牛乳は、除去が長期に及んでも問題が起こる可能性が高い一方、治療にリスクが伴います。
■ 牛乳の免疫療法に関しては、治療効果が上がりにくく、特にリスクが高いことも分かってきています。しかし、牛乳除去が骨密度を低下させることなど、永続的な問題を起こす可能性があります。
■ 除去をするとしても、十分にリスクを評価することが重要です。そこで、先日の学会のときに、友人の柳田先生(この論文の著者ですね)に教えていただいた論文をご紹介いたします。
Yanagida N, et al. Does Terminating the Avoidance of Cow's Milk Lead to Growth in Height? International archives of allergy and immunology 2015; 168:56-60.
食物アレルギーを疑われて初診した子ども195人の1年間の身長の伸びを検討し、身長の伸びに関連した要因を調査した。
背景
■ 牛乳アレルギーは身長の低下をもたらすことが知られている。
■ したがって、本研究の目的は、ミルク除去を解除することが、身長の伸びることに貢献するかどうかを調べることであった。
方法
■ 2010年から2011年の間に、外来を2歳以上の食物アレルギー児253人が受診した。
■ そのうち195人に関して、最初の食物アレルギー診断後、約1年後の身長データを入手し、検討した。
■ 身長の標準偏差スコア(HtSD)は、2000年の日本における乳幼児成長調査報告のデータを用いて計算し、身長の変化を臨床記録を用いて後ろ向きにに評価した。
結果
■ 195人の平均年齢は5.8±3.0歳だった。
■ 身長の標準偏差スコア(HtSD)の平均は、診断時の-0.19±0.99から、1年後には-0.12±1.02(p = 0.025)となり、有意に増加した。
■ 食物アレルギーの初回診断から1年後、110人のHtSDは増加し、85例は減少した。
■ HtSDの増加に関連した唯一で有意な要因は、初回診断から1年後の牛乳アレルギー耐性だった(p = 0.004)。
論文から引用。乳の耐性群が身長が有意に伸びた。
結論
■ 牛乳除去を解除すると身長が増加する可能性がある。
■ しかし、この結果を確認するには、より大きなサンプルサイズの前向き研究が必要である。
結局、何がわかった?
✅牛乳アレルギーが疑われて受診した児のうち、1年後の身長の伸びに最も関連したのは1年後までの牛乳解除だった(p = 0.004)。
経口免疫療法や経口負荷試験に関し、考える機会にするために。
■ この論文をご紹介した理由は、牛乳の解除をただ急ぐことを推奨するためではありません。
■ 多くの経口免疫療法は、脱感作(継続的に食べていれば維持できる)である段階であることが多く、中断すると、また摂取できなくなる可能性が高いです。
■ さらに長期に考えていくならば、このような永続的な害もありうるということも知っておく必要があります。
■ しかし、「やはり怖いので中断したい」と思う方もいらっしゃって当然です。その場合は、ぜひ主治医にご相談ください。栄養指導も重要になります。
■ 食物アレルギーはとても幅広い知識と経験が必要な分野だと思っています。しかし、患者さんの数に比較して、その知識と経験を持っている医師は多くはありません。昨今の医療情勢により、患者さんと一緒にリスクをとることができる医師も減っています。
■ 皆さんと考えるきっかけになればと思っています。
今日のまとめ!
✅牛乳が解除(摂取可能)になれば、身長の伸びに影響するかもしれない。