血清TARC値は乳児でもアトピー性皮膚炎の重症度を予測するか?

TARC検査の重要性:アトピー性皮膚炎の評価と最新の研究

TARC値は、日本では約15年前から保険適用となり、アトピー性皮膚炎の重症度や経過を見るための検査として広く行われています。

■ ただし、タルクの値は年齢が低いと自然に高くなる傾向があり、乳児に関してのデータはまだ不足しています。
■ その点に関して、トルコの大学からの新しい報告が発表されました。

 

Esenboğa S, Cetinkaya PG, Şahiner N, Birben E, Soyer O, Sekerel BE, et al. Infantile atopic dermatitis: Serum vitamin D, zinc and TARC levels and their relationship with disease phenotype and severity. Allergologia et immunopathologia 2021; 49 3:162-8. (1)

健常対照群79人(中央値6.5ヶ月)とアトピー性皮膚炎患者160人(5.5ヶ月)を対象とし、疾患の重症度をobjective SCORADを使用して評価し、血清TARC、ビタミンD、亜鉛濃度を確認した。

背景

■ アトピー性皮膚炎(AD)の臨床経過に影響を与えるマーカーは多数研究されてきた。
■ Th2関連サイトカインであるThymus and activation regulated chemokine(TARC)は、多くのアレルギー疾患で増加している。
■ ビタミンDはTreg細胞や免疫応答に影響を及ぼすことが知られている。
■ 亜鉛は細胞間の相互作用や細胞の分化、増殖に必要な微量元素である。
■ しかし、これらのマーカーが乳児期ADや疾患の重症度に与える影響は、まだ十分に解明されていない。

目的

■ 本研究の目的は、小児ADにおけるTARC、ビタミンD、亜鉛レベルと疾患の重症度との関連を明らかにすることである。

方法

■ 健常対照群(n=79)と年齢・性別が一致するAD患者(n=160)を対象とした。
■ ADの診断はHanifin-Rajka基準を基に行った。
■ 疾患の重症度はobjective SCORADを使用して評価した。

結果

■ 研究には計160人のAD患者(男性71.9%)が参加した。

■ 発症年齢の中央値は2ヵ月(1.0-3.5ヵ月)だった。
■ 初発部位の分布は、顔面76.9%、頸部6.9%、四肢7.5%、体部8.8%だった。
■ 患者の約40%がアトピーを持っていた。

■ 食物アレルギーの発症率は39.4%だった。
■ objective SCORAD の中央値は27.5(17.5-40)だった。

■ AD患者のTARC値は対照群よりも高く、1803pg/ml(1006-3123)と709pg/ml(504-1147)の差が確認された(p<0.001)。
■ objective SCORADとTARC値の間には、有意な相関が認められた(r=0.363、p<0.001)。
■ ADの重症度が増加すると、ビタミンD値は減少し(p for trend 0.015)、TARC値は増加した(p for trend < 0.001)。■ 血清中の亜鉛値は疾患の重症度による変動は認められなかった。
■ アトピーの有無は、血清のTARC、亜鉛、ビタミンDの値に影響を及ぼさなかった。

結論

■ ADの乳幼児では、疾患の重症度とTARC値は正の相関があり、一方でビタミンD値とは反比例の関係があることが示された。
■ TARC値は患者群と健常対照群で異なることが確認された。
■ アトピーの有無がこれらのマーカーに与える影響は認められなかった。

 

 

※ 論文の背景とその解説・管理人の感想は、noteメンバーシップでまとめました。

 

このブログは、私の普段の勉強の備忘録やメモを記録しているものですので、細かい誤字脱字はご容赦ください。
基本的に医療者向けで、申し訳ありませんが、質問には基本的にお答えしておりません。

知識の共有を目的に公開しておりますが、追加して述べる管理人の意見はあくまでも個人としての私見です。
所属するいかなる団体の立場も代表するものではありませんし、すべての方に向いているという情報でもありません。予めご了承いただきたく存じます。

このブログの『リンク』は構いません。
しかし、文章やアイデアを盗用・剽窃・不適切な引用したり、許可なくメディア(動画を含む)に寄稿することはご遠慮ください。
クローズドな場での勉強会などに使用していただくことは構いません。
Instagram:2ヶ月で10000フォロワーを超えました!!!

Xでフォローしよう