幼児期の慢性滲出性中耳炎のリスク因子はなにか?: 症例対照研究

Walker RE, et al. Determinants of chronic otitis media with effusion in preschool children: a case-control study. BMC Pediatr 2017; 17:4.

慢性滲出性中耳炎は、急性中耳炎にひきつづく病態として少なくありません。

■ 慢性滲出性中耳炎は、決して少なくなく、抗生剤への耐性が進んでいる現状では頭の痛い問題です。

■ すでに、小児滲出性中耳炎診療ガイドライン2015年版(http://www.otology.gr.jp/guideline/img/guideline_otitis2015.pdf)は広く診療に使用されており、診療に際し”発症リスクを推測する”という記載があります。

■ そこで、最近発表された、慢性滲出性中耳炎のリスクファクターを調べた研究結果をご紹介いたします。

 

P: 2011年5月から2013年11月までオークランド(ニュージーランド)の3歳から4歳の児

E: 慢性滲出性中耳炎(Chronic otitis media with effusion; COME)のための鼓膜切開tubing留置について受診した178人

C: プライマリケア診療のため受診した健常小児209人

O: COMEのリスクファクター

 

 

結果

保護者は、社会統計学的情報、妊娠や分娩、乳児栄養プラクティス、家庭環境、呼吸器の健康状態を含むインタビュアーを介したアンケートを記入した。

さらに、皮膚プリックテストが実施された。 ”長い陣痛”は、初回出産時では少なくとも21時間、そうでなければ14時間以上持続している陣痛と定義された。

慢性滲出性中耳炎(COME)に罹患している児は、鼻閉がしばしばあり(OR:4.38[95%CI:2.37-8.28])、常にいびきをかき(OR:3.64[95%CI:1.51-9.15])、しばしばいびきをかいた(OR:2.45[95%CI:1.04-5.96])

週あたりの保育所に預ける時間が長く(OR:1.03[95%CI:1.00-1.05])、頻繁に風邪に罹患していた(OR:2.67[95%CI:1.59-4.53])

また、鼓膜切開tubing術を経験しているきょうだいがあり(OR:2.68[95%CI:1.22-6.02])、陣痛時間が長かった(OR:2.59[95%CI:1.03-6.79])

さらに、牛乳の早期導入を受けていた(OR:1.76[95%CI:1.05-2.97])

アジア系民族的背景(OR:0.20[95%CI:0.07-0.53])や年上のきょうだいがいる(OR:0.54[95%CI:0.31-0.93])ことは、OMEと逆相関した。

 

慢性滲出性中耳炎のリスクファクターとして、鼻づまり(+それに伴うであろういびき)、集団保育(+それに伴うであろう風邪)、鼓膜チュービングというおそらく家族的な素因が関与しているようだ。

慢性滲出性中耳炎(COME)は、難聴の原因となるため、重要になります。

COMEのリスクファクターとして、鼻づまり(+それに伴うであろういびき)、集団保育(+それに伴うであろう風邪)、鼓膜tubingというおそらく家族的な素因が関与しているといえます。牛乳早期導入や、陣痛に関しては免疫的な変化を示しているのでしょう

なお、長時間の陣痛がCOMEに影響することに関しては、陣痛中における母の発熱で最も一般的な原因であり、器具の使用や緊急帝王切開と新生児治療入院にかかわるからではないかとされていました。 

COMEに関しては、本邦にもガイドライン(http://www.otology.gr.jp/guideline/img/guideline_otitis2015.pdf)があり、耳鼻科医ではない私は、このガイドラインを参考に治療しています。さらに、小児急性中耳炎診療ガイドラインもオンラインで確認できます(http://www.jsiao.umin.jp/pdf/caom-guide.pdf)。

COMEとは少し異なりますが”中耳炎の反復”に関し、十全大補湯の効果の記載があり、しかも推奨レベルBになっています。

私は中耳炎を反復する患者さんには良く十全大補湯を使用していて、実際中耳炎のエピソードが減るように感じます。実際に耳鼻科医の先生で使用されている先生は、ただ、当院の周辺にはあまりいらっしゃらないようです。耳鼻科医の中では必ずしもコンセンサスが得られていないのかもしれません。

 

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