冷却ジェルシートは、熱中症予防に有用か?
■ 7月10日ごろ、冷却ジェルシートが熱中症予防として有効な印象をもつポスターが物議をかもしました。
■ 実際の報告は少ないようですので、最近の検討結果を共有します。
Hussain`, Asim M, Atif M, Anjum N. ASSESSMENT OF CLINICAL EFFICACY OF COOLING GEL PATCH. PAFMJ [Internet]. 25Feb.2021 [cited 20Jul.2023];71(1):328-.
20~40歳の発熱、熱疲労、頭痛、筋肉痛、歯痛の訴えのある男性48人を対象に、冷却ジェルパッチの評価を実施した
目的
■ 冷却ゲルパッチの有効性を多様な臨床適応において明確にするため、そして発熱や熱疲労における冷却ゲルパッチと水スプレー、冷たいスポンジの比較を実施する。
研究デザイン
■ 比較横断研究。
研究場所および期間
■ Garrison Medical Centre Okara Canttにおいて、2018年9月から12月まで行った。
方法
■ 20~40歳の男性48人を対象に、異なる臨床的適応における冷却ゲルパッチの評価を実施した。
■ 発熱、熱疲労、頭痛、筋肉痛、歯痛の患者を対象とし、発熱以外の急性疾患の患者は除外した。
■ さらに、発熱と熱疲労に対する水スプレーと冷たいスポンジの使用を検討した20人の対照群も分析に含めた。
■ 各適応症の頻度とパーセンテージを計算し、カイ二乗検定を適用した。
結果
■ 平地に住む48人の男性を対象に、冷却ゲルパッチの様々な臨床的適応を評価した。
■ 冷却ゲルパッチは、熱中症のスポーツマン16人に試用され、その中の2人(12.5%)に対するわずかな効果しか得られなかった。
■ 一方、対照群の10人中8人(80%)は水スプレーと冷たいスポンジにより良好な反応を示し、p値は0.000578だった。
■ 頭痛を訴えた6人と歯痛を訴えた4人の患者は、症状の軽減を体験しなかった。
■ また、筋肉痛を持つ6人の患者中2人は症状の軽減を報告した。
■ 高熱を持つ16人の患者中、12人(75%)は4時間塗布しても症状の軽減を見られなかった。
■ 4人(25%)は2時間後に体温が1°F下がったが、その後4~8時間でさらなる下降は見られなかった。
■ 対照群の10人の患者は水スプレーと冷たいスポンジに非常に良好な反応を示し、p値は<.0001だった。
■ 48人中14人(29%)が冷却効果を30分以内に感じたと報告し、加えて、4人が悪臭/不快臭を報告した。
■ 48人中26人(54%)は冷却ゲルパッチを貼付後、かゆみ/炎症を経験したと報告した。
結論
■ 冷却ゲルパッチは、発熱、頭痛、歯痛、筋肉痛、熱中症に対する予防・治療手段とはならない。
■ 冷却ゲルパッチと比べ、水スプレーや冷たいスポンジが体温の低下や熱疲労に対する効果が高いことが確認された。
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