないという報告がみられます。
卵・乳アレルギー児の偶発的・意図的な摂取によるアレルギー反応: コホート研究
食物アレルギーによるアナフィラキシーの発生頻度: システマティックレビュー&メタアナリシス
■ 現実に、本邦でも食物アナフィラキシーで亡くなられた方がおられ、十分な対策をすすめるべきであることは論を待ちません。
■ 一方、食物によるアナフィラキシー死に対する過大評価もまた、いたずらに不安を煽る可能性があります。その頻度を十分に把握しておく必要性もあるでしょう。
P: 1946年1月から2012年9月において、Medline, Embase, PsychInfo, CINAHL, Web of Science, LILACS、AMEDと会議録からの、約1億6500万人年
E: - C: - O: 致命的な食物アナフィラキシーの発生率 |
結果
■ 致命的な食物アナフィラキシー240例があったが、それぞれの研究における食物アレルギー有症率とデータ収集方法には、高い不均一性があった。
■ 食物アレルギーにおける致命的な食物アナフィラキシーは、100万人・年につき1.81回(95%CI 0.94-3.45; range 0.63-6.68)の出現率と推定され、別の感度分析法では、発生率は100万人・年につき1.35-2.71と見積もられた。
■ 0-19歳では、100万人・年につき発生率が3.25(1.73-6.10; range 0.94-15.75;感度分析1.18-6.13)と見積もられた。
■ 食物アレルギーにおける致命的な食物アナフィラキシーの発生率は、一般的なヨーロッパ人口における偶発死より低いと考えられた。
食物アレルギーによる「致死的な」アナフィラキシーは稀。しかし、食物アレルギー児は多く、総数としては少なくないと予想される。
■ 致命的な食物アナフィラキシーは非常にまれであるといえます(あくまで、”致死的な”ですので、アナフィラキシー自体はもっと多いと考えられます)。
■ しかしながら本論文でも言及されているように、食物アレルギー患者と家族の懸念を過小評価してはならず、適切な教育、食物表示、食物の除去、アナフィラキシーに対する処置は重要であるとされていました。
■ 実際、除去食中の誤食は頻繁に起こっており、重篤な症状であることも稀ではありません。
除去食中の誤食は頻繁に起こっており、不十分な治療を受けている: コホート試験
■ 十分な対策により、恐れず侮らず、というスタンスが必要なのではないでしょうか。
2017/11/15 追記。
■ 2017/11/14に、食物アレルギー経口免疫療法により、国内ではじめての重篤な有害事象が発生しました。心よりお見舞い申し上げます。
■ この報告は、除去食などを行っていらっしゃる患者さんも、一定数の致命的なアナフィラキシーを起こしているといえる報告です。国による医療条件、年代に応じ、このデータをそのまま本邦に適応はできませんが、2015年時点での15歳未満人口が1617万人であることを考えると、年間50人程度の致命的なアナフィラキシーを起こしていることになります。
■ 除去食も大きな選択肢ですが、こういった情報があるということを知ることもまた、重要でしょう。さらに、経口負荷試験でもアラバマ州で不幸な転機をとられたという情報があります。
■ すなわち、除去も、経口負荷試験も、経口免疫療法も、すべてリスクがあり、よく対策をして、リスクを評価していかなければなりません。
■ 私は、その事故がおこった医療機関にいるわけではありませんが、私も自分のこととして受け止めたいと思います。そして、我々医療者も、食物アレルギーの患者さんも、その保護者さまも、学校関係者、保育園、幼稚園の関係者の皆様、皆で考えていくべき時代だと思いました。私も、きちんと勉強を続けて、よりよい医療を提供できるように精進したいと思います。