エスクレの鎮静成功率と鎮静失敗の要因はなにか?

Delgado J, et al. Chloral hydrate in pediatric magnetic resonance imaging: evaluation of a 10-year sedation experience administered by radiologists. Pediatr Radiol 2015; 45:108-14.

外来での鎮静に使用されるエスクレ(抱水クロラール)。

小児科の外来では、MRIを実施する場合に鎮静(眠らせること)が行われます。

しかし、なかなかうまく鎮静出来ない場合もあり、追加投与も行わなければならない場合もあります。

安全性も考えると、その成功率や失敗の要因に関しもっと知っておくべきだろうと思い調べていて見つけた研究結果です。

 

PECO
P: 2000年1月から2010年12月までMRI検査のためにエスクレ(抱水クロラール)を使用して鎮静された0 - 10歳のすべての患者1703人(年齢中央値2.5歳[4日-9.91歳、男児946人、女児757人])
E: -
C: -
O: 統計学的な因子、用量、治療失敗、本剤の有害反応の頻度

 

MRI検査のためにエスクレを使用した中央値2.5歳の児に対し、鎮静成功率と有害事象をしらべた。

睡眠導入のため、前の晩にいつもより2時間遅く就寝し、朝はいつもより1時間早く小児を起こすことが指示された。

中等度から深い鎮静は、1,618/1,703(95%)で達成した。

35/1,703(2.1%)は、中等度から深い鎮静を達成できず、47/1,703(2.8%)は、MRI検査中に覚醒した。

有害反応は、31/1,703例(1.8%)で起こり、重篤な有害反応が3例(0.18%)で起こった。

抱水クロラール 初回 40-60mg/kgの用量で、1,477/1,703患者(86.7%)に投与された。

初回用量15分後に覚醒している、もしくはMRI検査中に覚醒した場合、追加で抱水クロラール 10-20mg/kgを投与が必要だった例は226/1,703患者(13.3%)だった。

抱水クロラールの最大用量は100mg/kgとして定義されたが、総用量2,000mg/回を超えていなかった。

追加の抱水クロラールを、2歳以上の患者は、2歳未満の患者より2.2倍必要とした(OR=2.2[95%CI:1.6-3.0])

低用量(<50mg/kg)、標準用量(50-100mg/kg)、高用量(>100mg/kg)で評価したが、少ない用量(<50mg/kg)は、鎮静失敗率と関係していなかった(OR=1.04[95%CI 0.57-1.89])

 

予想以上にエスクレの鎮静率は良好だった。遅い就寝と早い起床の指示が重要なのかもしれない。

抱水クロラールはMRI検査を行う小児患者に対する適切な鎮静オプションであり、少な目の用量は、鎮静の効果に影響を及ぼさなかったとまとめられます。

医療施設によって異なるかと思いますが、当院では鎮静にトリクロリールシロップで開始し、追加はエスクレ座薬もしくはトロクロリールシロップを追加します。トリクロリールシロップは、体内で抱水クロラールに変化しますので、結局はエスクレもトリクロリールも同じ薬剤を投与していることになるわけですが、私は、初回を0.6ml/回で、追加を0.2ml/回と最大用量で投与してきました。それが、初回用量が多少少なくても鎮静失敗率と関係がなかったのは意外でした。

一過性の低酸素血症に関するデータ不足、鎮静する時間や鎮静の正確な継続時間は、本研究のLimitationとされていましたが、副作用のことを考えると、初回用量を多少控えようかと考えました。

ただ、普段の実地臨床では、この論文の結果ほど成功率が高くないようなんですが、、、おそらく、遅い就寝と早い起床の指示が十分できていない可能性が高そうです。

なお、2歳未満の児は検査の前4時間の絶食、2歳以上の児は6時間の絶食を指示されたそうです。

 

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