アレルゲン免疫療法をすると、気管支喘息患者のウイルスに対する免疫が強化されるかもしれない

アレルゲン免疫療法は、ウイルス感染も防ぐ?

■ 喘息発作はウイルス感染によって引き起こされることが多く、『アレルゲン感作』がそのリスクを引き上げます。

■ そしてアレルゲン免疫療法は、ウイルス感染に対する免疫も強化するかもしれない…という研究結果が報告されていました。

 

Woehlk C, Ramu S, Sverrild A, Nieto-Fontarigo JJ, Vázquez-Mera S, Cerps S, et al. Allergen Immunotherapy Enhances Airway Epithelial Antiviral Immunity in Patients with Allergic Asthma (VITAL Study): A Double Blind Randomized Controlled Trial. Am J Respir Crit Care Med 2023.

ダニアレルギー喘息の成人患者 (HDM-SLIT: 20人, プラセボ: 19人)に対するダニ抗原免疫療法の効果を調査した。

はじめに

■ アレルギー性喘息は、気管支上皮のインターフェロン(IFN)分泌障害と関連しており、ウイルス性増悪のリスク上昇と因果関係がある可能性がある。
■ これまでに、アレルゲン免疫療法(AIT)が喘息の増悪を効果的に抑制し、抗生物質を必要とする呼吸器感染症を予防することを明らかにされてきたが、AITが抗ウイルス免疫を変化させるかどうかはまだ不明である。

目的

■ ダニ舌下アレルゲン免疫療法(HDM-SLIT)がアレルギー性喘息患者の気管支上皮の抗ウイルス・炎症反応に及ぼす影響を検討する。

方法

■ この二重盲検ランダム化比較試験(VITAL)では、HDMアレルギー性喘息の成人患者に、HDM-SLIT 12-SQまたはプラセボを24週間投与した。
ベースライン時と24週目に気管支鏡検査を行い、ヒト気管支上皮細胞(HBECs)の採取を行った。
■ HBECは、ベースライン時と24週目に培養され、ウイルス模倣物質であるpoly(I:C)で刺激された。

管理人注
「ウイルス模倣物質poly(I:C)」とは、ウイルスの一部を真似た化学物質で、ウイルスの感染を模倣することで免疫システムがどのように反応するかを研究するために使われます。
ポリ(I:C)が細胞に入ると、細胞はそれをウイルスの一部と勘違いし、免疫システムが反応してウイルスを攻撃しようとするので、ポリ(I:C)はウイルス感染を研究するためのツールとして使用されます。

■ mRNAの発現はRT-qPCRで定量化し、タンパク質レベルはマルチプレックスELISAで測定した。

結果

■ 患者39人がHDM-SLIT(n=20)またはプラセボ(n=19)にランダム化された。
■ HDM-SLITは、遺伝子レベル(p=.009)およびタンパク質(p=0.02)の両方で、poly(I:C)誘導性のIFN-βの発現を増加させた。
■ また、IFN-λの遺伝子発現も増加した(p=0.03)のに対し、IL-33は減少する傾向にあった(p=0.09)。
■ 一方、炎症性サイトカインであるIL-6(p=.009)とTNF-α(p=0.08)はHDM-SLIT群ではベースラインと比較して増加した。
■ TSLP、IL-4、IL-13、IL-10には有意な変化はみられなかった。

結論

■ HDM-SLITは、気管支上皮のウイルス感染に対する抗ウイルス抵抗性を改善する。
■ これらの結果は、HDM-SLITがアレルギー性喘息の増悪を抑制する有効性を説明する可能性がある。
(臨床試験登録 www.clinicaltrials.gov、ID. NCT04100902.)

 

 

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