アトピー性皮膚炎を個別化治療することは可能なのか?

 アトピー性皮膚炎にもフェノタイプ(表現型)があり、治療の介入方法がことなる可能性が指摘されています。

■ アトピー性皮膚炎は、同一の疾患ではなく色々なタイプを含む疾患であるという考えがあります。

■ 例えば、同じ”風邪”であっても、原因も経過も、重症度も、かかりやすい年齢も、予後も異なりますよね?当然、対応も違ってくるでしょう。”症候群”であると言えばよいでしょうか?

■ アトピー性皮膚炎も、同じ病名でも異なってくるのではないかとするレビューをご紹介いたします。

■ すでにオープンアクセスになっているので、少し詳しめ。今後引用されることが増えるレビューであろうと思います。

 

 結局、何を知りたい?

 ✅アトピー性皮膚炎の様々なタイプを概観し、対応をどうしていくかを考えるレビューをしようとしている。

 

 

Bieber T, et al. Clinical phenotypes and endophenotypes of atopic dermatitis: Where are we, and where should we go? J Allergy Clin Immunol 2017; 139:S58-s64.

アトピー性皮膚炎のフェノタイプ。年齢病像、重症度、発病年齢でまとめる。

■ アトピー性皮膚炎(AD)は、不均一性が高いにもかかわらず、一つの疾患と考えられて、通常「フリーサイズ」アプローチによって治療されており、ADの層別化に基づくより区別したアプローチが怠られている。

■ 異なる臨床フェノタイプの明瞭な定義や、それぞれのエンドフェノタイプを示唆する潜在的バイオマーカーの十分な検討は、新しい治療的なオプションの開発とAD患者における精密医学の実現のための鍵となる要素である。

 

年齢関連性病像に基づく臨床フェノタイプによる層別化

■ 少なくとも4種類の異なる臨床像、乳児期、小児期、青年期/成人、老年期が定義される。

 

乳児期AD(3ヵ月から2歳)

■ 最初の病変は生後2ヵ月ごろに出現し、概して浮腫状丘疹と小水疱性丘疹で頬部に発症する。

■ じくじくして痂皮化することで、大きな病巣を形成する場合がある。

■ 頭皮も、広範囲な落屑を示す。

■ 頭皮、頸部、四肢の伸側部(体幹と同様)が含まれ、おむつ域は残る。

■ 疾患の早期に診断するのは非常に困難かもしれないが、それぞれの典型的湿疹病変は2、3週後に明らかとなる場合がある。

 

小児期AD(年齢2-12歳)

■ このステージでは、まだ急性病変が出現するが、一部は苔蘚化を伴う慢性病変が前面にでる傾向がある。

■ 好発部位は、膝窩や肘前窩(屈側)である。

■ とても頻繁に、手や手首に浸出液や痂皮を伴う貨幣状病巣を示す。

■ ドライスキンも、より優位になる。

 

青年・成人期AD(12歳から60歳まで)

■ この時期には、病変は典型的な領域(例えば頭部、頸部、屈曲部)に固定され、さらに手(慢性の手湿疹)に影響を及ぼす可能性がある。

■ また、特に女性において、しばしば眼窩周囲が悪化する。

■ 長期罹患している患者においては、より広範囲でときおり紅皮症を示すようである。

 

より高年齢のAD(60歳以上)

■ 「ADの自然経過」において、むしろ過小評価されている臨床フェノタイプのようである。

■ このタイプは、多くは強いそう痒の面があり、紅皮症にいたる広範囲な湿疹病変によって特徴づけられる。

■ 病変は屈曲部位に及ばない時がある。

■ このフェノタイプは、確定診断における明確な臨床基準を確定するために、より深い分析を必要とする。

■ そして、この年齢層においては、例えばアレルギー性接触性皮膚炎や皮膚T細胞性リンパ腫など多くの鑑別診断を、除外しなければならない。

 

重症度に基づく層別化

■ ADは、重症度が広範囲であり、極めて軽症から極めて重症までのフェノタイプがある。

■ 重症度はSCORADやEASIスコアで表され、一つの図にこれらの異なる評価法をまとめて示す試みが行われている。

 

発病年齢に基づく層別化

■ AD患者を層別化するもう一つの方法は、疾患の自然史によって分類することである。

■ 進行中の慢性炎症と長期の疾患歴の最大のリスクをもつ患者に対し、早期介入を通した予防をターゲットとしたアプローチの進歩を提供するかもしれない。

■ ADは伝統的に、主に小児期に発症する疾患と考えられており、潜在的に完全に回復する可能性があり、10歳までに50%以上の患者が最終的に寛解するとされている。

■ しかし、最近の疫学的エビデンスは、一旦獲得されたADが一生持続する場合があるということもサポートする。

論文から引用。年齢ごとの発症タイプ。

 

超早期発症(3ヵ月から2歳)

■ 疫学研究により、このタイプはAD発症の60%~80%を占めているが、多くは2歳未満で完全寛解に至る可能性がある。

■ しかし、一方で概ね40%と推定される患者は、より長期間にわたりADを維持してアトピーマーチに対する最も高いリスクをもつ集団となる可能性がある。

 

早期発症(2~6歳)

■ これらの患者も慢性疾患を持つハイリスク群である。

 

小児期発症(6~14歳)

■ 疾患の経過が十分に調査されていないが、10%程度の患者群である。

 

青年期発症(14~18歳)

■ 青年期発症はおそらく最も少ない群(<10%)であり、疫学的データは制限されている。

 

成人発症(20~60歳)

■ 成人発症は約20%であり、軽症のフェノタイプと感作された女性患者により特徴づけられる。

■ そして、通常総IgEは正常である。

 

後期発症(>60歳)

■ 後期発症軍は最近特定され、有意に増加するサブグループであるようである。これらの患者は、疾患重症度や総IgE値がむしろ高い重篤なタイプである。

 

患者の民族の起源に基づく層別化

■ 白人の患者とアジアの集団から患者のtranscriptomicなプロフィールに焦点をあてている先駆的な研究は、サイトカインでドライブされた慢性炎症の違いがあるかもしれないことを示唆した。

■ また、例えば、白人患者で一般的に見つかるフィラグリン欠損が南アフリカのAD患者では観察されなかった。

■ 従って、患者の民族の起源により臨床フェノタイプのバリエーションを示し、フェノタイプが慢性炎症の基礎をなしている疾患機序を反映する可能性がある。

 

エンドフェノタイプとバイオマーカー

■ バイオマーカーとエンドフェノタイプは、よりテーラードな予防と治療的な戦略を発展させるために、複雑な疾患をサブグループに層別化することを可能にするための基本的なツールと考えられる。

■ しかしバイオマーカーの候補のうちいずれも、確証には至らなかったと強調されなければならない。

■ 近年では、TEWL測定が被験者を選択するためのシンプルで非侵襲性方法である可能性があると報告された。

■ 遺伝子タイピングは扱いにくく高価なアプローチであるが、近い将来、スクリーニングアプローチに適用できると予想される。

■ 同様に、SPINK5/LEKTIやTSLPが疾患のハイリスク集団を検出するために役立つ可能性がある。

 

疾患の早期診断や鑑別を助けるバイオマーカー

■ ADの診断が主に臨床症状に基づき、医師は、特に生後3~4ヵ月以前と後期発症のステージで主に奮闘しているが、残念なことに、現在利用できるバイオマーカー候補はない。

■ しかし、最適な治療プランにおいて、TARC(CCL17)、MDC(CCL22)、cutaneous T-cell-attracting chemokine(CCL27)、IL-31、IL-33、IL-22、LL37、IL-18、IL-16、pulmonary and activation-regulated chemokine(CCL18)、periostin、sIL2R、brain-derived neurotrophic factorが有力な候補である。

■ ADは生命にかかわる疾患ではないが、患者や家族にとってQOLを大きく損ない、社会経済負担も意味する。

■ ADは一つの疾患と考えられており、重症度や疾病管理はそのADの不均一な臨床フェノタイプを考慮していない。

■ 我々が層別化された医学の時代に入っているため、バイオマーカーは、管理を改善する点における基本的な役割を果たす。

 

 結局、何がわかった?

 ✅アトピー性皮膚炎のフェノタイプ・エンドタイプを行い、それぞれの対応を考察された。まだバイオマーカーはまだ不十分である。

 

 

アトピー性皮膚炎フェノタイプ分類・個別治療はこれから進歩するでしょう。

■ アトピー性皮膚炎のフェノタイプ分類と、その対応は始まったばかりと言えましょう。

■ この論文で示されたFigureは、おそらく当面いろいろな発表で使われることになるかと思います。

 

 今日のまとめ!

 ✅アトピー性皮膚炎のフェノタイプ分類はまだ始まったばかり。

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