乳児期のバリア機能低下と黄色ブドウ球菌の保菌は関連するか?

 

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 アトピー性皮膚炎の重症度と、皮膚の黄色ブドウ球菌の密度が関連するという報告があります。

黄色ブドウ球菌密度はアトピー性皮膚炎の重症度と関連する: 症例対照研究

皮膚黄色ブドウ球菌陽性者は、より食物アレルギーを発症するかもしれない: 症例対照研究

アトピー性皮膚炎発症前に、黄色ブドウ球菌は保菌していない: 症例対照研究

 ややこしくなってきましたが、どうやらアトピー性皮膚炎の発症前に、ブドウ球菌を保菌しているというわけではないようです。では、皮膚バリアが下がっているから黄色ブドウ球菌を保菌するのでしょうか?

 そこで、今まで何度か提示させているTEWLと、黄色ブドウ球菌の保菌が関連しているかどうかを報告した研究結果がありましたのでご紹介いたします。

 

P: 生後12ヶ月未満の167人(平均6.4ヶ月)
E: 鼻前庭および/または口腔内から、少なくとも1箇所から黄色ブドウ球菌の検出あり
C: 黄色ブドウ球菌の検出なし
O: 鼻前庭や口腔内の黄色ブドウ球菌(S. aureus)コロニー形成とTEWL高値は関連しているか

 

結局、何を知りたい?

✅乳児の鼻の中や口の中に黄色ブドウ球菌をもっているひとは、もともとバリア機能が低いのかということを知りたい。

 

結果

 240人が登録されたが、啼泣、測定条件不良のために最終的に167人が研究に組み入れられた。

 アトピー性皮膚炎 110人・アトピー性皮膚炎疑い 28人、アトピー性皮膚炎なし 29人だった。
 TEWLは、上腕外側・前腕内側で測定された。
 黄色ブドウ球菌コロニー形成は、89人(53%)で検出された。

 黄色ブドウ球菌コロニー形成とTEWL高値(TEWL上位1/4)は関連していなかった(上腕外側 p = 0.08; 掌側前腕 p = 0.98)

 また、黄色ブドウ球菌コロニー形成とアトピー性皮膚炎(p = 0.10)、フィラグリン(FLG)突然変異(p = 0.17)とも関連していなかった
 アトピー性皮膚炎疑いやアトピー性皮膚炎がない乳児に比較して、アトピー性皮膚炎乳児では上腕外側・前腕内側ともに、TEWLは有意に高値だった。
 FLG突然変異は、TEWL高値と有意に関連しており、TEWLが47%異なった。

 

論文から引用。

黄色ブドウ球菌保菌と、TEWLには有意な関連はなかった

 

結局、何がわかった?

✅皮膚のバリア機能がひくくても、鼻や口の中に黄色ブドウ球菌をもっている率は変わらなかった。

✅フィラグリン遺伝子という、皮膚のバリアを作ることに関係する遺伝子に以上があっても、鼻や口の中に黄色ブドウ球菌をもっている率は変わらなかった。

 

コメント

 一般集団から集められた乳児において、鼻前庭および/または口腔内の黄色ブドウ球菌コロニー形成は、TEWLやアトピー性皮膚炎と関連していないとまとめられます。

 腕でのTEWL測定は、乳児の皮膚バリア機能の評価に適切なようだったとされていました。

 管理人は、上にあげたような他の研究結果もあわせ、黄色ブドウ球菌はアトピー性皮膚炎の発症には直接の関係はなく、アトピー性皮膚炎を発症してから定着・増殖し、食物アレルギーなどの悪化にも影響するのではないかと考えています

 

今日のまとめ

✅アトピー性皮膚炎や食物アレルギーを悪化させる黄色ブドウ球菌は、生まれつきの皮膚バリア機能低下とは直接の関係はなく、アトピー性皮膚炎を発症してから他のアレルギー疾患の悪化に働くようだ。

 

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