日本におけるデュピルマブ投与患者に関するアトピー性皮膚炎のバイオマーカー研究
■ アトピー性皮膚炎は、様々なフェノタイプが存在し、それぞれが不均一な要因を持っています。
■ そして、リスク要因、重症度、予後、薬剤の効果及び副作用に関して個人差が大きいことから、それらを評価するためには、バイオマーカーの特性を理解し、適切に活用する必要があります。
■ 日本における「Biomarkers to Predict Clinical Improvement of AD in Patients Treated with Dupilumab(デュピルマブ投与患者におけるADの臨床的改善を予測するバイオマーカー; B-PAD)」と題された研究が多施設共同で実施されています。
■ この研究では、日本に住むアトピー性皮膚炎(AD)の患者110人を対象に、デュピルマブ投与前と投与開始後のバイオマーカーの変化を追跡しています。
■ 19種類のバイオマーカーを定期的に測定することで、どのバイオマーカーが治療において有用であるかを検討したのです。
Nakahara T, Onozuka D, Nunomura S, et al. The ability of biomarkers to assess the severity of atopic dermatitis. Journal of Allergy and Clinical Immunology: Global. 2024;3(1):100175.
日本全国の19施設から、中等度から重度のアトピー性皮膚炎患者110名が登録され、ベースライン時にEASI、POEM、そう痒症の数値評価尺度(pruritis-NRS)を用いて客観的・主観的評価を行い種々のバイオマーカーを測定した。
背景
■ アトピー性皮膚炎(AD)のprecision medicine(精密医療)を開発するためには、関連するバイオマーカーの確立が重要である。
■ しかし、多くのバイオマーカーの特性はまだ十分に理解されていない。
■ そこで、日本全国でデュピルマブ治療患者のADの臨床的改善を予測するバイオマーカーを探索する「Biomarkers to Predict the Clinical Improvement of AD in Patients with Dupilumab(B-PAD)」試験を実施した。
研究目的
■ 本研究の目的は、B-PAD研究に基づき、中等度から重度のAD患者における客観的・主観的な臨床所見と関連するバイオマーカーを探索し、ADの重症度を評価するのに十分な感度を有するバイオマーカーを同定することである。
方法
■ 国内19医療施設から成る共同体としてB-PAD研究を実施し、中等度から重度のAD患者110名を登録した。
■ 客観的評価としてEASI(Eczema Area and Severity Index)、主観的評価としてPOEM(Patient-Oriented Eczema Measure)、そう痒症の数値評価尺度(pruritis-NRS)を用い、ベースライン時に19のバイオマーカーを測定した。
結果
■ 12、6および7個のバイオマーカーが、EASI、POEM、そう痒-NRSとそれぞれ有意かつ正の関連を示した。
■ POEMまたはそう痒-NRSに関連するバイオマーカーの多くは、EASIに関連するバイオマーカーに含まれていた。
■ 検討したバイオマーカーのうち、CCL26/eotaxin-3およびSCCA2はEASIの重症度を評価する能力が最も高く、乳酸脱水素酵素(LDH)はPOEMやそう痒-NRSの両方の評価に最も優れていた。
結論
■ B-PAD研究に基づき、EASI、POEM、そう痒-NRSにそれぞれ関連するバイオマーカーを見出した。
■ CCL26/eotaxin-3、SCCA2がEASIの重症度を評価する最も優れたバイオマーカーであり、乳酸脱水素酵素はPOEMおよびそう痒-NRSに優れたバイオマーカーだった。
■ これらの知見は中等度から重度のAD患者の治療に有用である。
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