気管支喘息に対する環境整備は、治療薬を減少させるか?: ランダム化比較試験

DiMango E, et al. Individualized Household Allergen Intervention Lowers Allergen Level But Not Asthma Medication Use: A Randomized Controlled Trial. J Allergy Clin Immunol Pract 2016; 4:671-9.e4.

環境整備は喘息薬の使用を減らすのか?

■ 気管支喘息患者さんは、多くがダニに感作されており、環境整備が勧められています。

■ とはいえ、環境整備の気管支喘息に対する効果を検討したランダム化比較試験は多くはありませんでした。

 

P: 喘息コントローラ治療を受け、少なくとも1つの屋内アレルゲンに感作され曝露されているニューヨーク市に住む成人と小児

E: 家庭のアレルゲンを減少させるプログラムを個別的に介入をうけた125人小児56人と成人69人)

C: 虚偽の介入を受けた122人(小児54人と成人68人)

O: 40週後の薬物治療のステップダウンに差があるか

 

結果

■ 環境の評価は、まず受動喫煙の曝露、ペットのあるなしと数、リビング・台所・寝室・バスルームの状況を視覚的に評価し記録された。

■ 掃除機で吸引したハウスダスト検体をベッドと寝室の床、台所から採取した。

■ 喘息のコントロールは、喘息症状の有症状日数、臨時の薬物使用日数、定期受診前2週間の夜間症状、FEV1にもとづき評価した。

■ 介入群に対し、カウンセラーは、アレルゲンを減少させるために必要とされる道具(例えば、マットレスカバー、清掃製品、掃除機[エレクトロラックス]、モップ[Swiffer WetJet]、HEPAフィルター空気清浄器[Orek])を提供して介入した。さらに18週。32週にも介入した。

■ コントロール群は、アレルゲン回避の説明をせず、喘息と無関係な介入(例えば、ウインドウ・ガード)を行った。

■ 20週と36週に、すべての被験者に対し集塵が行われた。

■ 介入群は、すべてのアレルゲンレベル(寝室のネコ・イヌ・ダニアレルゲン、台所と寝室のゴキブリとネズミアレルゲン)を有意に低下した。

■ 対照群は、寝室のダニとネズミアレルゲンと台所のゴキブリアレルゲンが低下した。

介入群は、National Asthma Education Prevention Programにおける治療ステップ4.4から3.50(範囲0-6)まで低下したが、コントロール群も、ステップ4.4から3.4まで低下し、有意差は認められなかった(P=.76)

 

この検討では、環境整備に喘息薬を減らすという結果にはなりませんでしたが、、

■ 特に先進国において屋内アレルゲンに対する曝露は、喘息症状の主な誘因です。

■ しかし、今回の研究結果は、アレルゲン回避の方法では、すでに最適なコントローラ治療を受けている患者における喘息薬物治療のステップを低下させなかったとまとめられます。

■ ただ、この結果を本邦でも適応できるかどうかはわかりません。

この研究では環境中のダニの量が、明らかに本邦より少ないことがあげられます。 例えばベースラインでのダニアレルゲン量(Der  f1)がコントロール群0.06μg/g (0.05-0.08) 、介入群0.07 μg/g(0.06-0.09) です。

■ また、”有意に減少した”とは言え、最も多いアレルゲンである台所のゴキブリアレルゲンBla g 2 ですら介入群で0.73μg/g (0.48-1.11) から 0.30μg/g (0.21-0.44)に減少に過ぎません。

■ 現実的には環境整備により薬物の減量が出来ている場合も多く、まだこの論文から結果を決めることは出来ないと思います

■ 一方で、”環境整備の難しさ”を示した結果とも言えるでしょう。

 

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