妊娠中の抗生剤使用は、児のアトピー性皮膚炎の発症リスクを上げる?

Timm S, et al. Prenatal antibiotics and atopic dermatitis among 18-month old children in the Danish National Birth Cohort. Clin Exp Allergy 2017. [Epub ahead of print]

抗生剤の使用はアレルギーを増やす?

■ 以前、1歳未満での抗生剤の使用が、1歳時の食物アレルギーやアトピー性皮膚炎のリスクを増加させることをご紹介いたしました。

乳児期の抗生剤投与はその後のアトピー性皮膚炎発症リスクになる: システマティックレビュー

1歳までの抗生剤使用は食物アレルギー発症を増やすかもしれない: 症例対照研究

 ■ 多様な微生物群がアレルギーの予防に役立つ可能性が示されており、抗生剤は微生物群の撹乱すると考えられます。

微生物群は喘息予防の切り札になるかもしれない: レビュー

■ では、出生後の児に対してではなく、妊娠中の抗生剤の使用は児のアトピー性皮膚炎のリスクに影響するのでしょうか

 

P:  Danish National Birth Cohortに参加した62560組の母児
E: 妊娠中の母に対する抗生剤使用
C: -
O: 生後18ヶ月までの児のアトピー性皮膚炎発症リスクをあげるか

 

結局、何を知りたい?

✅妊娠中の抗生剤使用が、こどものアトピー性皮膚炎の発症リスクになるかどうかということを知ろうとしている。

 

妊娠期間中の抗生剤使用が、子どものアトピー性皮膚炎発症リスクを増やすかもしれない。

■ 抗生剤投与は、妊娠30週と分娩後6ヵ月に電話インタビューで集められ、アトピー性皮膚炎の診断はISAACの定義によった。

■ 抗生剤使用のタイミングは、第1-第-2トリメスター(妊娠週0-29)、第三トリメスター(妊娠週30-出生時)、全トリメスター、すべて投与なしに分類された。

■ 第1-2および第3トリメスターに、抗生物質が投与されたときのみ、アトピー体質の母体から出生した児におけるアトピー性皮膚炎発症リスクが増加した(修正オッズ比[ORadj] 1.45、95%CI 1.19-1.76)

■ しかし、アトピー体質ではない母体から出生した児では有意な増加は認められなかった(ORadj 1.01、95%CI 0.83-1.22)。

■ この、第1~2および第3トリメスターに抗生物質を投与されたアトピー体質の母体から出生した児に対するアトピー性皮膚炎の発症リスクは、経膣分娩児(ORadj 1.34、95% 1.08-1.66)と比較し、帝王切開出生児(ORadj 2.13、95% 1.34-3.38)により強く認められた

■ 抗生物質投与とアトピー性皮膚炎の発症リスクに対し、抗生物質の種類のよる差は認められなかった。

 

結局、何がわかった?

✅アトピー体質の母に対し、妊娠期間を通して抗生剤投与が使用されると、子どもの1歳半時点のアトピー性皮膚炎の発症リスクを1.45倍にする。

 

 

母の治療も当然優先ではあるが、不要な抗生剤使用は避けたい。

■ アトピー体質の母体のみ、しかも第1-2トリメスター、第3トリメスターともに抗生剤が使用された場合に、こどものアトピー性皮膚炎のリスクが1.45倍になる、とまとめられます。

■ ただし、この結果が臨床的に有用かどうかは、独立したデータで確認しなければならないとされていましす。

■ 妊娠中の抗生剤使用は、尿路感染が多かったようですので、その場合は感染症を優先して治療するべきでしょう。

■ 妊娠中の抗生剤に関しては、小児科医に関わることはできませんが、上に挙げたとおり、出生後の子どもさんに対する抗生剤は、配慮できる守備範囲です。気をつけていきたいと思います。

 

今日のまとめ

✅妊娠中の抗生剤使用は、児のアトピー性皮膚炎のリスクになるかもしれない。

 

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