経口補水は熱中症予防に有効?無効?

熱中症予防に対する経口補水の効果を疑問視する記事が目立っている。

■ 熱中症予防のために、暑熱環境を避けることは前提条件としてあります。

 

■ 一方で最近、熱中症予防に対する経口補水液(ORS)に関し、やや否定的な報道やweb記事を見かけることが増えています。

■ 経口補水液(ORS)は市販のスポーツドリンクに比べ、ナトリウムが多く、糖分が少なく、浸透圧が血漿より低いという特徴があります。

■ ORSの摂取は、環境省指針や厚生労働省の職場における熱中症予防指針でも推奨されています。

■ そして熱中症予防に経口補水が有効かどうかを確認した研究は少ないなか、クロスオーバー試験が日本から発表されています。

 

※ ORSの『飲み過ぎ』を推奨するものではありません。

Ishikawa T, Tamura H, Ishiguro H, Yamaguchi K, Minami K. Effect of oral rehydration solution on fatigue during outdoor work in a hot environment: a randomized crossover study. J Occup Health 2010; 52:209-15.

東京国際空港で航空機への貨物積み込み作業を行う労働者153人に対し、一方には経口補水液(ORS)を摂取させ、もう一方には好みの飲み物(FAD)を自由に選択させる無作為クロスオーバー試験を行った。

目的

■ 夏季に屋外作業を行う労働者を対象に、疲労に対する経口補水液(ORS)の効果を検討した。

方法

■ 東京国際空港で航空機への貨物積み込み作業を行う労働者の中から、本研究への参加に同意した153名を被験者とした。

■ 調査は、晴天の夏の2日間、日勤時に実施した。
■ 被験者を無作為に2群に分け、一方にはORSを摂取させ、もう一方には好きな飲み物(FAD)を自由に選択させる無作為クロスオーバー試験を行った。

■ 被験者には、調査当日に摂取した飲料の量と選択したFADの種類を尋ねた。
■ ORSとFADの効果を、視覚的アナログスケール(VAS)を用いて比較し、作業終了後の疲労の程度を測定した。

結果

■ 調査日の平均湿球温度(WBGT)は30℃であった。
■ 作業中の飲料摂取量は、多くの参加者で1,000mlであった。

■ FADの中で最も多く選ばれたのは紅茶とコーヒーであった。

■ 疲労度VASは、ORS摂取日の方がFAD摂取日よりも有意に低かった(50.0±18.3 vs. 53.9±16.3)。

結論

■ 本研究の結果、暑熱環境下での屋外作業時にORSを摂取することは、労働災害や熱中症の予防に有効であることが示された。
■ 水分と電解質を十分に摂取するため、適切な飲料の選択が重要である。

 

※ 論文の背景とその解説・管理人の感想は、noteメンバーシップでまとめました。

 

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