IgE抗体の検査系には色々あり、解釈には注意を要します。そこで、2種類の代表的な検査方法を比較した検討が行われました。
■ 今回は、国立病院機構三重病院を中心としたグループからの報告です。
■ 非加熱卵・加熱卵の負荷試験を前向きに参加者を募り、できるだけ同様の方法を用いて経口負荷試験を行い、プロバビリティカーブ(負荷試験の陽性確率)を求めています。
■ さらに、今までImmunoCAPという検査が一般的に用いられてきましたが、3gAllergyという新しい検査系との比較も行われています。
GroupA 1歳(中央値16ヶ月) 220人
GroupB 2-6歳(中央値48ヵ月) 213人
E: 3gAllergyで測定
C: ImmunoCAPにより測定
O: 非加熱卵・加熱鶏卵による経口負荷試験予測に関し、2つの測定系結果で違いがあるか
Furuya K, et al., Predictive values of egg-specific IgE by two commonly used assay systems for the diagnosis of egg allergy in young children: a prospective multicenter study. Allergy 2016; 71:1435-43.
結果
■ GroupAは,卵白感作している、もしくは軽い症状のために6ヶ月以上鶏卵除去していた1歳児で構成されており、「真の」鶏卵アレルギーの確定のための負荷試験、GroupBはすでに鶏卵アレルギーが診断されており「アウトグローしたか否か」を決定するための負荷試験であり、一重盲検法が用いられた。
■ 鶏卵経口負荷試験は、加熱卵粉末と非加熱卵粉末(それぞれキューピー社)を用い、加熱卵粉末は95℃15分間の加熱後、20分間65°Cで低温殺菌し乾燥粉末化させた。非加熱卵は、75°C4日間低温殺菌して乾燥粉末化された。
■ 加熱卵粉末の負荷総量は、GroupA 6.5g(1/2鶏卵相当)、GroupB 13g(1個鶏卵相当)であり、非加熱卵粉末の負荷総量は、両群ともに4g(1/4鶏卵相当)であった。
■ 負荷試験は、15~30分間隔6段階(2/100、4/100、8/100、16/100、32/100、38/100)で負荷された。
■ 加熱卵負荷試験を受けた433例のうち、243例が陰性であり、190例は陽性だった。最初の負荷試験をクリアした患者のうち130例が非加熱卵負荷試験を辞退したため、113例が非加熱卵負荷試験に進み、55例が陰性で、58が陽性だった。
■ アドレナリン注射は、加熱卵17例(3.9%)、非加熱卵4例(3.5%)で必要とされた。
■ 負荷試験陽性予測に関するROC曲線において、曲面下面積(AUC分析は、3gAllergy、ImmunoCAPそれぞれの検査で類似の結果だった。
■ カットオフ値と加熱卵と非加熱卵との食物経口負荷試験を予測するプロバロビリティカーブが2種類の測定系それぞれで作成された。
■ 3gAllergyによる測定値は、ImmunoCAPによる測定値より高値だったが、特異的IgE抗体価とプロバビリティカーブから予測されたプロバビリティは、2種類の測定系で強く相関した。
論文より引用
加熱卵によるプロバビリティカーブ
左がImmunoCAP、右が3gAllergy
非加熱卵によるプロバビリティカーブ
左がImmunoCAP、右が3gAllergy
検査系により、値がことなることには注意を要すること、加熱卵負荷によるプロバビリティカーブが交差することに注意を要します。
■ この研究は2つの検査系の比較をプライマリアウトカムに設定していますが、むしろ1歳と2-6歳の異なる臨床背景をもつ集団を多施設で前向きで集め、95%信頼区間の情報を含めたプロバビリティカーブを作成したことが最も重要ではないかと思います。
■ つまり、後ろ向きで集めた単施設の研究よりも、リアルワールドに近い負荷試験結果が得られていると考えられ、さらにその確率(プロバビリティ)には「ブレ」があるということです(もちろん、選択バイアスはあります)。
■ 加熱卵に関してのGroupAとGroupBのプロバビリティカーブが「交差する」点にも注意が必要でしょう。
■ この結果は、おそらく10月に改定予定である「食物アレルギー診療ガイドライン」に収録されるのではないかと思います。