小麦と共に卵を加熱すると、卵のアレルゲン性は低下するのか?

2017年6月8日

Miceli Sopo S, et al. Matrix effect on baked egg tolerance in children with IgE-mediated hen’s egg allergy. Pediatr Allergy Immunol 2016; 27:465-70.

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/27019388

 


卵白のアレルゲン性低下手法には、加熱だけでなく、「matrix effect(マトリックス効果)」があるとされ、たとえば小麦とともに加熱された卵白はただ加熱するよりさらに低アレルゲン化する可能性が指摘されています。

実際、日常診療では、卵が混入した小麦を多く含む加熱された食品では、予想外に症状がでないことを経験します。


 

P: 卵白アレルギーの小児 54例(男児65%、平均年齢1.78±3.15歳(6-193ヵ月)

E: 小麦を使用した自家製ケーキ(ciambellone)による負荷

C1: 小麦を使用しないオムレツ( frittata)による負荷

C2: ゆで卵による負荷

O: 負荷試験の結果に違いはあるか

 

 

結果

50例中44例(88%)はciambelloneを、42例中31例(74%)はfrittataを、50例中28例(56%)はゆで卵負荷試験をクリアした。ciambellone負荷試験をクリアできなかった例(12%)とゆで卵負荷試験をクリアできなかった例(44%)は、有意差があった(p < 0.01)。

Ciambelloneは、卵白1個分、小麦粉100g、砂糖50g、スプーン1杯のベーキングパウダーを材料とし、事前に熱されたオーブンで少なくとも30分間180°Cで焼いて作成された。Ciambelloneの最終重量は200gであり、それはほぼ6gの卵白蛋白を含有していた。

frittataは、よく卵白と卵黄を混合し泡立て、3分間オリーブ油で揚げて、30分間180°でオーブンで焼き固めて作成された。

ゆで卵は10分間熱湯で茹でて作成した。

Ciambelloneによる皮膚プリックテスト(prick-by-prick;PbP)は数滴の水をケーキに加えて柔らかくしたもの、frittata、ゆで卵は直接使用され、≧3mmを陽性と判定した。

PbPの径がciambellone >7mm、frittata >7mm、ゆで卵 >12.5mmの場合は全員負荷試験をクリアできなかった

一方、PbPの径がciambellone <3mm、frittata <7mm、ゆで卵 <4mmの場合は全員負荷試験をクリアした

 

コメント

今回の検討結果では、小麦を副材料した加熱料理は、卵のさらなるアレルゲン低減化にあまり効果がないようだと述べられていました。また、加熱された卵白耐性を確認するための厳密に規格化された料理形態は必要ないだろうともされていましたが、より大規模な研究が必要であると述べられています。

ただ、個人的には、小麦と一緒に焼き固める料理は1回1回違う抗原性を持ち、少なくとも負荷試験や経口免疫療法には使えないと考えており、このマトリックス効果の検討は今後さらに必要になってくるのではないかとも考えています(加工品での負荷試験や免疫療法はあくまで”オプション”だと考えています)。

本邦では伊藤節子先生が第一人者であり、もしご興味がございましたら、下記の教科書をご覧ください。

なお、それぞれの負荷試験は2週間のインターバルで同一の児に行われていましたので、ランダム化比較試験ではないことに注意を要します。