生後6ヶ月の経皮的水分蒸散量(TEWL)は、2歳でのアトピー性皮膚炎発症を予測する: 前向きコホート試験

Berents TL, et al. Transepidermal water loss in infancy associated with atopic eczema at 2 years: a population-based cohort study. Br J Dermatol 2016. [Epub ahead of print]

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/27808403

 


 TEWLによるアトピー性皮膚炎発症予測に関しては2015年に発表されたKellherらの報告が有名で、生後2日、2ヶ月の経皮的水分蒸散量(TEWL)は、1歳でのアトピー性皮膚炎発症を予測するとしていました。

邦からも「生後1週間以内のTEWLがアトピー性皮膚炎の発症を予測し他の検査(角質水分量・pH)よりも有効」(https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26666481)という報告があります。

 それらに比較して何か新しい知見があるわけではないのですが、生後6ヶ月時のTEWLが2歳時のアトピー性皮膚炎発症を予測するという結果を見つけたのでご紹介します。これらの研究結果は、今後、アトピー性皮膚炎発症予防群を層別化するために重要になるのではないかと思っています。


 

P: ノルウェーの南東地域の2つの都市(オスロとFredrikstad)でリクルートされた平均6.0ヵ月(1.2-13.4ヶ月) 116人

E: 経皮的水分蒸散量(TEWL)高値群

C: 経皮的水分蒸散量(TEWL)低値群

O: 2歳時点でのアトピー性皮膚炎の発症率

 

 

結果

 

■ 母・父のアトピー素因は、母・父のアトピー性皮膚炎、喘息、アレルギー性鼻炎と定義された。

■ 1回目の訪問でTEWLを測定したうえで2回目の訪問でアトピー性皮膚炎を確認できた児が196人中116人だった。

■ TEWLの中央値は、7.95g/m2/h(SD 4.34)であり、 ROC解析によるAUCで検討した2歳でのアトピー性皮膚炎発症予測における生後6ヶ月のTEWLの低値と高値の分割点は9.33g/m2/hと求められた。

■ 結果として、生後6ヶ月のTEWL高値は、2歳でのアトピー性皮膚炎発症リスクと有意に関連しており(OR 3.32、95%CI 1.15、9.60)、感度 0.63(95%CI 0.44、0.79)、特異度0.70(95%CI 0.62、0.77)、陽性適中率0.29(95%CI 0.19、0.42)と陰性予測値0.91(95%CI 0.84、0.95)だった。

■ 生後3ヵ月未満の乳児32人のみに限定すると、1回目の訪問でのTEWL高値は6人の児がアトピー性皮膚炎を発症しており(OR 7.67; 95%CI 1.04、56.77)、有意に発症していた。しかし、感度、特異度、陽性適中率と陰性予測値は被験者が少なく求められなかった。

 

 

コメント

 

■ TEWL高値群は、アトピー性皮膚炎発症に関連するとまとめられます。

先行研究に比較して、検討した児はやや高年齢で、測定した月齢の範囲も大きいという対象者の選択が異なります。

■ また、先行研究はTEWLが四分位値によって定義されていましたが(上位1/4と下位1/4で比較)、本研究ではROC曲線分析から求められたTEWL高値群と低値群で比較されていました。なお、上に紹介した本邦の検討はc-統計を使用して2群に層別化しています(c-統計は時間的な要素も加味できます)。

■  印象としては、最初のリクルート時の月齢に幅があるすぎるのが問題点ではないかと思います。また、TEWLの測定部位の記載が見当たらないのも引っかかります。

■ TEWLは月齢によって大きく変化することが先行研究で示唆されており、幅が大きすぎると値の閾値を決めるのに問題がでるでしょう。実際、3ヶ月未満に限定すると発症のオッズ比が上がる(TEWL高値の発症への関連がはっきりしやすいといえるでしょう)と本論文にも指摘されています。

■ また、TEWLは季節によって変化する可能性がありますが、本論文の著者は、相対湿度がTEWLと相関しなかったそうです。

■ 今後のこの類の研究は、事前に検査部位を決め、検査する月齢を限定する必要性があるでしょうね。