
■ 経口免疫療法(oral immunotherapy)は、少しずつアレルギーの原因となる食物を摂取して摂取量を増やしていく治療法ですが、潜在的にリスクもあり、全身症状を起こす可能性もあります。
■ 事前にリスクファクターを知っておくことは重要ですが、必ずしも研究結果は多くありません。
■ 以前、卵経口免疫療法前に特異的IgE抗体価が高いとリスクが高いことをご紹介いたしました。
卵経口免疫療法前の特異的IgE抗体価が高い場合、免疫療法のリスクが高いかもしれない: 事後解析
■ また、時間経過により特異的IgE抗体価が減少している群での治療効果が高いという報告もあります。
各種鶏卵コンポーネントと、将来の卵耐性に関連があるか: 後ろ向きコホート研究
■ 今回、ピーナッツの経口免疫療法の副反応が起こりやすい患者さんの特徴に関する報告がありましたのでご紹介いたします。
E: 親からの症状の報告、日記からの症状、用量増量時かどうか、ベースラインでの検査結果、性、年齢
C:
O: OITによる副作用(adverse events;AE)に関連がある因子はなにか
結局、何を知りたい?
✅ピーナッツを少しずつ食べて食べられるようにする経口免疫療法を行った子ども達において、副反応を起こしやすい要因を知りたい。
■ すべての被験者はピーナッツ皮膚プリックテスト(SPT)陽性であり、91人(88%)はピーナッツ特異的IgE抗体価が高値(≧7 kU/L)だった。
■ 80%は、経口免疫療法(oral immunotherapy ;OIT)に関連すると思われるAEを呈した(増強フェーズ72%、維持フェーズ47%)。
■ 副作用(adverse events;AE)率は、維持フェーズより、増量フェーズで高かった(P = .005)。
■ AEのうち、90%以上は自宅で発生した。
■ 約42%は全身反応を呈し、49%は胃腸症状を呈した。
■ 20%がドロップアウトし、半数(全体の10%)は持続性の胃腸症状が原因だった。
■ ベースラインにおける、アレルギー性鼻炎(AR)とピーナッツSPTの膨疹径は、AEの発生率に対する予測因子として有意であった。
■ 特に、SPT径は胃腸AEを予測し(SPT径が5mm増加するごとにリスクが1.8倍 [95%CI 1.4-2.4; P < .001]に増加)、アレルギー性鼻炎(AR)は全身反応のリスクを2.2倍(95%CI 1.1-4.3; P = .03)に増加させた。
■ OIT治療中、61%はAEに対する治療を受けた(アドレナリン12%、抗ヒスタミン剤59%)。
■ ピーナッツOITは、高い頻度のAEと関連しているが、時間とともにその率は低下し、大部分は軽症だった。
結局、何がわかった?
✅ピーナッツ経口免疫療法は、維持期(増量せずに食べ続けている時期)より増量期のほうが副反応を起こす可能性が高い。
✅経口免疫療法を行う前の皮膚プリックテストの膨疹径が5mm増えるごとに、経口免疫療法中の胃腸に関する副反応を起こす可能性が1.8倍に上がっていった。
✅アレルギー性鼻炎をもともと持っていると、経口免疫療法中の全身反応を2.2倍起こしやすくなった。
■ ピーナッツOITは、全身反応と強い胃腸症状が起こり得て、それぞれ、アレルギー性鼻炎とピーナッツ皮膚プリックテストの膨疹径と有意に関連しているとまとめられます。
■ 以前ご紹介したように、ピーナッツOIT中の胃腸症状を来たした患者さんの中にはピーナッツOIT中に好酸球性食道炎を来たした報告もあり、気をつける必要があるでしょう。
ピーナッツ経口免疫療法開始後、早期に好酸球性食道炎を発症した3例: 症例報告
■ なお、結果の中に、アレルギー性鼻炎のある児に関して花粉飛散時期の方がAEが起こりやすいという記述がありました。
■ 例えば、小麦依存性運動誘発アナフィラキシー(小麦を摂取しただけでも、運動しただけでも症状はないけれども、小麦を摂取して運動すると症状が出現する)の患者さんがイネ科花粉時期に症状が出やすいという報告があります。
■ これまでの幾つかの結果をまとめると、OITのリスクは、特異的IgE抗体価が高い・皮膚プリックテストが強陽性・喘息や鼻炎の既往があるといった点があげられるでしょう。
■ 事前にOITにおける症状を予測することはなかなか困難ですし、重症の患者さんだからこそ選択される治療法ではありますが、特徴があることを知識として持っておくことも大事だと思います。
今日のまとめ
✅ピーナッツ経口免疫療法前に、皮膚プリックテストが強陽性であると経口免疫療法中に胃腸症状がおこりやすく、アレルギー性鼻炎があると全身症状がおこりやすい。
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